『物語』
「今日で終わることにする」
「……そうか、今まで頑張ったね」
「そう、もぉ、無理。無理、ムリなのっ! こんな美しくしすぎて、残酷な世界に居たくない」
「ああ、君は、僕のように鈍く生きれなかった」
「ええ!えぇ、そうだわ。皆が普通に出来ることが、私には全力でやっとなの!」
「君は、さながら人魚、だね? 現代社会で息をするだけで肺を灼いてしまう。酸素を吸うほど呼吸が出来ない……。かなしいかな、かなしいかな……」
「……ふふっ。ヒトの世に生まれてしまった人狼さん。貴方こそ飢え渇いて嘆いていたじゃない?」
「……あぁ、僕は完全なるイレギュラー。自分以外のヒトが美味しく見えて仕方がない……。決して癒せぬ飢え渇きを抱えて生きる。いつか死ぬまで……。でも、君は約束どおり満たしてくれるんだろう?」
「ええ! 私は今、ここで終わりします。何一つ世界に残せない私は今こそ終わります! たったひとつあなたの飢えを満たして!」
「……僕だけの人魚姫。貴女だけが僕の飢えを満たしてくれる。最初で最後の愛しいひと」
「あとはお願い……もう赦して……」
「あぁ、終わりにしよう」
「最後にあなたの役に立てる。それだけが救いだわ」
「僕の飢えを唯一満たしてくれる君、その肉の味、血の香りを糧に未来永劫生きるよ? 人魚の肉を食べると不老不死になると言うしね」
「……ふふっ、生まれ変わりがあったら、もう一度私を食べさせてあげるわね?」
「……あぁ楽しみにしているよ……じゃぁ、ね?」




