2、式神ガチャ
和人の通う学園は陰陽師のいない一般の高校だ。そもそも和人は公務員である陰陽師の資格も持っていない。母の仕事の手伝いをこっそりやっているのに過ぎない。
母である清美が放逐されたのが三年前。悪女に騙された父親が離婚の上、清美を無一文で放り出した。悪女は父親の後妻に入り、実家で権力を振るっている。田所美紀も父親からの刺客だろう。和人はそう思う。あの悪女のやりそうなことだ。優しかった父も別人のように豹変しているという。
和人は屋上で動画配信サイトを確認していた。モンスターや妖怪の目撃情報は増えている。魔王なる怪人が陰陽師協会を倒そうとしている、とも。
と、そこへ女子生徒がやってきた。山田奈緒。眼鏡をかけた人懐っこい美少女である。和人の幼馴染でもある。
「和人ォ、妖怪さん、ママも見たって」
「ほう、どんな妖怪だ?」
「ん、仮面をかぶってね。鎌を持った死神みたいな……」
奈緒は笑顔で語る。和人の眉がぴくりと動いた。
「馬鹿野郎。それ、S級モンスターだよ」
和人は飛びあがるように立ち上がった。そして急いで扉の方に向かう。残された奈緒はニコニコ陰湿な笑みを浮かべていた。
「……馬鹿はアンタよ。転生陰陽師。今度こそ殺してあげるからねぇ」
そう言って、奈緒は高笑いを上げるのだった。
和人はチートスキルの持ち主だ。和人は札を取り出すと、美女を顕現させた。『式神ガチャ』で手に入れた式神である役小角。錫杖を持った美女はぷかぷかと浮かぶ死神に飛んでいく。死神が鎌で防ぐ。
ここは奈緒の自宅の前だ。死神の目線の先には美少女がいる。高校二年生の黒崎杏、テレビドラマなどに出演する有名女優で現役アイドルでもある。杏は震えるばかりで縋るような目で和人を見ていた。
ドゴォ。死神が殴られて吹っ飛ぶ。美女が勝ち誇ったように笑みを見せた。