表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/25

6 暴露系Youtuberの噂

 アイパッドで今日のななほしⅥのスケジュールを確認する。

 カナとマミはアイドルストーリーのグッズ販売イベントが終わった後、ラジオ収録。

 ルカは雑誌のモデル、リノ、ツカサ、ミクはオフか。


 もう20時だから全員オフでもいいと思うんだけどな。ここから仕事とかしんどいだろうに。


「お疲れ様です」

「おう、お疲れ」

 カナとマミが楽屋に入ってくる。

「はぁ・・・疲れちゃった。これから、ラジオ収録でしょ?」

「あぁ、鬼塚さんが戻ってきたらね」

「長そう・・・鬼塚さん、ゲームプロデューサーに捕まってたから。お腹すいちゃった」

 カナが正面に座って、お菓子を一つつまむ。


「他のメンバーは?」

「もうちょっと撮影するみたい」

「うちら、よく戻ってこれたよね」

「ねー」

 マミが鏡でまつ毛を触りながら話していた。


 俺はアニメ、アイドルストーリーから派生した声優アイドルグループ、ななほしⅥのマネージャー補佐をしている。元は声優でありながらトップまで上り詰めて、地上波の番組に出ることも多かった。

 カナに関しては、ドラマ出演も決まっていた。


「磯崎君は何してたの? 『VDPプロジェクト』の配信アーカイブでも見てた?」

「スケジュール整理だよ。今年に入って、さらに忙しいだろ?」

「そっか。私も台本読まないと。大学もあるし、今年留年したらどうしよう」

「ふふふ、カナなら大丈夫よ」

 マミがカナの隣でピアスを直していた。


 ななほしⅥのマネージャー補佐は『VDPプロジェクト』のグッズ代を稼ぐために、同大のカナから紹介されたバイトだった。

 最初は、みんな仲悪いし、大変だったけど、最近はちょっとずつ打ち解けてきたようだ。まだ、ぎくしゃくするメンバーはいるけどさ。

 グループといっても、みんなライバルだからな。


 忙しいけど、いつか『VDPプロジェクト』が武道館ライブできるくらいになったとき、今の経験が役に立つような気がした。

 推しと嫁の夢を全力で応援するためのバイトだ。前は嫌々だったけど、最近はやりがいも感じていた。


「私、ちょっとお手洗い行ってくるね」

「いってらっしゃい」

 マミが小さなバッグを持って、楽屋から出ていく。


「ねぇねぇ、磯崎君」

 カナが頬杖をついて、ちょっと身を乗り出してきた。

「ん?」

「あいみんの闇配信って見た?」

「!」

 ペットボトルの蓋を弾き飛ばしそうになった。カナがにやりとする。

「その反応、やっぱり見てるんだ」

「見てるって言っても、この前の配信見ただけだからな」

「ふうん。あいみんがあんな風になるほど、磯崎君とゆいちゃがいちゃついてるのかって思っちゃった」

「そうゆうわけじゃ・・・・」

「ま、冗談だけどね」

 意地悪く言って、スポーツ飲料を飲んでいた。


「私、まだ、磯崎君のこと諦めてないから。また、いつか告白するからね」

「からかうなって」

「本気だもん」

 ふふっと笑って、チョコレートの包み紙を開ける。


 カナはななほしⅥのセンターで、容姿端麗な美少女だ。

 頭もいい分、人を動かすのも上手いし、マネージャーの鬼塚さんからは絶大な信頼を寄せられていた。



「ねぇ、暴露系Youtuberのバーシさんって知ってる?」

「バーシさん?」

「そう・・・えっと」

 カナがスマホをスクロールしていた。

「この人だよ」

「あぁ、トレンドで見たことあったような・・・有名なの?」

「暴露系の中ではNo1だよ。ネタも信ぴょう性が高いのよね。つい最近だと・・・登録者300万人越えのネタ系Youtuberのラクトがヤクやってたことを暴露して、警察が動いて逮捕されたでしょ?」

「マジか・・・・」

 30代くらいの男性で、鼻から上だけ仮面をつけているYoutuberだ。

 正直、帰ったらあいみんとゆいちゃ、『VDPプロジェクト』の配信アーカイブばっか見てるから、他のYoutuberの動画なんて見てる余裕ないんだよな。

 ゆいちゃとか・・・見始めると止まらないし。

 ゆいちゃを見て、最推しのあいみんを見て、『VDPプロジェクト』を見るルーティーンができていた。


「気になること話してたんだよね」

「どんな?」

「バーシさんが昨日暴露した話の中に、今まで裏側から情報を拡散させていた活動者の情報収集に特化した集団『ろいやるダークネス』が本格的に動き出すってあって」

「『ろいやるダークネス』・・・?」

「そう」

 カナが髪を耳にかけて、スマホでツイッター画面を表示する。


「私も初めて聞いた名前だったんだけど・・・えっと、ツイッターで昨日の話についてまとめた人によると・・・Vtuber、声優、3次元アイドルなどの個人情報を特定するグループ。メンバーはサイバー攻撃などのIT技術に特化していて、SNSを使い情報を流出させていた、だって」

「えっ・・・」

 個人情報流出・・・りこたんの話を思い出していた。


「最近、活動者の特定が多いんだけど、この『ろいやるダークネス』って集団がやってるんじゃないかって。ほら、前もVtuberの顔特定されたし、同期の声優も住所バレしてたし・・・」

「・・・・・・・」

「バーシさんが、『ろいやるダークネス』から予告みたいなDMを受け取ったって発表してたの・・・ほら、キャプチャ撮っておいたから」

「ん?」

 画面を覗き込むと、テキストで、

 ”これからろいやるダークネスのことをみなさんに知ってもらうため、活動者さんのあんなことこんなことを話していこうと思います。チャンネル登録、よろしくお願いします”

 と書かれていた。


「あんなことこんなことって・・・」

「なんか、活動者に恨み持ってるみたいなんだよね。それも1人じゃないみたいだし・・・うちのメンバーも家特定されたらどうしよう」

 カナが不安そうに話していた。


 りこたんも、Vtuberで家バレした子がいるって言ってたな。

 みらーじゅ都市が、こっちの世界にものすごい警戒感を抱いているのも頷ける。

 『ろいやるダークネス』ってやつらが原因なのか?


「家の特定はマジでやばいな」

「アイドルのストーカーって多いしね。私たちもだけど、『VDPプロジェクト』の子たちも気を付けたほうがいいんじゃない?」

「もちろんだけど・・・気を付けるって言っても、どうやって気を付ければいいか・・・」

「そうなのよね。この集団、かなり技術を持ってるみたいで、海外のハッカーを集めてるんじゃないかって噂もあるの」

 カナが頬杖を付いて、短いため息をついた。


 そもそも、そんな名前初めて聞いたし。

 スマホで、『ろいやるダークネス』って検索してみる。


「!?」

 ツイッターのハッシュタグが作られていた。数分前だ。

「カナ、これ・・・」

「え?」


 ”アイドルストーリーのかななんに熱愛疑惑”という言葉が、いいねとRTで拡散されていた。


「私に!? 何それ・・・」

「落ち着けって・・・」

「だって」

 カナが机を叩いて身を乗り出す。


「・・・本日22時から『ろいやるダークネス』チャンネルで初の生配信ライブを行います。アイドルストーリーのメンバーや、かななんのファン、アンチの方々、是非お立ち寄りください。『ろいやるダークネス』よりって・・・」

「・・・・・・・」

 硬直していた。今日の22時ってラジオ配信の時間と被っていた。


「私の熱愛って誰と?」

「知らないって。なんか心当たりないの?」

「全然ない。こんなに仕事詰め込んでるんだから暇ないのわかるでしょ?」

「まぁ・・・確かに」

 カナが短い息を吐いて、椅子に座り直した。 


「なーんだ。バーシさんが言ってたから信頼できると思ってたけど、今回は嘘っぽいね。いるんだよね、こうゆう周りに便乗して目立ちたがる人たちって・・・不安になって損しちゃった」

 椅子に座り直して、他人事のように話していた。

 カナは徹底したアイドルだから、男性と2人でどこかに行くことないし、本人も言っている通り嘘っぽいけど・・・。


 今までみらーじゅ都市のVtuberの間で起こっている、個人情報流出を考えると、本当に全部嘘なのか疑問なんだよな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ