ミドリ姫とタヱちゃん、大ポカをやらかす
榊雷蔵御一行、サービスエリアに到着。
適当な駐車区画に停車して、ダークシルバーの車体から四人が出てきた。ボッサボサに乱れた髪の毛のまま、タヱはミドリと仲良く手を繋いで雷蔵と響子と一緒にセブンイレブンに入っていく。タヱは黒いブラシを手にしてから姉と一緒に下着見ていくと、あったことはあった。
「スポーティーなのばっかり」
「まあ、良いんじゃない」
「そうだね」と姉に同意した。
楽しげに姉妹はレジに持っていき、店員に笑顔で「お願いします」と目当ての品物を差し出した。「お支払いは、こちらでお願いします」と自動精算機を店員から示されたあと、スカートのポケットを前の二つと後ろひとつ全てに手を入れて確認していったミドリの顔から、たちまち血の気が一気に引いていった。
「あるぇー?」
「その服、朝の出かけのときに君が選んで俺が買った物だったろ」
「そーでした」
と、雷蔵の確認に納得するミドリ。
「ああ……、やだ、どうしよう……」
声が掠れて涙目になる。
姉のこの姿に少し驚いていたタヱだったが。
「姉さん大丈夫! 私お財布あるから。じぶんで買えるから」
「タヱちゃん……。ごめんね……」
「いいの。気持ちだけでも嬉しいよ」
そう微笑みながら、ボロッボロのツーピースと化した元ワンピースのポケットから黒い半艶の財布を取り出して中身を確認してとたん、タヱもたちまち血の気を一気に引かせた。
「ごご……ごしゃくえん、しか、ない……」
昨日の新島悟とデートとお泊まりをしたときに中身を使ったことを思い出した。いつも、その日使うであろう必要最小限の金額しか財布に入れていた潮干タヱ。なので、余ったら“めっけもん”であった。
ミドリとタヱ、姉妹お互いに顔を見合せて。
少し離れた場所で待機している雷蔵と響子に向いた。
そして、姉妹仲良く九十度頭を下げて。
「ふつつかなものですが、よろしくお願いします」
「ああ、いいよいいよ。神の子の奇跡を二度も見せてもらったんだし」
「いいのいいの。あたしも雷蔵も“あなたたち”姉妹に感謝しているから」
そのように、雷蔵と響子は半神半人の姉妹に笑顔で返していく。そして、この護衛人カップルは言葉を続けてきた。
「飲み会の席で言ったろ。神の子のそういう場面が見れればじゅうぶんだって。だから、君たちの分の昼飯も俺に出させてくれ」
「あたしも同じ。だから、協力したい」
この二人の言葉に、ミドリとタヱは目をウルウルとさせた。
それから。
黒いスポーツタイプの女性用下着も入れた四人分の昼ごはんの代金は、雷蔵と響子が仲良く割り勘で出して無事に払い終えた。店員に事を伝えたあと、ミドリは多目的トイレでタヱの身体を全部水で軽く洗い流したのちに、先ほど二人から買ってもらったスポーティーなブラとパンツを身につけて、ボッサボサな髪の毛を買ってもらった黒いブラシで解かして、そして再びツーピースと化した元ワンピースを着て準備万端。
車内で昼ごはんを食べて、仮眠した。
タイマーの音で目を覚まして。
準備を整えた雷蔵がハンドルを握る。
「さあ、出発進行」
移動中の車内。
助手席のバックミラーで姉妹を見ていた響子。
「ねえ、ミドリさん」
「なあに?」笑顔が輝く。
「あなた、精神体だったときは今までどうしていたの?」
「精神体と言っても半分くらいは肉体が残っていたから、それなりに生活はしなきゃいけなかったよ」
「ふーん。でも、強い光りの近くにいないと消えてしまうんでしょ」
「そう。だから協力を頼んだの」
「誰に?」
「臼田幹江さん」
この名前を聞いた瞬間、ミドリを除いた他の三人が「え!」と大きく声をあげた。




