二四年前 摩周鱗子の脱出 中編
1
『志田さんの姿が見えないんですか』
「はい。儀式が始まるまであと一時間近くですよね。ーーーその様子はないです。確か、船舶免許と小舟を持った男の人を連れてくると聞いてました」
そう携帯電話でやり取りをしているのは、有馬哲司。
電話の向こう側には浜辺銀。
摩周鱗子の夫の哲司は、彼女との間に産まれた愛しの我が子の摩魚を抱きかかえて元船町の発着所にいた。もうすぐ日が落ちていく。
場所は移って。陰洲鱒町。
「杏子ちゃん、来てないんだって」
銀が、隣にいる潮干リエに若干口を尖らせた口調を向けた。
「なら、私が直接かけてみよっか」
今度はリエから志田杏子に電話してみる。
白地に青い文字で大漁と描かれた折り畳み式を開く。
今、リエと銀の二人がいる場所は、陰洲鱒町内にあるバス停。島に山々があるために、山道の整備がされており、島一番高い『尾叩き山』の三分の二までバス道路を引いてあった。そして、黄金色の髪の美人と細かいソバージュの美人のいるところは、そんなバス道路の尾叩き山民宿行きの三合目付近。広範囲に海岸沿の岩山まで見通せる。
「杏子ちゃん、彼氏と寝てたりしてねー」
笑顔で冗談を言いながら、銀はバス停の横にある自販機でジュースを買っていく。ガタゴトと落ちてきたオレンジウォーターの缶を取り出して、栓を開けて飲みはじめた。
さらに場所は変わり。
薄暗い部屋でウィリアムテルの着信音がけたたましくなっていた。
黒髪ロングの色白の女が細い腕をゆるゆると伸ばしていき、黒い携帯電話を持ってゆっくりと起き上がってゆく。上体を起こしたときにシーツが落ちて、胸を露にした。全裸で布団に寝ていたらしい。渋い顔で、かけてきた名前を確認。すると、たちまち両目を見開いて口を大きく開いていった。素早くベッドに腰かける体勢になって電話に出ていく。やはり、素っ裸だった。黒色の眼に銀色の瞳、首筋に五つ肋のあたりに三つの鰓。これは紛れもなく人魚の特徴であった。黒髪の美しい人魚は、大声を出しそうになった口を手で塞いで小声で対応していく。
「は、はい。志田です。お疲れさまです」
『やっと出た。志田ちゃん、今どこ? あと一時間もしないで生贄の儀式始まっちゃうよ』
「いい今、今起きたところでして」
『今起きたのは分かったから、あなたの場所はどこ』
「その……」
腰かけている背後をチラッと見たあと、再び正面を向く。
「ひじょーに、言いにくいんですが……」
『うんうん』
「志田ちゃん、彼氏と寝てたんだって」
「ぶーーーーっ!!!」
事情を聞き終えたリエがニヤニヤして横の銀に知らせた。
するとソバージュの女は、オレンジウォーターをグレートムタの毒霧のごとくアスファルトにぶちまけて、咳き込んでいった。缶を持ったまま腹をかかえて大笑いしていく。ひーひー言いながら笑い涙を指で拭った、その直後。
「ざっけんな! 本当に彼氏とやっててどうすんだ!」
青筋を浮かべて、空き缶をダストボックスに叩きつけた。
「四回戦くらい堪能したみたいだよ」
「なんでこうなっちゃうわけ? ねえ、なんでこうなっちゃうわけ?」
「船舶免許持ちの知り合い、彼氏だったみたいだね」
「四回戦もやって体動くの? 四回戦も! 杏子ちゃん、普通の女の子と変わんないスタミナなんでしょ? そんなに楽しんで体動くの? ねえ、体動くの?」
「飲んだ勢いだったそうよ。彼とは久しぶりなんだって」
「はあ?! なにそれなにそれ? あの娘なんなの? ねえ、なんなの? 彼とやっても良いけど大事な日の当日にヤルって違くない? マイペースすぎるでしょ!」
「ぶちギレてるわねー」
「当たり前でしょ! あたし、あの娘真面目なのか天然なのか分かんなくなっちゃった!」
銀は、鈍色の尖った歯を剥き出して拳を上げて怒りを表していく。
「どうしたの、銀? 珍しく荒れてんじゃん」
こう話しかけて、新たな長身の美しい女性が姿を見せた。
稲穂色の長い髪が夕日を浴びて美しく輝く。
三角白眼の中に黄緑色の瞳。
やや目付きの悪い美人は、ハスキー気味な声で話しかけていく。
「有子は市内の友達にあずけてきたよ」
「潮さん!」
リエと銀の声がハモった。
「お疲れさん」
鈍色の尖った歯をニイっと見せて手を上げたこの女は。
黄肌潮。百七五センチの身長に見合った細身。白いタンクトップとジーパンがお洒落に見えてしまう。潮干リエと浜辺銀より五つ年上。二人の間に入ってきて、車道から見渡せる海岸沿いの岩や波打ち際を確認していった。
「雑魚が一匹、二匹、三匹、四匹……。だいたい七匹か。あっちも見てきたけど、手薄だったよ。三匹くらいだったかな」
「スペアも考えて、二〇匹じゃないですか?」
「リエも“匹”って言っちゃうんだ」
黄肌潮は少し驚いた。
各海岸の岩山に立つ見張りの数らしい。
蛇轟秘密教団の男信者と人魚の雄たちが脱走者を捕らえるために、磯野フナから指示された各々の持ち場に立っている。いつの頃からか人魚の数が町に増えたのか。人魚の噂については、昔から良いことは聞かない。その肉を食えば不老不死になれるなどとは、迷信である。彼ら雄も雌も血の気も色欲も盛んであるだけでなく、支配欲も大変強く、種族の“長”と言われている年長クラスの夫婦が決めた“しきたり”がこれまた厳格なものだった。子孫繁栄を種族の絶対的な存続として、ひ弱な者、己と同じ性を好きな者、異種族に溶け込もうとする者、以下の三つは“穢れ”として見なされており、同族の裏切り者とされ制裁されてきた。
「私たちの上の三匹も目ざわりねー」
怒りがおさまっていた銀が腕を組んでそう呟いた。
愛娘の亜沙里は、旦那の浜辺青児に預けていた。
目線は海岸の見張りを向いたままである。
「上の三匹、野木切ブッチャーズだったりして」
リエも上を見ずに、かわりに銀と潮に目を流して微笑んだ。
「あの兄妹、家業サボってんのかね」
潮は歯を見せてリエに目線を送る。
「ご兄妹の数が多いから、暇を回せるのよ」
リエに笑みを向けて、銀が嫌味を言う。
野木切ブッチャーズとは。いつの間にかこの町に土地を構えて肉屋を始めていた、六体の兄妹の人魚のことである。雄の双子が二組、雌の双子が一組の家族構成。もちろん、今は磯野フナの手下となっている。
「人魚がみんな、志田ちゃんと福子みたいなのばかりなら良いのにね」
「あの娘たちは“特別”だから」
リエの不満そうな呟きに、潮は微笑んで言葉を返す。
そう。虎縞福子と志田杏子は人魚のなかでも“特殊すぎた”個体であった。
戦時中戦後とリエたちとともに生き抜き、国籍を得て“人間”となった二人である。
「そろそろアタシたちも散ろうか」
腕時計で時間を確認した浜辺銀に黄肌潮が続く。
「今日は暴れるために私も残業断ってきたんだ。カルト教団の雑魚どもを心置きなくぶん殴ってやるよ」
と、手のひらに拳を打ち付けて気合いを入れた。
「楽しもう楽しもう」
腕をブンブン回して、リエはニコニコしていた。
場所は、蛇轟秘密教団の内部にある研究室に移る。
磯野フナが虎縞福子の弱味を握って協力させるために作った部屋だった。コンクリート床の四隅に太く丸い柱が立ち、天井には三本一組のLEDライトの照明が三つ並び、基本的な機材一式と冷蔵庫、そしてグレーに塗装された事務作業用デスクの横にLEDの電気スタンドがついていた。
そのような冷たい部屋に虎縞福子と摩周鱗子と摩周ヒメの三人が時間がくるまで控えていた。もちろん、生贄にはならないさせないが緊張するものは緊張する。いい加減に喉の渇きを覚えてきた。福子はデスクのパイプ椅子から立ち上がり、給湯器のある机へと足を運んで引き出しからティーパックを取り出しながら後ろに座る二人に聞いていった。
「そこの綺麗なお嬢さん方、なにを飲みます? ダージリンとルイボスしかありませんが」
「ダージリンお願いします!」
鱗子とヒメの声が同時に答えた。
そして。
「はい、どうぞ召し上がれ」
「ありがとう福子」
「ありがとう福子さん」
トレーから配られていく紅茶のダージリンをそれぞれが受け取り礼を述べた。ヒメと鱗子が見合せて笑顔になる。福子も嬉しそうだった。それは、この偽りの信仰の儀式から大切な友人である摩周鱗子を絶対に逃がせる自信があったからだ。ひと口ルイボスティーを入れたときに、福子の携帯電話が鳴った。鱗子の携帯電話は没収されている。
黒色のスカートのポケットからワインレッドの携帯を取り出して受信する。
「はい。虎縞福子です」
『アタシ、銀だけど。今いいかな』
「はい。いいですよ」
『あのね、杏子ちゃんのことなんだけど……』
電話の向こうの浜辺銀から事情を「うん。ええ。はい」と聞いてるうちに、福子の顔はだんだんと曇ってきて、「分かりました。隣の二人にも報告しておきます」と締めたときには呆れ顔で軽く溜め息をついた。
「志田ちゃん、今の今まで彼氏と寝てたそうですよ」
「ぶーーーーっ!!」
隣にいた鱗子とヒメが同時に、まるでグレートムタの毒霧のごとくダージリンティーを衝撃とともに噴き出した。息の合ったかのように同じ感じで咳き込んでいった。空になってしまったティーカップを回収した福子は、そのあと紅茶の香りがただよう床を拭いていく。「あ、ありがとう福子さん」「いいえ。どういたしまして」と鱗子とやり取りしていく。
「はああ?! なんなのなんなの? あの娘なんなの?」
鈍色の尖った歯を剥いて、摩周ヒメが珍しくぶちギレている。
しかも、噴いて濡らした床を福子と一緒に拭きながら。
穏やかで物腰の軟らかい彼女がだ。
市内の大型広告代理店の広報部で働いているヒメ。
よっぽど腹に据えかねたらしい。
そして、パイプ椅子で腰をおろした姿勢で頭をかかえた。
もうすでに、儀式の司祭の衣装を身にまとっていた。
冠はあとから被ればよい。
「なになに? マイペースすぎない? ねえ、マイペースすぎない? 大事な日の当日までヤッテたってマジヤバくない?!」
その叫んで上げた顔には青筋が。
「落ち着いてヒメさん。せっかくの美人が……」
なだめにかかる鱗子。
「知り合ってからは、少しつかみ所がない感じだけど可愛い娘だなーって思っていたんだけどさ! なにあれ? 本当につかみ所ないじゃないの!」
泣けてきたらしい。
ごもっとも。
「嗚呼。せっかくの化粧が落ちてしまいます……」
福子も心配しだした。
「あー、ちくしょう。絶っっっ対に脱出成功させてやるんだから!」
「え? ああ。ありがとうございます」
怒っても諦めてくれていなかった意思の強さに感謝した鱗子。
2
そうして。
泣いても笑っても虹色の鱗の娘を生贄にする儀式が始まった。
しかし、これには意味はない行為であった。
だが。人魚である磯野フナにとっては大変意味のある行いだった。
昔から今も人魚は嗜好品として世界各地で捕獲されてきた。
とくに人魚の肉は、食すると長生きするという。はっきり言えば、これは迷信にすぎないもので、悪食というか寄食といったいわゆるグルメの一種として人魚肉は消費されている。骨は漢方になるとも言われてきたが、治るどころか頭痛吐き気嘔吐をして神経系統を破壊されてしまう場合が大半だった。だいいち、その肝心な肉も、食べたら長生きどころではなくショックを起こして死ぬか、骨も肉体も壊死して死ぬか、どちらも死ぬ道しかない物であった。それでも高値で取り引きされてきた人魚。しかし人魚と言っても下半身が魚の“それ”ではなく、ヒトのような四肢があった。なので余計に悪趣味な金持ちやグルメを刺激していた。やがて、実年齢は不明だが、江戸文化のあたりから生き続けてきた磯野フナは、我ら人魚一族の保存と繁栄をするにはどうしたらよいかと立ち上がり、陰洲鱒町に流れ着いて今に至る。
ここの町民の話を聞くと、深き者と交配したけっかが魚の様相を表すようになり、やがてそれは鱗も生やすと知ったフナはこれらの鱗の生えた者を利用して売買すれば、我ら人魚一族から目を逸らせることができるだけでなく、種族の保存も繁栄もできるようになると考えた。しかも、とくに美しい町の娘を、虹色の鱗を生やした若い娘を人魚と言って売れば、嗜好品にもグルメにもなり資金も入って一石三鳥になる。なにせ人魚と偽って売買しているのは、血の半分以上が人間の若い娘にすぎないので、その肉を食べても死なない。よって評判が良好に変わるのは当然のけっかだったわけで。だが、アメリカ合衆国の中央情報局ことCIAはそうはいかなかった。今まで検体として捕獲してきた人魚との違いを見抜いてしまったからだ。しかし、これはこれで大変興味深い個体だからということで、これからも提供してほしいと結果的にはフナに“太い客”ができたのである。
よって今まで虹色の鱗を持つ娘を売買してきたことにより、人魚一族はだいぶん個体数を増やして子孫繁栄に成功している。だからこれからも、この先も私は一族のためにずっと続けていくつもりだと磯野フナは決意していた。
生贄の儀式の開始前には、まず、陰洲鱒の力を無力化するために鱗の娘にテトロドトキシンを虎縞福子から打ってもらうところから始まる。よって通常の流れだと、福子曰く陰洲鱒町民の特徴“馬鹿力”が消える。消すはずだったが。
「いーい? 少しチクッとするわよ」
「お願いします」
こう、わざとらしく言葉を交わしていく福子と鱗子。
教団内施設に設置されてある『監視』カメラを承知した上での芝居だった。音声も試聴されている上で女二人はやり取りしていた。福子の指先に小さな肉片を忍ばせて、鱗子の腕をとって打つ箇所を親指で隠したら、注射器に入れた真水を肉片に針を刺して注入して「打ったふり」をする。
「はい。終わりましたよ」
「ありがとうございます」
そう言って施設内研究室の出入口から送り出すときに
「鱗子さん。いってらっしゃい。気をつけてね」
「ありがとう福子さん。いってきます」
鱗子の手を握ったときに衣装の袖口にビタミンの入った注射器を忍び込ませた。福子は監視カメラに背を向けて分かりづらくしてみた。そして、手を振って見送る。鱗子も手を振り返して別れの挨拶をする。
この生贄の衣装と言っても、衣装とは言っても、素肌に薄地の着物を羽織っているのみで、帯すら絞めることを許されていない。少し歩いて行くと、司祭の衣装で摩周ヒメが出迎えた。この司祭の衣装もなかなか普通とは言えず、苔色をした足首までのワンピースなのだが、生地はかなり薄くて透けており、両肩と豊かな胸元を大きく露出したデザインであった。摩周ヒメは、これを素肌に身に着けさせられていたのである。恥ずかしくないわけがない。両脇に見張りでついている教団信者と人魚から襲われる危険性と隣り合わせだった。今年も相変わらず両側から好色の目で見られており、屈辱と恐怖を感じていた。摩周ヒメは百八〇センチに達する長身の美しい女性だが、暴力は好まない性格をしている。普段から殴る蹴るは好かないけれども、いざ己の身に危険を感じたときは手加減する必要はないと父親の摩周安兵衛も言っていた。なので仮に今ここで、ヒメ自身にはおろか隣を歩く鱗子にも教団信者と人魚が手を出そうものなら、いつでも殴るつもりで構えていた。
しかし、そのような不安な出来事も起こることなく、出入口に立つ海淵海馬のところまで鱗子を無事に送り届けられた。ここから先の“やぐら”までは海馬の役目なので、ヒメは彼女にバトンタッチして生贄を捧げる岩山まで向かっていった。
「あとはお願いします」
「任せなさい」
頼んできたヒメの腰を軽くポンと叩いて、海馬は応えた。
蛇轟秘密教団の石造りの施設は、島の手前にある鱗山の中腹を削って建てた物であった。実に仰々しくて、まるで宮殿である。そのような高さにある建物だから、当の“やぐら”も当然高い位置にあり、生贄を捧げる岩山まで長い階段を下ることとなる。“やぐら”への道から岩山まで火を焚いており、暗闇でもその先まで分かる仕様となっていた。
教団本部の施設は全て石造りだが、“やぐら”だけは違っていて、出入口から続く道から建物を経て生贄を捧げる岩山までの道まで木造建築であった。これは全て、採掘されてきた金が資金源となりここまで巨大で仰々しい建築物が可能だった。
虹色の鱗の娘たちを長きに渡って“やぐら”までエスコートしてきた海馬だったから、木造の観音開きの扉の両脇で槍を持つ二人の教団信者からは疑われることなく顔パスで、鱗子と一緒に中に入れた。“やぐら”の中は、実に標準的な木造家屋。板張りの床に、障子戸と障子窓、梁のある天井、板の瓦。木造であるのに、摩周鱗子は冷たい印象を抱いた。温もりを全く感じない内部に怖気が身体中に走り、鳥肌を立たせていく。
「鱗子ちゃんも分かるでしょ。“ここ”、魂が無いのよ」
「脱け殻、です……ね……」
悲しげな眼差しで口を開いた海馬に、鱗子は不安な顔を向けてそう言葉を返した。思わず、引きつった笑顔になる。なにも込められていない、ただただ空っぽなだけの建物。ピッカピカなのは皮だけという。なんという可哀相な建築物であろうか。鱗子は言葉を失う。
そういえば。
「あの。水を差して悪いのですが」
「あらやだ。ごめん、海蔵さん。そうだったそうだった」
床の真ん中で胡座をかいて待機していた着物姿の男にようやく気がついた。
海淵海蔵。
海馬の夫で海淵酒造に入婿した長崎県外の男である。
もちろん彼は、“こういうこと”をするために海馬と夫婦になったわけではない。彼女の魅力に惹かれて長崎まで着いてきたのだ。海蔵はいわゆる人質である。愛しの嫁以外の若い娘たちと強制的に関係を持たされているということで、彼の妻である海馬に磯野フナへの直接的に手出しをさせないことができていた。もしも下手にフナに拳を振るった場合、海蔵は“見せしめ”として殺害されることとなる。
海蔵は正直、このような信仰も糞もないただ型だけの行事が嫌で止めたかった。泣く娘たちを抱いてなにが楽しいのか。彼女たちだって最後は希望する異性のほうが絶対的に良かろう。今まで担当してきた娘たちの半数以上が脚の間から血を流した。“つらぬく”行為のあとに娘たちからビンタされたこともあった。また、娘から殴れたり蹴られたりしたこともあった。彼は昨年、自殺することを考えていた時期もあったが、その際に妻の海馬から「私たちの間に龍海が産まれたのよ。辛いでしょうけど、この子を父なし子にしないで。お願い」と涙ながらに諌められた。
薄い敷き布団の横で待機していた海蔵は、焦りだした。
「そろそろ型だけでも始めないと、怪しまれるよ」
部屋の四隅に長い蝋燭、そして敷き布団の周りに標準的な長さの蝋燭が囲うように六本。それぞれに火を灯していた。屋外の焚き火と合わさって、中で行“おこな”う虹色の鱗の娘を“つらぬく”行為を“影で”確認できるようになっていた。実に悪趣味極まりない。
「打ち合わせてた通り、俺は下になって鱗子さんの腰を掴んでいるように見せればいいんだね」
「そうそう。影絵でごまかすやり方よ」
お互い大好きな者どうしが状況確認。
相手を騙すには、ギリギリを狙わないといけない。
海蔵が予定通りに敷き布団に仰向けに寝て手を上げて虚空をつかむ形になる。
そして。
「え? 私、脱ぐんですか?」
これも裸同然なのに?みたいに驚きを示した鱗子。
「悪いけど、脱がないと影絵が分かりづらくなるでしょ」
「あー。確かに」
海馬に指摘されて、渋々と羽織りを足に落として白く美しい裸を露にした。小さいながらも型の良い胸の膨らみ、細身でかつ締まったくびれ、閉じた太腿の間にできた三角の隙間、長く適度に細い四肢。海馬が見とれてしまったほどに、鱗子は見事な身体だった。
「鱗子ちゃん。あなた鍛え上げた素晴らしい身体だったのね。なにかしているの?」
「太極拳と日本拳法を“少々”……」
褒められて嬉しいのか、照れくさそうに答えた。
「素敵ね」
「ありがとうございます。……ああ……」
そう礼を述べた鱗子は、赤面して顔を両手で覆った。
胸が痛んでくる。
しかし、いい加減に脱出を完遂させないといけないのだ。
海馬は目に溜まった涙を指で拭い、鼻をすする。
脱ぎ捨てた羽織りの袖にある、ビタミンの入った注射器を取り出した。
「鱗子ちゃん、次は海蔵さんに跨がる“ふり”をしてね」
「はい……。こう、ですか」
海蔵の横で両膝を突く。
そして、海馬の次の指示は、さらに踏み込んだものだった。
「腰を前後に動かしてちょうだい。お願い」
「え? ええ? ええええーっ?!」
切れ長なつり目がいっぱい見開いてしまった。
「あのー、海馬さん? ちょっと海馬さん? ねぇ、海馬さん?」
「あなたの横じゃなくて、あなたの下の空間に有馬さんを想像しながら腰を振りなさい」
「待って待って待って……!」
耳まで真っ赤っかにして、海馬の腕を掴む。
「そんな想像しやすいこと想像したら、私、おかしくなりそう」
「あなたも知っているでしょ。あのフナ婆さんは女の子たちの股の間を確認しているのよ。少しでも変化を起こしておかないと、連中の隙を突けないの」
悲痛な面持ちで訴えてくる海馬から、鱗子は顔を反らしてうつむいたあとに、再び目線のみを向けて。
「分かりました」
のひと言を返したのちに、片手で口をおさえた。
目を瞑り、腰を前後にゆっくりと動かしていく。
そして、海馬は注射器を構えていた。
「ようやく始まったようだね」
“影絵”が上手くいったらしい。
“やぐら”の行為を確認した人魚の磯野フナが嬉しそうに呟いた。
「しかし、始まるまでちょっと長かったんじゃないかね? 今度の鱗の娘は“なれている”だろうに」
なんらかの大型深海魚の頭蓋骨を黄金でおおった、金色の冠を被っていた摩周ヒメは、フナの背中を睨み付けていく。片手には、黄金製のピラミッドを掴んでいた。これは、生贄を海に落とすまたは飛び込ませたあとに呪文を言って投げ落としている物。
ー今ならこのピラミッドで、ババアの頭カチ割れそうね。ーー「死ね」
「なんだって?」
フナが、ちょっと驚いた顔をヒメに向けた。
「お前今、なんつった?」
「え? 私、なにか言いました?」
端から見たら仲の悪い嫁姑であった。
3
「影絵が動き出したわね」
遠くに見える“やぐら”を確認した潮干リエは、こう呟いたあと、膝を軽く曲げて飛び上がった。音を立てることなく海岸沿の岩山に白い影が着地したと思ったら、見張りの教団信者の背後から腕を巻いて喉を締め上げた。ほんの二秒三秒の出来事だった。気絶して倒れた次の瞬間は、岩影に控えていた人魚の雄の顔面をめがけて膝を叩き込んだ。そのまま着地して、相手の頭も岩肌に叩きつけて意識を失わせた。「あの女だ! やれ!」仲間を倒されたのを見た先の岩山の見張りたちが、リエを狙って駆けてきた。槍を連投するも、リエから全部余裕でかわされて丸腰になった。
「ちくしょう。ぶん殴ってやる!」
と言った教団信者は、リエから顎を殴られて意識を飛ばした。
背後から襲いかかってきた人魚の雄の首を脇に挟んで。
正面から殴りにきた教団信者の土手っ腹に爪先を刺して白目を剥かせ。
足を横に突き出して踵で人魚の雄の胸骨を破壊して吹き飛ばし。
左からきた教団信者に頭突きをしたあと顎を蹴り上げて気絶させた。
そして最後に脇に力を入れて人魚の雄を絞め落とした。
多少乱暴に岩肌に落としたのちに見下して
「良かったわね。人妻の脇味わえて」
雄叫びとともに後ろから銛を構えて突進してくる人魚の雄が二体。
あっという間に二体の間合いに入ったと思ったら、二本の銛の首らへんをそれぞれ片手で掴んだ。動きを止められて、力んで押してみても微動だにしないことにみるみる血の気を引かせていく、人魚の雄たち。対するリエの顔は、怒気を含んでいた。そしてそのまま二体を銛ごと持ち上げてしまうと、次は彼らを頭から岩肌に叩きつけた。
早々と八つの見張りを片付けてしまった。
そして、極めて不安定な足場の岩山で、リエは軽々と跳躍して尾叩き山行きのバス道路に飛び移った。
リエが雑魚を片付けている岩山から少し離れた海岸沿の岩山で、銀も教団信者と人魚の雄たちの見張りを相手にしていた。両肩を少し出したシルバーグレーの上着にジャーマングレーの膝丈スカートが、街灯と焚き火の光りを反射していた。人魚の雄が銛で銀の顔を狙って突いたつもりが、それは残像で、後ろを取られたと気がついたときには前蹴りを背中に食らって岩肌に正面から打ち付けてしまい、気絶した。横から突いてきた教団信者の銛を奪い取り、棒術または杖術よろしく銛の首を持って根元を振り回した。銀の四肢の長さもあって、当然リーチは伸びる。一振で人魚の雄たち三体の顔に当てて気を失わせた。振って戻ってきた銛の半ばほどを掴んで、その根元を残った二人の教団信者に向けて腰を落として構えた。怒りの切っ先で突いてきた銛を半身にしてかわすと、二発肉を叩く音を鳴らした。それは、切っ先をかわしたと同時に踏み込んで、棒の先端で小手を叩いて相手が銛を落とすのを待たずに、顔面の真ん中を叩いた。わずか一秒になるかならないか。少し間を空けて、一人目の教団信者は銛を落としたのちに横に倒れこんだ。浜辺銀の、いつも明るい感じの表情が完全に消え失せていた。眼差しを残ったひとりに向けたのちに、構えたまま身体も同じ方向にした。
「どうしたの、ボク?」
ただ、口調は相変わらずであった。
こちらも銛を構えてはいるが、踏み込む隙がない。
見張りの教団信者の怯えを確認した銀。
慈悲をかけるかと思いきや。
一歩踏み出したと思ったときには、上部でヒュッと鳴るのを聞いた。
左手に持ちかえていた銛の先端が伸びて、脳天をカチ割った。
意識を飛ばして、教団信者は気絶して仰向けに倒れる。
間合いにしても三メートルほどもある。
それが届いて、相手の脳天を叩いたのだ。
棒術やら杖術やらの使いなれた感じも怖いが、もっとも怖いのが浜辺銀から笑顔が消えていることだった。倒れた教団信者を見たまま、彼女は後ろの二人に話しかけていく。
「家業はどうしたの? 今日はお休み?」
「ふん。たかが棒が振り回せるからって、イキってんじゃねえぞ」
後ろの黒いランニングシャツにジーパンと黒い革靴の二人のうち、ひとりが返した。そのあとに、同じ顔をしたもうひとりが続く。
「雑魚倒したくらいでいい気になるなよ。オバサン」
「オバサンでも所詮は“女”だ。手足の腱を“これ”で切ったら俺たちの好きにさせてもらうぜ」
同じ顔をした二人が自慢する“これ”とは、グラディエーターの両刃のサーベルに、鋸の二枚刃が互い違いに両刃を囲うようにできている長物であった。形としては、ノコギリエイとノコギリザメの口先。
黒髪をオールバックにして、それぞれひとりは右側の前髪、もうひとりは左側の前髪を垂らしていた。上半身にたわわな筋肉を実らせて、黒いランニングシャツはパツパツだった。逞しく鍛えた首筋には、五つの鰓。肋あたりにも、“それ”の浮き出た形を三つほど確認できる。四角い輪郭に、切れ長で彫りの深い黒い眼と銀色の瞳。彼らは間違いなく人魚であった。
「楽しんだあと、屠殺して売ってやる」
「しかしタバコ吸うんだぜ。モツは不味いだろうな」
明らかな嘲りが含まれて、銀の背後にへと「ヒヒヒヒ……」「ケケケ……」と下品な笑い声が浴びせられていった。
彼女の肩が軽く上下した。
どうやら、溜め息をついたらしい。
「あのね、お喋りしている暇があったらね、かかってきたらどうなの? オバサンが怖いの?」
相変わらず背中を向けたままだった。
「“ぬかせ”! 俺たちがびびっていると思ってんのか?」
「我ら野木切ブッチャーズ! 野木切鱏一!」
「同じく! 野木切鱶二!」
「長男!」
「次男!」
そして最後はハモる。
「見参!」
「だっさー……」
銀はあきれていた。
場所はさらに移って。
リエと銀が雑魚を片付けている海岸沿いの裏側。
こちらも不安定な岩山と、大きな浜がある波打ち際。
そんな悪い足場の岩山をめがけて稲穂色の髪をした美しい女性が、上の山道から舞い降りた。音を立てずに着地して、見張りの人魚の雄の首に両腕を巻いた。世間一般でいう、チョークスリーパーである。キュッと絞め落としたすぐに、真横で気づくことなく見張りに従事していた教団信者の横顔を蹴飛ばした。岩肌に頭を強く叩きつけて、哀れ教団信者は気絶した。二人を瞬殺されてようやく気がついた、右側で見張りをしていた人魚の雄。稲穂色の髪の長身美女をめがけて槍を突き出してきた。その女が三角白眼で睨んだと思った瞬間、間合いに踏み込まれて顔面ど真ん中に拳を食らって、岩山に仰向けに倒れた。頭を打ちつけて気絶。それから、やっとこさのことで状況を理解したのか、それぞれ三ケ所の見張りの岩山の奥で待機していた三つの影が立ち上がってきた。
三体ともに人魚の雄。皆それぞれ槍を構えていた。
「ふん」
そう言って三体へ振り向いた女は、黄肌潮だった。
三体の雄の人魚を前にして、彼女はボクシングの構えをとった。
足場は不安定で、ボクシング特有のステップは踏めない。
しかし。
「来な。まとめてオバサンが相手してやるよ、坊や」
鈍色の尖った歯を見せて笑う。
間合いにしても三メートルはある。
「と、届くわけがなかろう」
「馬鹿な女だ」
「しかし身体は“女”だ」
瞬間。
グンと接近してきたと気づいたときには、すでに遅し。
黄肌潮の拳は二発は二体の顔に、一発は三体目の顎に入っていた。
脳味噌を揺さぶられた三体目はなにをされたのかも分からず気絶。
真ん中にボディーブロー、端にアッパーカット。
鮮やかすぎて早すぎた。
あっという間に三体の雄人魚を葬った。
腰に拳を当てて仁王立ちになってニヤリとする。
「歯ごたえなさすぎやな」
そんな潮の背後から。
「調子に乗ってんな、オバサン」
「ババアは屠殺するに限るぜ」
二つの影が気遣いを見せない言動を潮に投げていく。
「しかしあれだ。剥いたら身体は“女”だよな」
「ああ、そうだな。腱を切って楽しんだあとに肉を売るか?」
それらの言葉を背中で受けていた潮は、白い紐を取り出して髪の毛を襟足にまとめた。背中はいまだに後ろの二人に向けたまま。
「今日は誰が代わりに肉屋してんの? 暇なのかな」
「暇なものか。お前が暴れて見張りを殴っていたから緊急招集食らったんだよ!」
怒りあらわに長物の切っ先を彼女の背中に向けた。
「手前ぇらのせいで、商売はお休みだよ!」
もうひとりの影も切っ先を彼女の背中に突き出した。
二人ともにたわわな筋肉を実らせて、黒いランニングシャツはパツパツ。ジーパンに黒い革靴。四角い輪郭に、彫りの深い黒い眼と銀色の瞳。鍛え上げた首に五つの鰓。そして、肋のあたりに浮き出た三つの形は、首のそれと同じもの。彼ら二体も間違いなく雄の人魚であった。だが、先ほどの浜辺銀に挑む二体の鱏一と鱶二とそっくりというか、全く同じ身なりだ。ただ、髪型が違うか。短い黒髪を右に七三と左に七三。自慢の長物も、両刃のサーベルに鋸の刃が付いた物。
振り返って笑顔を見せた黄肌潮。
「良かったじゃん。自営業ってなかなか休み取れないでしょ」
「良いわけがなかろうが!」
右七三が拳を立てて尖った歯を剥き出した。
隣の左七三が指を強くさしていく。
「なんなんだよ、お前!」
そんな二体の突っ込みに肩をすくめて惚けた潮。
「あたし? ボクシングが好きなただの美女だよ」
隙あらば自身を褒める姿勢。
「そういや、坊やたち野木切……なんだっけ?」
自己紹介しろという、彼女の優しさであった。
「知りたければ教えてやる。俺は野木切鱏三郎!」
「同じく! 野木切鱶四郎!」
そして双子仲良く。
「我ら! 野木切ブッチャーズ見参!」
場所は戻って。
尾叩き山行きのバス道路。
潮干リエは着地と同時にすでに待ち構えていた二体の影と対峙していた。
嬉しそうに微笑んで、後ろに手を組む。
「あなたたち、可愛いわね。指名していないのに可愛い娘用意してくれるなんて、けっこう気が利いているじゃない」
本当に嬉しそうである。
確かに、こちらの二体はあどけなさがある顔立ちだった。
二体同時に両刃のサーベルに鋸の刃の長物の切っ先を、リエに向けて。
「オバサンたちが暴れまわるから、私たちに緊急招集かかっちゃったじゃないの! どうしてくれんのさ!」
「ざけんな! こちとら自営業で忙しいんだよ!」
声も若々しい。二〇代前半くらいか。
リエは目じりが下がりっぱなしである。
「可愛い人魚なんて初めて見たわ。まず、私とショートメール交換してみない?」
「ちょっと待て待て。なにが『まず』なのよ!」
クリッとしたアーモンド型のつり目を見開いて、焦る。
「普通、敵をナンパするかよ!」
隣の一体が、尖った歯を剥き出して突っ込み入れる。
二体の容姿は、卵形の輪郭にクリッとしたアーモンド型のつり目が黒い眼と銀色の瞳。首筋には、五つの鰓。黒いノンスリーブにデニムスカートと黒いシューズ。服で隠れてはいるが、肋のあたりに三つの鰓を持つだろう。全く同じ身なりで全く同じ造形の顔立ちだった。間違いなく人魚の雌で、双子。見分けるとしたら、髪型か。右側が、真ん中分けのポニーテールで右に前髪を垂らしていた。そして、左側も真ん中分けをポニーテールにして左に前髪を垂らしていた。
「まさか、あなたたち野木切ブッチャーズの娘なの?」
自己紹介を促してくれる、気のきいたリエ。
「なんだよ、知らないなら教えたげるよ。私は、野木切鱏美!」
「そして私は、野木切鱶美!」
「長女!」
「次女!」
最後は仲良く合唱。
「我ら! 野木切ブッチャーズ!」
「よくできました」
ニッコニコで拍手していく潮干リエだった。
4
場所は戻って。
虹色の鱗の娘を生贄に捧げる岩山。
ほぼ垂直になる岩肌に当たる波が、強い飛沫を上げてきた。
磯野フナは、顔中に刻まれた皺で不満気に洩らしていく。
「あの女たち、せっかくの見張りを殴るなんて愚かだねえ。おかげで、肉屋を呼んだじゃないか。まったく、なにをやってんだか」
冠を脇に抱えていた摩周ヒメが、隣の人魚の老婆に瞳を流す。
クソ暑いから冠を脱いでいた。
「ひとつ言っておきますけど。見張りを立てるだなんて、物騒ですよ」
「なにを言う。儀式の邪魔されないように、今のあの女たちみたいな不届き者が出ないように対策しとるんじゃないか」
ヒメに顔を向けてこう返した。
海中、左右、に目を配ったのちにフナに顔を向けてひと言。
「フナさんは分からないかもしれませんが。この島この町、長崎地元の観光地のひとつなんですよ」
「……え?」
「あら。知りませんでした? 磯の香りと味の煎茶、純米酒に焼酎、一夜干しに蒲鉾、海鮮料理、尾叩き山に鱗山に鱶鰭山に螺鈿岩、お魚のカブトを象ったバス停留所、尾叩き民宿、龍留家餅と煎餅、螺鈿様温泉。ーーーざっと上げただけでもこれだけもあるんですよ。人の出入りが少なくなってしまったと考えたこともなかったんですか? あなたが見張りなどという物騒なものを立ててから警戒されて、私たちの町は外部から遮断されつつあるんですけど。どうしてくれるんですか」
「どうしてくれるんですかって、私の知ったことじゃないよ」
「あら、そうですか。では、今の騒ぎも私の知ったことじゃありませんわね」
「ぐぬぬぬ……。小娘……」
珍しく動揺の色を見せるフナ。
美しい嫁 vs 意地悪な姑。と言ってはいけない。