1・怪しい人影
「あの…ここで何をされているんでしょうか…?」
深夜3時。
とある事情で外出先から帰宅したところ
家の前で誰かが何かをしている。
ここは田舎にある小さな村で夜になれば
人も歩かないし、明かりもほとんどない。
かろうじて見えるのは185cmはあるであろう身長と
肩くらいの髪を一つに束ねている後ろ姿だけ。
「…っ」
「えっと、うちに何かご用でしょうか…?」
最初に声をかけたときにビクッと反応はあったが
こちらを向こうともしなければ黙ったまま。
さすがに怖くなり、だれか人を呼びに行こうと動いた瞬間。
「わっ!」
このままではまずいと思ったのか急に走って逃げてしまった。
その手には大きな何かを持っていたがはっきりとはわからない。
「……何か取られてないか確認しなきゃ!!!」
数秒間、びっくりして入り口から動けずにいたが
我に返り、急いで部屋の中に入り中を確認する。
特に荒らされた様子もなければ盗られたものもない。
「さっきの人は誰だったんだろう…」
ここはフリージア帝国の首都から離れた遠い村。
観光で来るような場所でもなくただ、近くに森があるだけ。
こんな場所に外から人が来ることはとても珍しい。
「うちの村にあんな人いたかなぁ」
小さい村のため村人はみんな顔見知りだ。
顔どころか声も聞けなかったが
この村では見たことがないシルエットだった。
「とりあえず今日はもう寝よう…」
もう夜も遅い。
さすがに眠くなったので考えるのは辞めて
しっかりと戸締りの確認をしてから目を閉じた。