4、動画配信開始
和人の知らぬ間に戦闘が記録されて日本全国で公開されていた。大友桃華という元アナウンサーのチャンネルを幼馴染の山田奈緒に見せられた和人は腕を組む。
「この大友という女の口を封じることはできんのか?」
「いや~ん♡ 和人、発想が過激ぃ~」
奈緒はクスクスと笑う。和人は大真面目だ。
「無理よ。大友桃華って今じゃ国民の多くが知る有名人。和人君、殺人を犯したら犯罪者になっちゃうわよ」
黒崎杏が冷静にツッコミを入れる。和人は杏の手作りハムサンドを口に含む。おいしい。
「むぅ、困った。これで土御門の連中に見つければ、厄介なことになる」
そう言いながらも和人はハムサンドを口にする。その様子を見ていた黒崎杏がふっと息を吐いた。
「こうなったら私のチャンネルに出て頂戴。和人君、有名になった今がチャンスよ。自分のチャンネルを作って世論を誘導するの。私があなたのチャンネル登録をお願いするから」
「チャンネル? 動画配信か。俺がそんなことをしても編集とか無理だぞ」
「無編集でいいわ。和人君くらいの知名度なら無編集でも注目を浴びるでしょう。ファンの中から動画編集ができる人にバイトを頼んでもいいし」
「むぅ。杏がそこまで言うならやってみるよ。奈緒、動画編集頼めるか?」
「えっ、あっ、うん、いいけど……」
「なら決まりだな。チャンネルを立ち上げよう」
和人は立ち上がる。奈緒と杏も立ち上がった。本当は影に隠れていたかったが、そうも言っていられない状況だ。
……。
「御主君、ホブゴブリンを捕えて参りました」
「うん、御苦労」
気のない返事をする和人。和人はパソコンの画面に夢中だった。動画のコメント欄は役小角を見て盛り上がる。
『ホブゴブリン捕獲wwww』
『さすが小角の姉御、やることなすことチート過ぎるwwww』
『前は巨大オクトパスだったよなwwww』
和人は興味なさそうなので小角は落ち込んでいた。
「それよりも陰陽師協会の女帝・土御門遥の四女・夢乃の戦闘動画が見たい。誰かURLを持っていないだろうか」
「主上。小角さんに労いの言葉を……」
仮面を取ったシャドウデーモンが助け舟を出す。
「さっき言っただろ? さて、いよいよ陰陽師試験だ。気合いを入れていくぞ」
『奈緒ちゃんキタ――(゜∀゜)――!!』
『動画主、後ろ後ろwww』
和人が振り返ると奈緒がエプロン姿で立っていた。お盆に麦茶が入ったコップが置かれている。奈緒はニコニコ笑みを浮かべていた。
『これだけ強いんじゃ、試験とか受ける意味なくね?wwww』
確かにその通りだが和人は無免許の陰陽師である。国家試験の通過は必須だった。