表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/25

8 裁判官ナナの判決

 ルカのスマホはマルウェア感染してバッグドアが作られていた。

 遠隔操作されて、データを抜かれていたようだ。

 

 鬼塚さんに報告して、いったん事務所に戻って、ルカには事務所のスマホを貸与してもらっている。まだ、遠隔操作される可能性はあるから、電源を切って、後日警察に届ける予定だ。

 まさか、ウイルス感染が身近にあるとはな。

 今日は夜遅くなってしまったから、メンバーのスマホは明日チェックするらしい。俺のスマホはなんともなかったけど・・・気が張っていて眠れなかった。


 今の時刻は午前2時・・・。



『死刑です』

「だから・・・・・」

『死刑です』

 メイド服のマナと、マナと同じくらいのサイズの裁判官のような恰好をした少女、ナナがいきなり家に来ていた。3Dホログラムの光が2人を覆っている。


「そもそも誰だよ。こっちはそれどころじゃ・・・」

『ナナ、ほら、まだ自己紹介をしてないよ』

『あ、忘れてました。みらーじゅ都市でおもーい罪を扱っている裁判官のナナです。マナとは仲いいです』

 ナナが軽く頭を下げた。

『ナナも私と同じ、みらーじゅ都市の子たちを、守るために派遣されました』

『はい。さっそくですが、貴方は死刑です。潔く死んでください』

「だから、今、何時だと思ってるんだよ!」

『午前2時15分ですね。罪を言い渡すのに、時間は関係ありませんから。悪いことをしたほうがいけないのです』

 キーボードの前にふんぞり返って立っている。


「・・・・・・」

 カナのこととか、『ろいやるダークネス』のこととか、色々考えて眠れなかったらコレだ。


「なんで・・・つか、急に来て死刑とか・・・」

『ナナ、読み上げて』

 マナがナナのほうを見る。

『はい。みらーじゅ都市のVtuber、高坂ゆいをたぶらかしながら、今話題のアイドルななほしⅥのかななんもつまみ食いしていたという、非常に重い罪です』

「何度も言ってるだろ。カナは関係ないって。誤解だから」

 つまみ食いって・・・。一般的にどんなときに使う意味か知ってんのか?

 ナナが自分の前にモニターを映し出した。


『今日ツイッターで流れてきた、この画像、みらーじゅ都市の最新技術を使った結果、合成ではないことが判明しました』

『随分、いちゃついてますね』

『はい、この距離感は少々いただけませんね』

「どうやったら、そう見えるんだよ。カナが倒れたのを介抱してただけだ」

 頭を抱える。

 ナナが映った画像をじいっと見ていた。


「ほら、カナが具合悪そうにしてるだろ?」

『んー確かに、言われてみれば、そう見えなくもないですが・・・』

『ナナ、騙されちゃダメ! 火のないところに噂は立たないんだから』

『そうでした。ごほん、死刑です』

 びしっと指をさしてくる。こいつらは・・・。


「それよりも、この画像を取った『ろいやるダークネス』とかいう奴ら気にしてくれよ」

『あっ・・・』

『あぁ、この情報源となってる人たちですね』

「ちょっといい?」

 キーボードに手を置くと、マナがすっと避けた。

 パソコンのモニターに『ろいやるダークネス』の配信とツイッター画面を映す。


「こいつらについて、なんか情報無いの?」

『『ろいやるダークネス』・・・ですか・・・』

 ナナが首を傾げていた。

「ななほしⅥのメンバーのスマホがマルウェア感染してたんだよ。遠隔操作でデータを抜かれたんだ」

 ルカも何かをインストールしたとか、怪しいメールを開いたとか、心当たりが全くないらしい。わからないうちに感染していたようだ。


『うーん、私たちの都市のVtuberも標的にあっていますが、ウイルス感染の報告はありませんね』

「最近、情報の流出が多いんだろ? こいつらが流してるってこともあるんじゃないのか?」

『んー・・・マナ、なんかわかる?』

『確かに、ちょっと気になることはあるんですよね』

 マナがぺたんと座って、空中で指を動かす。

 ナナが出したモニターの画面が、俺とカナの画像から何かの設定画面に切り替わっていった。

『私も同じことを思って、『ろいやるダークネス』の情報を見ようとしたのですが、ことごとく弾き返されてしまうんです。みらーじゅ都市で住所をさらされたVtuberのスマホを確認しましたが、ウイルスは確認されませんでした』

 マナが手をかざすと、ウイルスチェッカーの画面が流れていく。

 数秒後、緑の文字で『正常です』と表示されていた。

 ナナが小さくおぉっと言う。


『確かに表示されてるのは、ウイルス感染がないってことになっています。でも、一部分にWarningって出ているので、誰かが操作したって可能性も否めないんです。ここの部分ですね・・・』

 カーソルを当てながら言う。

『本当に、一度もウイルス感染してないなら、Warningも出ません。接続不備ならわかりますが、何度やってもWarningが出るんです』

「一回ウイルス感染させて、そのあとウイルスを抜いたってことか」

『可能性はあります。みらーじゅ都市のVtuberの電子機器は厳重に管理されてますし、普通に考えたらあり得ないのですが・・・』

 マナがWarningと書かれた赤い文字を見ながら言う。

『このWarningは気になります。本当に、何もウイルス感染したことのない機器には、こんな反応しません』

「・・・・・・・・・・」

 高度な技術を持つ、みらーじゅ都市でさえ苦戦するのか。


 一つだけ確かなのは、『ろいやるダークネス』の技術力は半端ないってことだ。

 『VDPプロジェクト』のメンバーも、知らず知らずのうちに感染しているかもしれない。既にみらーじゅ都市から言われてると思うけど、俺からも話しておかないとな。


 

「?」

 マナがスカートの裾を持ち上げて、パソコンのモニターに近づいていく。

『それにしても、『ろいやるダークネス』のアバターって萌え系ね』

 ゆめこころをじっと見つめる。

『でも、きっと、裏でおっさんたちがやってると思うの』

『おっさんたちが集まって、『ろいやるダークネス』って地獄絵図ね』

『きっと、お風呂も入らずにウイルス作ってるに違いないと思うの。フケまみれで、借金とかしながら作ったウイルスね』

 マナが口に手を当てて、顔をしかめる。

『たぶん、キモイわね』

『たぶん、キモイのよ』

「・・・・偏見がすごい上に、ボロクソに言うな・・・」

 俺も勝手に40~50代くらいの男集団を想像していたけどさ。

 だって、技術力はもちろん、シスター2人萌え絵といい、設定といい、人を惹きつけるようなやり方といい、そう簡単に思いつくものじゃない。

 かなりの時間ネットを彷徨っていないと、こんなに人を動かせないと思った。


 でも、フケまみれで借金までは、普通出てこないだろ。


『まぁ、『ろいやるダークネス』についてはこちらでも調べてみましょう』

『とにかく! 二股男は最低です。しっかり、自分が最低男だということを自覚してください』

「誤解だって言ってるだろうが」

 ナナがツンとして腕を組んでいた。


『ま・・・まぁ・・・、被告人の証言も加味して保留にしておきましょう』

『ナナ!』

『だって、この写真鵜呑みにしたら『ろいやるダークネス』っていうおじさん集団の思うつぼでしょ。磯崎悟は許せないけど、キモイおじさん集団の策略に乗せられるほうが嫌』

『うっ・・・それは・・・・』

「今の偏見に満ちた発言・・・コンプラに引っかからないのかよ」

『キモイ男に人権はないので』

『ないので』

「・・・・・・」

 こいつらめちゃくちゃ口が悪いな。


『ごほん。では、今日のところはこれで退出させていただきます』

『引き続き、私たちは磯崎悟を監視していきますからね』

 光がぱっと無くなって、2人が消えていった。

 やっと行ってくれた。厄介なのが、2人に増えてしまったな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ