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虹子姫、姉上と会う


 1


 同日。

 時間を少し遡り、昼過ぎまで。

 場所は海淵龍海の隠れ家。

 海原摩魚の影武者になっていた有馬虹子と、浜辺亜沙里は潮干ミドリとタヱから虹色の光りを引き出されて、二度の共鳴を受けて気絶してそのまま昼まで眠りについていた。そのような女二人を看ていてくれていたのが、龍海たつみである。そうして、目を覚まして布団から身を起こしていった女二人は、お互いにアイコンタクトをして笑顔になった。座布団で胡座をかいて待っていてくれた龍海を見て、まずは亜沙里から声をかけていく。

「龍海。ありがとう」

「ありがとう、龍海君」

 亜沙里と虹子の二人は微笑みを向けて礼を言った。

「いいえ、どういたしまして。ーーー二人とも無事で良かったよ」

 龍海の頬の肉が微かに上がり、口角も少し上がった。

 浜辺亜沙里がマインドコントロールから解放されてから以降、顔が魚化しているこの青年の表情は柔らかくなっていた。声と言葉にトゲがあったのは、蛇轟秘密教団と院里学会からの監視下に置かれていたせいでピリピリと緊張していたためか。しかし今は、それらの刺は全て落ちて、穏やかな印象に変わっていた。いや、海淵家の人々は母親の海馬みまといい娘の真海まみといい普段は穏やかな声と口調なので、息子の龍海は従来通りの海淵家の人に戻ったと言うべきか。

 彼の言葉は、安堵の息とともに出てくる。

「君たちは当然として、今日のことは俺も驚いている。二人の意思に関係なく虹色の光りと鱗が出てきた。海原君の鱗のことは聞いてはいたが、亜沙里のには正直予想もしていなかった」

「本当、びっくりしちゃった。ーーーでも、あなたの前で良かった」

 こう微笑んで答えた亜沙里の顔は、大人びていた。

 これを見た龍海と虹子が、美しさに言葉を詰まらせる。

 そんな亜沙里は、うっとりとした表情で上着の肘までの袖から出ている下腕を労るように撫でていきながら、語りを続けた。

「虹色の鱗って、本当にあったんだね。噂でしか聞いていなかったから。今の今まで見たことがなかったもの。ーーー私ね、鱗は母さんの銀色と似た白金プラチナだったんだ。けれど、それが嫌じゃなかった。だって、母さんと一緒なんだもん」

「そうだよね。亜沙里は母さんが大好きだものね」

 嬉しそうな顔をした摩魚が、相づちを打った。

 級友のひと言に、亜沙里は同意していく。

「母さんが好き。龍海が好き。そして、最高の友達の“あなた”とミドリが好き。これからも、それはずっと変わらないよ」


 このあと、虹子と亜沙里は身体中に吹き出していた汗をシャワーで一緒に流して、各々の服に着替えた。


 それから約一時間後。

「ただいまー」

 海淵海馬うみふち みまとその妹の流海るみが、隠れ家の八畳間に現れた。抱えていた荷物を両手から畳に下ろして、それぞれ座布団に腰を下ろしていく。集まっている面々を見渡したあとに、海馬みまは切り出した。

「もう連絡はきていると思うけれど、私と流海も含めて、共鳴が起こったわ」

「今回は規模が大きいのよ。この人数は、砂金掘りのとき以上なの」

 と、鈴の鳴るような声で流海が続けた。

 妹から海馬は繋げる。

「会社の護衛は、私の父さんと母さん、そして海蔵うみぞうさんに任せてきたわ」

 そして、姉妹ともに受けた虹色の共鳴と事情を話していった。


 このあと。

 腹が減ってはいくさはできぬ、とのことで、龍海たつみたち五人は昼飯を食べた。そのちょうど食べ終えたころに、摩魚の影武者をつとめていた虹子のスマホに、着信が入ってきたので、四人にひとつ断ってから出た。

「お疲れさまです」のあとに「うん。ええ……、はい」と受け答えした最後は、表情をみるみると明るくしていき、「やったーーー!」と拳を天井高く突き上げて、「お疲れさまです」と返して通話を切った。一連の行動を見ていた四人。海馬みまが代表して摩魚に聞いてみた。

「虹子ちゃん。なにが、やったなの?」

「私の姉が昏睡状態から目を覚まして、今こっちに雷蔵ちゃんたちと一緒に向かってきているそうです」

「……え? 摩魚って、お姉さんいたっけ?」ーら、“雷蔵……ちゃん”……?ーー

 不思議そうな顔で、亜沙里は確かめてきた。

 そして、雷蔵の呼ばれかたに吹き出しそうにもなっていた。

 そうとは知らずに、龍海たつみが恐る恐る口を開いた。

「じゃ、じゃあ……、君は、いったい、誰、なんだ……?」

「え……、嘘……。私と龍海と、一緒にいた、あなたは、摩魚でなくて、なん、なの……?」

 亜沙里も、声と手を震わせて虹子に指をさしていく。

 先ほどまで、海原摩魚と思って接していた、この女は?

 二人して仲良く恐怖に震えてきたところで。

「ああ、その子ね。有馬虹子って言って、摩魚ちゃんの実の妹さんなのよ」

 明るい顔と声で、海馬みまが入ってきた。

 そう紹介された虹子は、申し訳なさそうにヘラヘラとしながら、亜沙里と龍海へ頭を下げていく。

「いままで騙してて、ごめんなさい。私、海原摩魚の実の妹の有馬虹子です。よろしくお願いします」

「あーー!」

 と、指をさしたまま、亜沙里が驚いて。

「あのとき、摩魚に輸血してくれた人ね!」

「え? え?」いまいち状況を飲み込めない龍海。

「ほら、モデルの有馬虹子だよ」

「そ、そうか……。有名人なのか……」

 知らない龍海は困った。

 これを聞いていた海淵流海うみふち るみが、膝を伸ばして立った。

「えー。虹子ちゃんなの。私も、摩魚ちゃんだと思っていたわ。ーーーでも、そうと分かれば話しは別ね」

「どうしたんですか?」

 こう、虹子に聞かれた流海るみは。

「私ね、四十年以上前まで美容師だったの。でもね、ここにくるたびに道具一式を持ってきていたんだよ。だって、生贄になる前の日、虹色の鱗の女の子たちはね、この世界から消えるくらいなら綺麗になってお別れしたい。と、ほとんどの子がそれを希望してきたの。有子ちゃんも、真海も、そしてミドリちゃんも例外ではなかったわ。だから、それを経験のある私が役割をかって出て、いままで続けていたんだけど」

 と、言いつつ、本革のボストンバッグから理美容の道具一式を取り出して、お膳に広げてみせた。これらを見て、感心の声をあげる虹子。

「わあ! 凄い」

「でも今年は、ミドリちゃんが復活したり、生贄にされる予定だった摩魚ちゃんが別の場所で安全だったり、そして、あなたが傷つかずに無事だったりして、今の私は晴れ晴れとしているわ。ーーーだからね。もう、女の子たちをお見送りしなくて良くなったんだと。そういうことで、今から虹子ちゃんの髪の毛を、いつもの“あなた”の髪型に戻そうかなあって、楽しくなっちゃったの」

「お願いします!」

 と、笑顔で頭を下げていった。

 庭に移動して。

 有馬虹子を散髪開始。


 と、そんな中に。

「お邪魔しまーーっす!」

「お邪魔します!」

 浜辺銀はまべ しろがね尾澤菜おざわな・ヤーデ・ニーナ、訪問。

「あ。いらっしゃい」笑顔の海馬みま

「母さん!」喜ぶ亜沙里。

「あらー。いらっしゃーい」微笑む流海るみ

「お疲れさまです。こんにちは」歓迎する虹子。

 庭で散髪されている“姫様”に目が行った。

「あれ? 摩魚ちゃん……」

「摩魚さん……」

 生贄への決意を固めたものと思ってしまい、浜辺銀とニーナは“しんみり”としだした。この二人の様子を見たとたんに、虹子は「ゲッ!」という顔つきになり、海馬みまは「まずい!」といった表情を見せた。慌てて口を開いた海馬。

「二人とも、そんなに悲しい顔をしないで。この子は違うのよ。摩魚ちゃんじゃないの」

 この言葉を聞いた瞬間に、浜辺銀とニーナは震えた。

「は? じゃ、じゃあ……。先週、あたしが、会った、摩魚ちゃんは、なんだった、の……?」

「ええ……。いや、あたし、先週末に、飲み会したんですよ……。雷蔵のとこ、で……。いやでも……、あれは摩魚さん……だった……」

 恐怖に震える人差し指で、散髪中の虹子を一緒に指して。

「あんた、なにもの!?」

「海原摩魚の実の妹の、有馬虹子です。よろしくお願いします」

 会釈した。

 そして。

 これこれしかじか。

 かくかくしかじか。

「なーーんだ。そっかー。お姉さんを守ってたんだね!」

「輸血といい、影武者といい、なんて健気なの!」

 明るい笑顔で後ろ頭を掻く、浜辺銀。

 感動と感心に瞳をキラキラと輝かせていく、ニーナ。

 ニコニコと、虹子の散髪を続行していく流海。

 いい加減に疑問に思いはじめた、龍海。

「そういえば、二人とも。こちらには、なにしに?」

 そう質問されて、浜辺銀が答えていく。

「マインドコントロールされていた鱗の女の子たちがね、次々と解放されはじめたのよ! 洗脳からも! “お勤め”からも! これが教団が無くなるきっかけになればと思ってね。あたしたちも加勢して、鱗の女の子たちを救出するんだ」

 キラキラと稲穂色の瞳を輝かせて、浜辺銀は高揚した。

 ニーナも、あとに続いた。

 メモ紙を五枚指先で広げて、その片手を突き出した。

「あたしとしろがねさんが担当する、この五枚。この紙に、派遣先のホテルの部屋番号が書いてあります。ヒメさんと紅子さんは、何枚かずつ手にして、ひと足先に行かれました! あたしたちも後に続きますよ!」

 彫りの深い眼差しの奥で、ニーナも瞳を輝かせていた。

 そして、我が愛娘に顔を向けた母親。

「というわけで。亜沙里、母さんたちと一緒に町の仲間を助けに行こう!」

「え? ちょっと待って。それって、多くの人様を殴り飛ばすということ? 手加減無しで良い?」

 戸惑う愛娘に、浜辺銀はバッグからなにか金属製の物を取り出して、投げた。それを、顔の手前で捕えた亜沙里。

「これは……?」

「特殊軽金属製のじょうよ。折り畳み式で便利」

「母さん」

「なーに、心配ないわ。あたしたちの筋力で全力でブッ叩いても、ちょっとやそっとじゃ壊れない特注品よ」

「凄い……。本当に、軽い」

 力を入れて、折り畳まれたじょうを握っていく。

 これを了解と判断したのか、お膳の奥に座る海馬を見た。

「ねえ。今から、亜沙里を借ります」

「借りますじゃないのよ。もとからしろがねは亜沙里ちゃんと一緒だったじゃない。あなたたち親子の判断で良いの」

 そう浜辺銀へと、親指を立てた。

 決意を固めて頷くと、愛娘に振り向いて。

「行くよ、亜沙里。母さんたちと一緒に助けよう」

「うん。私、嬉しい」

 浜辺銀は「いってきます」と海馬たちに述べて、亜沙里を連れ出した。最後はニーナも、軽い敬礼を皆に向けて「お邪魔しました!」と言って浜辺親子を追っていった。


 来客が去って。

 そうして、三〇分弱過ぎて。

「はい。どうぞー」

「わあ! ありがとうございます!」

 首からかけていたシーツを流海から外してもらい、虹子は虹子として戻った。エクステを付けていた顎のラインで散髪したあと、毛先を“すいて”完了した。その次に、自身の身体の変化に気づく。

「あ。おっぱいが戻った!」

 上着の上から両手で下から支えて掴み、感触と張りと大きさを確認していく。この虹子の不可解な発言に、この場にいた女性一同が関心を示してきた。それは、若干ゆとりのあるデザインのデニムシャツからも分かるほどに、胸元に二つの膨らみの頭が隆起していたからだ。背筋を伸ばして胸を張って、腰に拳を当てて、得意気に「ふふん」と笑っていく虹子。

「綺麗な形しているわね……」

「サイズは、マキちゃんくらいかしら」

 こう感心していく、海馬みま流海るみ

 我が母親と叔母を端から見ていた龍海は、なにをやっているんだよ?と少し呆れていた。


 そうしているうちに、玄関の呼び鈴が鳴って、新たな来客が訪れた。



 2


「お邪魔します」

「お邪魔します」

「お邪魔します!」

「お邪魔します!」

「お邪魔します!」

 榊雷蔵、瀬川響子、潮干ミドリ、潮干タヱ、海原摩魚。

 総勢、五名。

「あらー。いらっしゃい」

 声をそろえて出迎えたのは、海馬みま流海るみ

 ミドリと摩魚の姿に感動しつつも、タヱのこの姿は初見であったために、赤い瞳の姉妹は誰だか分からず戸惑った。まあ仲間なんだろうと思って、とりあえずは五人を招き入れた。雷蔵たち五人は八畳間に入り、摩魚が奥に座っていた自身の影武者とご対面した。

「虹子ちゃん」

「姉さん!」

 スクッと立ち上がって、顔中が先ほど以上に明るくなる。

 確かな足どりで歩いてきた摩魚に、虹子は飛びついた。

「やっと会えた!」

 不思議と涙は出ることはないが、そのかわり周りの空気を明るくしていった。まるで猫のように虹子が摩魚の胸元と首のあたりに、顔をすりすりさせていく。そして摩魚は、虹子の頭をヨシヨシと撫でていった。血の繋がりのある姉妹の初対面を確認した雷蔵は、海馬みまの隣に座る龍海たつみに顔を向けた。

「長崎大学のとき以来だね。俺は榊雷蔵。改めてよろしく」

「こちらこそ。海淵龍海です。よろしくお願いします」

 男二人、お互いに軽い会釈を交わした。

 これを微笑ましく見ていた海馬が、そろそろ良いかと思って質問していく。

「雷蔵くん。ここには、なんの用できたの?」

「虹子さんを迎えにきました。あと、これを返しに」

 そう言って、雷蔵は虹子に紙袋を持った腕を伸ばした。

「君のいつもの服だ。摩魚さんが帰ってきたことで、俺たちが頼んでいた役割も終わった。ーーー無理を言って悪かった」

「ううん。これはこれで楽しかったよ。ありがとう!」

 満面の笑みを浮かべて、紙袋を受け取った。

「じゃあ、着替えてくるね」

 そう言って六畳間に入り、襖を閉じた。

 で。

 先ほどからずっと気になっていた海馬みま流海るみ

 流海から聞いていく。

「ねえ、ミドリちゃん。恐竜100万年みたいな格好をしたその子、誰?」

「タヱちゃんですよ」

「は? タヱちゃん?ーーー写真と違くない?」

「私たちの前で、脱皮したんです」

「脱皮? なるほどねー」

 まじまじとタヱを見ていく海淵姉妹。

「お母さんとお姉さんに、そっくりになったわね」

「本当。綺麗になったよね」

 海馬と流海から褒められて、タヱは嬉しくなった。

「ありがとうございます!」

 笑顔で会釈した。


「おっ待ったせーーっ!」

 襖を開けて、ニッコニコな有馬虹子の再登場。

 上から赤色のサマーニットシャツに、下はデニム生地のゆったりパンツ。そして、美しい顔をさらに引き立てている、両耳から下がる、太さ一ミリ径八〇ミリのゴールドのリングピアス。いかにもギャルな格好であるが、これらが有馬虹子のアイデンティティーのひとつであった。

 馴染みの身なりを確認した雷蔵。

「さあて。ひと通りそろったし。そろそろ俺たちも行くか」

「そうだね」彼氏を見て微笑む響子。

「お邪魔しました」頭を下げて、踵を返した雷蔵。

 気になった海馬みまが、呼び止めた。

「ねえ、ちょっと。今からどこ行くの?」

「鱗の娘たちの解放を加勢しに行きます」

「そう。頑張ってね! 私たちも、あとから加わるから」

「ありがとうございます」

 雷蔵は、力強くかつ柔らかな笑顔で返した。



 3


「そろそろ着くかな」

 海淵家を出て、敷地内の駐車区画に停めていたダークシルバーの愛車の横で、雷蔵は腕時計を見ながらそう呟いた。そんな好青年の後ろでは、摩魚の隣でワクワクとしていたミドリの姿が。それから数分と経たずに、暗緑色あんりょくしょくの魔改造トヨダAAが赤色のスカイラインを引き連れて登場した。六輪駆動に追加改造されて、車体前部のボンネットが長くなっていた。窓越しにこれを見ていた海淵家の三人は、魔改造トヨダにギョッ!とした顔になる。

 愛車の到着に、手を叩いてはしゃぎ出すミドリ。

「きゃあ! 私のトヨちゃん! 会いたかったーー!」

「お待たせ」

 サイドガラスを開けて、三角白眼を流した臼田幹江。

 なにげに格好いい。

 分け目はないが艶やかな長い黒髪と、それに似合った美しく整った顔立ち。薄くて瑞々しい唇に、マット系のローズカラーの口紅を引いていた。細くて白い身体には、赤色の膝丈のキャミソールワンピースがよく映えていた。ルーフを前方へスライドオープンさせて車外に出て、ビニールのポーチをミドリに手渡した。

「はい。お財布からスマホまで入っているわ」

「ありがとう!」

 喜びのあまりに、幹江に抱きついた。

 ミドリの頭をヨシヨシと撫でていく。

 以下、ギャラリーの反応。

「本当だ……。本当に女優の臼田幹江さんだ……」

 驚愕していくタヱ。

「え……? ミドリちゃんの知り合い?」

 売れっ子女優を間近で見れて、摩魚も驚いていた。

「あの人、見間違いでなければ臼田幹江よね……?」

「絶対そうでしょ。幹江ちゃんだよ」

「ミドリちゃんの人間関係、どうなっているのかしら……」

 窓越しに驚いていた、海馬みま流海るみ

「お久しぶりです!」

 虹子だけは違い、親しい先輩に再会したかのような喜びをしめした。幹江も、これに笑顔になる。

「虹子ちゃん、お久しぶり」

「やあ、虹子ちゃん。長崎ここに来ていたんだ」

 と、赤色のスカイラインから、片倉昇子が出てきた。

 真ん中分けの蜂蜜色のセミロングの髪の毛と、両耳から下がる極細の五ミリのチェーンから極薄の幅一ミリ長さ七〇ミリのゴールドのスティックピアスが、昇子の美しさをさらに引き立てていた。胸元を大胆に大きく切り込んだV字襟の白シャツに、キャメルブラウンのサマージャケットを羽織り、ストレートのジーパンにキャメルイエローのショートブーツ。レンズがハニーブラウンのサングラスを外して、細く切れ長な目の中の赤茶色の瞳を輝かせた。

 そして、窓越しに見ている海淵家の三人に頭を下げる。

 次に、雷蔵たちに向き合った。

「はじめまして。片倉昇子です」

「はじめまして。臼田幹江です」

 二人の美女が、微笑んで会釈していく。

 雷蔵と響子と摩魚とタヱは、初対面だった。

 不定期の休暇をメディアに公表したいえ。

 有馬虹子、臼田幹江、片倉昇子。の、三人の芸能人がこの場にいるという事実は変わらなかった。そして、行方不明扱いかの見事な奪還と復活を遂げた潮干ミドリも、芸能人である。なんとも言えない感動に、ワクワクとしていた響子と摩魚とタヱ。そして、窓越しの海淵姉妹も同じだった。

 挨拶もほどほどにして。

「あなたが雷蔵くんね」

「はい」

 幹江から確認されて、答えた。

 雷蔵へ話しを続けてきた。

「こうして集まったけれど、振り分けは聞いていますか?」

「振り分け? 依頼人の身内の摩魚さんと虹子さんは、俺たちの車に一緒に乗ってもらおうと考えてます」

「そうね。ミドリちゃんはもちろん、愛車に。で…………?」

 タヱとそのボロッボロな身なりを見て、言葉が止まる。

 そして、なんとか繋げていく。

「ええと。そこの、恐竜100万年のコスプレしている可愛い子は、誰?」

「潮干タヱです。よろしくお願いします」

 と、ニコニコとして、幹江に会釈した。

 すると、大村市でのことが繋がった幹江。

「ああ! さっき大村で電話をかけてくれた女の子ね!」

「はい、そうです」

「じゃあ、彼女を私たちと一緒に乗ってもらって良いかな?」

「どうする、姉さん?」姉に顔を向けた。

 これに、少し考えたミドリは。

「いいんじゃないかな。二人に協力してちょうだい」

「うん」

 そして、幹江と昇子を向いて。

「よろしくお願いします」と、頭を下げた。

「はい、こちらこそ」

 幹江と昇子も、声をそろえて軽く頭を下げた。


 というわけで。

「振り分けも決まったし。よし、行くか!」

 雷蔵のひと声に皆は頷いて、各々の愛車に仲間を乗せて発車していった。



「じゃあ、私たちも行きますか」

 海馬みま流海るみ龍海たつみに呼びかけて、玄関を出て、愛車のダークブルーのフェアレディZに三人乗り込みエンジンを吹かして走り出していき、海淵家をあとにした。



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