丸山町決戦!ダイヤちゃん、雷蔵を捕食する
1
CLUB KING OF HERRING 一階。
八百比丘尼と激戦を終えて引き分けた榊雷蔵は、アニュス・アマダス・カリスを引き連れてクラブ二階の内部階段を下りていたところだった。可愛くも美しいユダヤの魔女、アニュスを隣に並べて、なおかつ彼女の歩調に合わせるかたちを取りながら雷蔵は二人で下っていた。ちなみに、八百比丘尼は“とっとと”クラブから出ていった。以上から、現場に残された男女二人きりであるために、なにも無いという保障は無い。なので、雷蔵は自身に自制を利かせるようにしていた。相手は魔女と言っても見た目は同じ年齢だと推測される上に、浅黒いオリーブ色の肌が大変魅力的な美貌の娘ときた。そして、意外と身長が高く、青年と相思相愛の相棒である瀬川響子の身長百六五センチよりも数センチ上だと分かった。しかも、細くて薄めな身体に対して、なかなかの大きさがある胸の膨らみ。香水など付けていなさそうな、軽く汗ばんだものから来る若い娘の独特な匂いが、雷蔵の嗅覚に触れていった。
ーなにか、気を逸らす物はないか?ーー
雷蔵がこう思っていたとき、彼は不意に思い出した。
「そういえば。一階で威勢よく声をあげていたのって、君だったのか?」
「あーー…………。兄さん。あのときは、ごめんよ。あまりに凄い物を見せられて、私テンパッテたんだ」
「へえ。そうか。俺の技を“そう”思ってくれるのは、嬉しいな。ーーーん? アニュスさん、君、日本語が話せるんだ?」
「はっ……! しまった……!」
アニュスは目を真ん丸くして、口もとを両手で押さえた。
数秒間の沈黙。
両手を下ろして、焦げ茶色の瞳で隣の雷蔵を見上げていく。
で、目線を外して床に向けた。
「ごめんなさい。本んんっっ当ぉーーに、ごめんなさい」
「?ーーーなんで謝っての?」
「いや、その、いろいろと誤魔化していたり嘘ついていたり……」
「俺は。敵を前にして手の内を見せない、というのは普通だと思うけれど」
「違う。今は、私と兄さんは敵対していないじゃないか」
「まあ、そりゃそうだな」
そうこう言葉を交わしている間に、二人は一階のバーカウター前に来た。足を止めて、会話を続けていく。
「敵どうしでなけりゃ、謝ることないと思うよ」
との雷蔵の考えに。
小さめな声でアニュスは申し訳なさそうに返していく。
「そんなこと言っても、私が兄さんに対して殺意を向けたことは事実だったから。だからさ、今から時間を作れるなら“なにか”埋め合わせくらいさせてよ」
「埋め合わせ? なんか美味い物でもご馳走してくれるのか?」
「そうそう。それ良いアイディアだね。私、財布あるんだ」
「財布?」ある。ようには見えない。
「心配することないよ。私、肌身離さず持っているんだ」
そう言いながら、アニュスは実に嬉しそうに背中に掛けていた銃剣を袈裟から外して壁に立て掛けたあと、シルバーグレーのタンクトップを“ペロン”と上まで捲り、首から下げていたグレーの合皮財布を見せてファスナーを開けて中身を確認していった。すると、徐々にアニュスの笑顔が消えていき。
「ねえ、丸山町のコンビニはドル札とセントコインで買い物できたっけ?」
「…………。できないよ」町内の記憶を確めたのちの答え。
「はぁーー」
沈む息を吐いていきながら、アニュスはタンクトップを下げた。
なにもできない己に、気を滅入らせていくユダヤ娘。
おもむろに下腹部に手を当てて、なにかを確かめていく。
しばらく様子を見ていた雷蔵であったが。
「まあ、その埋め合わせは今の状況が片付いてからでも遅くない。ーーーさあ、行こうか。仲間たちと合流して、情報を入れないとな」
と、歩き出した雷蔵の袖口を、アニュスが指で捕まえ。
なんだか恥じらっているような表情で話していく。
「あのさ……。埋め合わせって、もっと他の方法があるよね……?」
「他の方法? 俺たちがしていることに加勢してくれることか」
「いや、それもそう、だけど」
少し前まで女は侵略者だったが、まだお互いに初対面。
アニュスは青年の袖口から指を離して、タンクトップ下の防御パット付きブラジャーを外してバーカウンターに置いた。下着のない彼女の大きめな胸は、タンクトップからでも分かるほどにその先端部が立っていた。さらになにをするかと思えば、再びタンクトップを“ペロン”と捲って、豊かな胸の膨らみを露にさせてマホガニー色の先端部まで雷蔵に見せた。やや肉感的とは言え、彼女のスタイルは細身の長身であり、新世界十字軍の隊服を着ている上からは決してこのグラマラスな胸元は分からないものであった。しかし、アニュスのこの行為に顔を背けた雷蔵。
「早く“それ”をしまってくれないか?」
少し頬が赤いか。雷蔵は拒否反応を見せていた。
が、アニュスはお構いなし。
「私自身で埋め合わせしてあげるよ。遠慮しないで」
「いいから、タンクトップを下ろしてくれ」
「分かったよ」
と、雷蔵の頼みを聞いてタンクトップを下げて、青年の背後を捕った。そして、彼の逞しい背中の筋肉に胸の膨らみを押し付けて、腰に腕を巻いた。彼女の手元は、スラックスズボンのジッパーに掛かっていたのだ。当然のごとく、雷蔵が驚きをあげていく。
「おい! ちょっと待ってくれ!」
「ごめんなさい。私が、その……、我慢できなくなって……」
「は!? 悪い冗談はよせ。我慢しろよ!」
「お願い……。埋め合わせさせて……」
背中から伝わる、アニュスの熱い息づかい。
彼女は、生まれて初めて身体中から興奮していた。
雷蔵の汗と体温が彼女の“女”を“よけい”に加速させた。
指で摘まんで、ジッパーを下ろしていく。
アニュスは身体を寄せ、胸を密着させて頬も付けた。
頼むからやめてくれ。との雷蔵の懇願を遠くにして。
トランクスの前ボタンを外して、褐色の手を滑り込ませ。
雷蔵のモノを“そっと”掴んで、丁寧に取り出した。
肉の盛った青年の肩越しから逸物の“具合”をうかがう。
「はあぁぁ……。大きくなってる……」
潤ませた瞳と熱い吐息で、アニュスは感嘆した。
グッと鍛えた腰に腕を強く巻き、下腹部にやった手を動かしていく。雷蔵のモノを手で上下に動かしていく度に、アニュスは喘いだ。しばらく動かしていってから手を離して、今度は前に回り込んで跪き、“彼の”を咥えた。おい!馬鹿!なにしてんだ!などの懇願も虚しく、雷蔵はアニュスから口の奉仕を受けていってしまった。舌と唇と唾液を駆使して、美しいユダヤ娘の魔女は青年の逸物を数分間に渡って“愛でて”いった。そうしていったあと、うっ!と呻いたときに腰をビクッとさせた雷蔵は、アニュスの口の中に白濁した液を放出した。両手で腰をしっかりと掴んで、雷蔵のモノを全て口で受けていったアニュス。一回の射精で止めなく流れ出てきて、魔女の口を溢れさせていった。
「んん! んん!」
全てを受け止めながら、アニュスは喘ぐ。
やがて出しきったなと口の感覚で確認した彼女は、雷蔵の白濁の体液を含んだまま唇でキレイに拭き取ってから彼を解放した。後ろを向いて、バーカウンターの流し台に気づいたアニュスはそこに行って、口に溜めたモノを吐き出して“うがい”を繰り返したのちに、再び雷蔵のもとに戻ってきた。
「あ。待って、まだ終わっていないよ」
「終わりだよ、終わり! 埋め合わせはお釣が来すぎなくらい“じゅうぶん”いただいたよ!」
慌ててジッパーを上げていた雷蔵にアニュスが飛びついた。この不意打ちに、雷蔵は床に尻餅を突いた。まあ、受け身は取った。むしろ、アニュスを心配して両腕でキャッチした結果だった。そんな好青年の気持ちなどよそに、彼女はバックルを外していく。
さすがに、雷蔵はちょっと半べそ気味で懇願した。
「おい! 本当にやめてくれ!」
「本当にやめてほしいなら、殴るなり蹴飛ばすなりすればいいじゃないか!」
「敵意が無いヤツにそんなことできねえだろ!」
「それだよ、それ! 兄さんの、そういうところ!ーーーもう……、最っっ高っ……」
雷蔵の考え方に恍惚となったアニュスが、唇を吸った。
これをされても、彼女を決して抱きしめない雷蔵。
彼が抱きしめる相手は、相棒の瀬川響子のみである。
二の腕を掴んだままで、キスが終わりしだい引き離す予定だった。舌を入れて絡ませたあと、アニュスが顔を離したとき、二の腕を掴んでいた雷蔵はさらに押して魔女から距離を置いた。はずだったが、そうは問屋が卸してくれないもので、彼がホッとして掴んでいた両手を放した隙を突かれて、ズボンとトランクスを下げたアニュスから逸物を咥えられてしまった。アニュスは愛おしそうに、雷蔵のモノを啜って濡らしていく。今度は一分二分と経たずに、モノから顔を上げて手は握ったまま上下に動かしながら、潤んだ眼差しで青年を見ていく。
「凄い……。出したばっかりなのに、まだ“こんなに”硬いんだよ……」
片手で“シゴキ”ながら、アニュスは腰骨パンツを脱いで、彼の肩に両手を乗せて跨がりはじめた。異常なほどに積極的なユダヤの魔女に対して雷蔵は恐怖を抱きだしたと同時に、頭の中では響子に対する謝罪の思いがグルグルと廻っていた。怯えも顕にしだした雷蔵の首に腕を巻いたアニュスが、ゆっくりと腰を落としていった。己の“入口”で彼の先端部を確めたとき、中へと受け入れていく。このとき、予想外の圧迫感を覚えたアニュスは、思わず熱い吐息を漏らした。
「はぁぁ……! 大……きい……! んっあ……!」
そして、アニュスが腰を前後と上下に動かしていったところで。
「そこまでだ!」
扉を蹴り開けて、尾澤菜・ヤーデ・ニーナが浜辺亜沙里とジェシカ・ルビー・ボンドを引き連れて入ってきた。
2
「現場を押さえたぞ! 動くな!」
威圧を持って出入口から足を進めてきたニーナを目にした雷蔵とアニュスが、ビクッビクッと身体を痙攣させた。
「うっ!」
「ああ!」ー凄い! いっぱい出てくる!ーー
ギュウッと雷蔵を抱きしめて、アニュスは引いた腰を動かしていった。余韻を味わおうと雷蔵へキスをしようとしたアニュスの腕を、ニーナと亜沙里が両側から抱えて引きはじめた。
「お前、コイツから搾り取る気か!」
「引きますよ、ニーナさん!」
そーっと雷蔵からアニュスを引き抜いて、彼女をバーカウンターの椅子に座らせた。一緒に入ってきたジェシカはというと、お尻を床に突いてペタンコ座りで赤面した顔を両手で覆っていた。あら?と、恥じらう彼女をチラ見したあとニーナは被害を受けた後輩に声をかけていく。
「雷蔵! 大丈夫か? 動けるなら早くズボンを穿き直せ」
「え、ええ……。ありがとうございます…………」
なんだか、“しょんぼり”としていた護衛人の青年。
しかも、“やつれた”感じも受けた。
アニュスを捕獲したまま、ニーナは雷蔵に話していく。
「少し“べそ”かいているな。トイレで洗って気持ちを直してこい」
「分かりました」
精神的ショックからくる後輩の“おぼつかない”足取りを心配して見送ると、ニーナは再びアニュスに向き合う。彼女の二の腕から二人は手を放して、ニーナと亜沙里が前に立った。
「あたしの大事な後輩を襲いやがって」
「そんなに大事な“彼氏”なら、最初から付き添っていればいいでしょ」
ボーッと恍惚の余韻に浸りながらも、アニュスはニーナに返した。
「彼氏じゃねえよ。アイツは仕事の後輩。あたしの彼氏はアーリア系のビリーだ。“そういう関係”じゃない」
「どうだか」アニュスは、ちょっとムッとして返した。
「あんたを掴んだとき、見えたぞ。新世界十字軍のヤツだろ?」
「ご名答」
「…………。まあいいや。ーーーお前さんには悪いが、さっきちょっと悪いモノを見たんだよ」
「なにを?」
「同じ軍隊の男たちから、お前さんも含めた魔女たちが“おもちゃ”にされているところがね。同じ侵略軍でありながら、ヤツらから“なんつー”扱いを受けてんだ」
「そういうあんたこそ、魔女でしょう? 私も見えたもの。ーーーそう。私たち魔女は部隊の中では娼婦となんら変わらない……。魔力を持っているから神聖って験担ぎされていても、結局は男たちの“処理場”のままなんだよ。あの部隊には、“ろくな”男たちなんか居やしない。だから私は抜けたの」
「あたしは、それは本当に気の毒だと思っている。けれど、あんたがアイツにしたことは“まんま”そっちがされてきた“おもちゃ”として扱ったんだよ」
「なによ、それ?」怒気がこもる。
「先に言っておく。被害を受ける側にとっちゃ、男も女も関係ないぞ」
「…………ぐ」見透かされたから、声が詰まった。
目瀬をニーナから外したあと、再び戻す。
「でも、あの兄さん独りなんでしょ?」ちょっと頬が赤いか。
「お前、雷蔵のこと全部見えていなかったのかよ?ーーーアイツには、瀬川響子という相思相愛の相棒がいるんだよ」
「え……っ!?ーーーぐぬぬ…………」なんか悔しい。
「だから雷蔵が“あんた”へ必死に止めてくれと繰り返し懇願していただろ。お前さん、解放されたあげく夢中になっちまって遮断していたな? そうだろ」
「むむむ、夢中、という、か……。まあ、それは、そう……」
「世の中には女を殴って当たり前なヤカラがいるけど、敵意の有り無しで考えているの雷蔵は稀(馬鹿)なヤツだ。覚えておけ」
「分かりました。覚えておきます」
と、少しフンッと突っぱねを含んだ感じでアニュスは返した。ニーナは、この美しいユダヤ娘に多少の疑問を持ちつつも。
「今の出来事は水に流すとは言わない。けれど、事を進めるために“いちおう”閉める」
「あら? そぉーお?」ちょっと笑みを表した。
「ここで切り換えて、お互いを紹介し合おうか。ーーーあたしは、尾澤菜・ヤーデ・ニーナ。こっちは、浜辺亜沙里。で、あっちは、ジェシカ・ルビー・ボンド。よろしく」
「私は、アニュス・アマダス・カリス。元・新世界十字軍第九団隊魔女部隊隊員。母国のヘブライ語、そしてアメリカ英語と日本語まで話せるわ。よろしくね」
「そう。あたしは母国ドイツ語と日本語、そしてイギリス英語を話せる。あと、ニュアンスを掴みづらいけれど、アメリカ英語も“多少は”できる」
ニーナのあと、ジェシカが挙手して参加してきた。
「はいはーい。ミーは母国のイギリス英語と、アメリカ英語。日本語も大丈夫よ」
「え。じゃあ、私も私も」
なんかウキウキしだした亜沙里も参加してきた。
「ネイティブじゃないけれどね。英語、中国語、アラビア語、現代ヘブライ語。この四つは分かるし、“ちょっとだけ”話せるよ」
「わーお。亜沙里すごいねー!」
瞳をキラキラさせるジェシカ。
「でしょー。えへへ」
ニコニコ笑って隣のイギリス魔女に向けた。
「あ、亜沙里ちゃん。この前、じぶんのこと学がないとかって言っていなかった?」
本当かよ?と言った顔を向けてきたニーナに、亜沙里は。
「教団に関わっていた間は、ものすごーく暇だったのね。だからとりあえず、いろんな国の言葉に目を通しておこうかなと。そのことを母さんに伝えたら、海馬さんと鮒さんとヒメさん、そして摩魚が嬉しそうに外国語の本とディスクを持ち寄ってきてくれたおかげで、ちょっと身に付いちゃった」
「すげー。ーーー現場ヘブライ語が分かるなら、そこのユダ公がもし“なんか悪いこと”を言った場合でも理解できるんじゃない?」
ユダ公。と言ったニーナから指をさされたアニュスが、えっ?と驚いた顔をした。亜沙里はジーーッとユダヤ娘を見たあと、再びニーナを見て。
「分かるよ」
「マジか!」と、驚愕するアニュス。
そしてここで、榊雷蔵が男子トイレから“帰宅”。
「待たせました」
「お帰り。ーーーよし。イイ顔に直してきたね」
ニーナは微笑みを雷蔵に向けたあと、アニュスを見て。
「お次は、あんただ。今からトイレで腹の中のモノを全部掻き出してこいよ」
「え? な、なんで?」
「なんでって、お前。響子ちゃん以外で、ウチの後輩にガキができるのは駄目だ。いろいろと最悪すぎる。だから行って吐き出してくれ」
「ふん。ずいぶん偉そうじゃない。ーーー例えば、私がトイレで時間稼ぎして、出してきました、というふうに言葉だけで済ませる可能性もあるわよ」
「なるほどね。そういう“手”もあったか。ーーーじゃあ話しを変えるわ。今からこの場で出しきってちょうだい」
「え? え? は? え? いや、ちょっと。ええ!?」
「あんたさんも馬鹿だねぇ。黙ってトイレ行ってりゃ、あたしたちを騙せたものを。こっちには他の選択肢なんざ、はじめから無いんだよ。ーーーだから、そこの流し台で雷蔵のザーメン出しきってこい」
「分かったわ……」
と、アニュスは観念したあと、雷蔵を恥ずかしそうに見て。
「さっきは、ごめんなさい。でも今からすることは、兄さんに見られていると、その、恥ずかしい……」
「だそうだ。ーーー雷蔵、ちょっとの間だけ“そっぽ”向いてて」
先輩のニーナからの頼みに、青年は頷いて背を向けた。
これを確認したあとアニュスに再び向いて。
「いいぞ。始めて」
「…………うん…………」
というわけで、それからアニュスはニーナたち女三人の前で腹の中のモノを出しきっていった。




