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14 バーシの本性

『葵ちゃん、ロックしたよ』

「ありがと」

 猫鍋まゆが画面の中から声をかけている。

 自立して動いてるVtuberってことは、ギャル子さんと猫鍋まゆは別で、あいみんたちみたいなところから来ているVtuberなのか?


 こいつらがどんな能力を持つのかも未知数だ

 何をされるか全く予想がつかない。


「・・・そいつは一体何なんだ?」

『え、わ、私!?』

 猫鍋まゆが尻尾をピンとさせた。


「言うわけないじゃん。じゃ、君に会いたがってる人いるから呼んでくる。あたしはこの辺で」

『葵ちゃん、私ひとりなの?』

「そうゆうプランだったでしょ?」

『そそ、そうなんだけど・・・でも、本当にひとりってなると』

 ギャル子さんが部屋のドアに手をかける。


「待って・・・なんだよ、会いたがってる人って」

「ごめん、磯崎悟はこの部屋からは出られないんだ。さっき、まゆがロックかけたから。じゃあねー」

「!?」

 ギャル子さんが強気な笑みを浮かべて、出ていった。

 ドアの縁が青白く光っている。ゲームや映画で見るような作りになっていた。


『触らないほうがいいよ。ドアに電流が流れてるから』

「っ・・・・・」

 猫鍋まゆが画面の中から話しかけてくる。


 ぱっと手を離した。人差し指に静電気のような痛みを感じた。

 普通のシェアハウスにいるのに、みらーじゅ都市にいるような感覚だ。

 どうゆうことなんだ? みらーじゅ都市でもないような技術が、この部屋にあるっていうのか?


「お前ら何が目的なんだよ」

『いいいいい、言わないからね。みんな一生懸命だから・・・私はそれを壊さないように頑張る』

 猫鍋まゆが尻尾を振りながら、画面に張り付いていた。

 俺をかなり警戒しているらしいな。


「・・・・猫鍋まゆって何者だ?」

『私? えっと、画面の中の世界・・・あーって言っちゃダメだった』

 口をぱっと押える。

『わ、私は君のことそんなに恨んでるわけじゃないよ?』

「じゃあ何なんだよ。ななほしⅥとか『VDPプロジェクト』に恨みがあるのか?」

『私はないよ。でも、バー・・・あーま、ままた・・・』

 肩をすくめて俯く。

 なんだかんだ、この子って口が滑りやすいみたいだな。

『もう何も言わないから!』

「・・・・・・・・・」

 両手で猫耳を下げていた。もうダメみたいだな。

 今、バーシって言おうとしたよな? 暴露系Yotuberのことか?


 近くのパソコンの椅子に座る。

 まずい。スマホも使えなくなってる。

『ネットは使えないから』

「はぁ・・・俺、いつまでここにいなきゃなんないの?」

『プランB完了まで』

「その、プランBってなんなんだよ」

『い、い、言わないから。絶対。言ったら死ぬから』

「・・・・・・・」

 頭をぶんぶん振っていた。

 これ以上、掘り出せないか・・・。


 暴露系Youtuberバーシがここにいるとしたら、さっきのギャル子さんとどうゆう関係なんだ? 

 顔出しした配信を見る限り、30代くらいの印象だったけど・・・。


 浅く息を吐く。

 このシェアハウス自体が、『ろいやるダークネス』と繋がっていると見て間違いないだろうな。

 マナとナナの妄想を鵜呑みにすると、おっさんばっかな印象だ。ましてや、バーシの話題も出てきたし、もっと年齢層が上の可能性もある。

 ギャル子さんとおっさん・・・なんかパパ活みたいな印象しかない。

 いや、今30代でも若いっていうし。



 バチッ


「!?」

 急に後ろのモニターがついた。懐かしいボカロの音楽が流れる。 

『はぁ・・・いい曲。私この曲大好き。だーいすき』

「20年前の曲がいきなり? 俺はあまり知らないけど・・・」


 バタンッ


「!?!?!?!?」

 後ろを振り返る。

「知らない!? 『リバーシブルシップ』って曲を!?」

「うわっ」

 いきなり仮面を被った上半身裸の男が入ってきてすごんでくる。

 つか、そもそもなんで裸? 何のために?

「画面に映ってる動画にも興味を示さない・・・か。初期のボカロも知らないなんて、ここまで落ちたか」

『ひどいですね』

「これが今の若者の現実」

 何言ってんだ? ちょっと、情報過多で意味が分からない。

 いや、落ち着け。頭を混乱させるのも、向こうの作戦かもしれない。

「なんで裸・・・?」

「くそみ〇テクニックで有名なやらないかコスプレをやるため体を鍛えてるんだ。次のコミケでね」

『コミケ。素晴らしいです』


 この声、間違いない。

 ・・・マジか。こいつは・・・。


「・・・・暴露系Youtuberバーシ・・・・じゃないのか?」

「おまたせ。バーシだ」

「全っっっ然、配信と違うんだけど。別人じゃなく?」

「磯崎悟が本当に来るとは。管理人Zは賢いな」

『はい。そりゃもう』

 俺の疑問は華麗にスルーされた。


「お前が管理人Zじゃないのか?」

「あぁ、僕は『ろいやるダークネス』の幹部ではあるけど、管理人Zじゃない」

「・・・・・・・・」

 『ろいやるダークネス』って、マジでおっさんたちなのか。

 名前からほんの少し、悪魔っ娘みたいな可愛い女の子を期待してしまった。

 なんか心が穢れてるかもしれないな。


「・・・・どうして、ななほしⅥや『VDPプロジェクト』を狙うんだよ」

「ななほしⅥはそこまで興味がない。僕たちが興味があるのは『VDPプロジェクト』だ」

「え・・・・」

 ひんやりした汗が首を伝う。やっぱりそう来るか。

 こいつら、みらーじゅ都市のことをどこまで知ってるんだ?

「配信者がたくさん出てきて、ボカロも身近になった。音楽もアニメーションも人も声も、何もかも身近になって、古き良きインターネット文化は廃れていった」

「は?」

「お前らは、ネット掲示板もよく知らないんだろ? 匿名だからこそ生まれた感動的な話も知らない、いや、『VDPプロジェクト』なんかにはまってる奴なんかにはわかるはずもない」

「なっ・・・・」

 カチンときた。


「自分だって、活動者だろ? Twitterだってフル活用してるくせに」

「わざわざ合わせてやってるんだよ。今の世の中に。じゃなきゃ、ネット古参の言うことなんて聞かないだろ?」

 仮面をくいっと上げる。


「暴露系Youtuberも人の醜さが見れて面白いけどね。現代っ子を引っ掻き回してるだけだ」

『醜い素を隠しながら、さわやかな歌い手目指してるなんて笑っちゃった。もっとぐちゃぐちゃにしたくなっちゃう』

 猫鍋まゆが小さな声で笑っていた。


「そんなのに『VDPプロジェクト』に何が関係あるんだよ。彼女たちは夢のために、ただ頑張ってるだけだ」

「みらーじゅ都市・・・・・」

 バーシの目がぎろりとこちらを見る。


「!」

『そう。みらーじゅ都市のVtuberがインターネット界を乗っ取れば、恐ろしいことになる。せっかくみんなで積み上げてきた文化がゴミみたいに・・・』

 猫鍋まゆが必死に声を出していた。


「一刻も早く、みらーじゅ都市の勢力を押さえなければ・・・」

「何を根拠に、そんなこと」

「こことは違う場所・・・インターネットの中にみらーじゅ都市が実在してるんだろ?」

「唯一、みらーじゅ都市のVtuberとのつながりがわかったのは磯崎悟、君だ。知ってること全て吐いたら噂を流すのも止めてやる。『ろいやるダークネス』のみんなのためにも、ミッションを」


 ザザザザザー


 急にバーシの後ろのモニターが真っ暗になった。

『あーあー聞こえますか?』

「なんだ? これは・・・」

 バーシがキーボードをカチャカチャいじる。

『無駄ですよ』

 マナの声だ。


『きゃっ』

『貴女は死刑にしたいんだけど。ナグワ大臣から他のネット住人を死刑にしちゃいけないって言われてるから』

 ナナが裁判官の姿で、猫鍋まゆの画面に映っていた。

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