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トリッキー・サーカス  作者: 中山恵一
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ファミリーマン

長期出張で火星での作業をしている天野が滞在中のホテルに帰ると

ドアに広告チラシが挟まっていた



”レンタル人間ショップ  ハッピーライフスタイル


 あなたの人生を彩る「レンタル人間」を貸します”



大きく書かれた宣伝文句、そして後ろに参考パターン


”パターン: ファミリーマン女性との恋愛パターン


 スタイル: 人口密集地 若年労働者層 週末通い同棲日常


 形 式 : 結婚していない異性カップル


 コース : 独身若年労働男女向け各種サービス巡りコース


 料 金 : 各種コースにより料金相違


 準備など: コースメニューは用意します。

準備を自分でするなら費用は安くなります”


ファミリーマンと呼ばれる家族と一緒に過ごす事を

生活の中心にした生き方をする人を見た事はあったが

仕事と会社のために生きる事こそが美徳である

という価値観を持った直属の上司に社会人教育を受けたので

ファミリーマンと呼ばれる人々の感覚が全く理解できなかった


そういった生活をしている人々を見る事があっても


”身近な同居の家族とだけ一緒に過ごすとか

 同居の家族と共有する感覚を生活の中心に置くとか

 わけが わからない 単なる同居人だろ? どうせ?

 で仕事をする合間に たまに過ごせば いいのに

 なんで あんなにベタベタしているんだ? 気持ち悪い


 もし 自分が家族と共有する感覚を増やしたら我慢できない

 違う人間で違う事をして違う考えを持つ人間なのに


 私が貴方で 貴方が私、

 私達は全てを共有して生きるんですって感覚 


 なんだろうな あれは よく拒絶反応を起こさないものだ”


というような事しか感じておらず。

日常生活における色んな事を共有して人生を一緒に過ごしたい

という感覚自体が馬鹿げたものにしか見えていなかった。



会社は、これをやれば これだけの金を払う。

やれと言われた事をできない人に会社は冷たいし必要とはしない

できなけりゃ 他の会社へ行って、会社がやれと言っている事を

自分ができる所へ行って高い年棒を貰えるように努力すればいい


といった発想をエスカレートさせて

ドライにした感覚で仕事をする日常を過ごしている天野にとって


”自分の有能な職務遂行能力を発揮して会社に貢献する

 会社と仕事のために生きる社会人”


という生活を送らずに


”何より大事なのは人生を一緒に過ごす家族

 仕事は家族との生活を豊かにするために必要なもの”


という感覚で生活をしている ファミリーマンは

何故そうなのか不思議な存在でしかなかった


”地球に帰ったら、保守支配層階級の多い地域で、

 労働者階級の自分は差別される側に戻らざるを得ないので

 何が なんでも この火星で生き残る

 差別される側になりたくない

 俺は有能な所を発揮して一生、火星で働く”


というような事を語っている。

一族全員が労働者階級な人の感覚に近かった。


・・・


新しく職場で一緒になったのは、


”女にモテるために努力する事こそ我が人生。

 色恋沙汰こそ 私のやる気の源”


という発想が丸出しなマリィという男だった


何より大事らしい家族とのノロケ話だとかを

毎日デカイ声で暑っ苦しく

聞きたいと言っているわけでもないのに語ってくる


周囲の人に言いまくって自分に言い聞かせているのか

とすら思えるような恋人への愛情表見を語る感覚も

強烈で派手な自己アピールも、今まで見た事が無いものだった


だが、それを別にして仕事は出来たので、

一緒に仕事をしていて少し興味を持った


”色恋沙汰こそ私のやる気の源”といった感覚も

少しは理解した方がいいのかもしれないと思えるようになった


と考えている時に、ふと宣伝チラシが脳裏をよぎり

そして土曜日の午前中、チラシの電話番号に電話をした。


「はい 楽しい人生を発見するための

”レンタル人間ショップ ハッピーライフスタイル”です。」


いかにも 電話受付の女の声が聞こえてくる


「郵便受けに入っていた広告チラシを見たんですがぁ

 チラシに書いてある ”週末限定 ファミリーマン コース”


 っていうの いつ頃に予約できますか?」


愛想のいい感じに訓練されていますといった感じの

受付オペレーターの声が帰ってくる


「はい、御客様の御要望により違いますので、

 一緒に過ごしたいと思う相手を

 語っていただけますでしょうか?」


「いえ、要望は別にないで・・・ あー もし可能ならば

 情熱的な恋愛生活を送る日常が当たり前になっていて

 とても情熱的な言葉がボキャブラリーとして大量にあって


”何より大事なのは人生を一緒に過ごす家族

 仕事は家族との生活を豊かにするために必要なもの”


 といった ファミリーマン感覚の方が いいんですが


そういった感覚を抱えている人 いますか?


 どうでしょう? そんな要望? 大丈夫ですか?」


遠回しに断れれるだろうな

と思いながら言ってみると意外な言葉が返ってきた



「かしこまりました、大丈夫です。

 御要望の方をレンタルします。期間は どうされますか?

 一日限定・一ヶ月限定・期間無期限と 3種類ございますが

 どのコースにされますか?」




「そうですね 初めて利用するので

 一ヶ月限定コースで いいでしょうか


 ちなみに もし互いに人間的に相性があった場合の

 コース延長やコース変更は可能ですか?」



「コース変更については 相手と交渉して下さい。

 両社が同意された場合、コース変更は可能です」


数日後、男に電話がかかってきた。


「御要望の相手が見つかりました。


 コース開始時間は、11月30日の午後4時

 待ち合わせ場所は、申請のあった駅の改札前


 御相手は、カナコ・ジョーンズというハーフの方です


 コース開始時間に御相手の写真と電話番号をメールしますので

 電話して一緒に過ごされて下さい


 また、その時に 最初のキッカケとして

 用意しました店などについても お知らせいたします。


 当日キャンセルの場合、当日キャンセルできない店への

 支払いについては負担して頂く事になります。


 では よい週末を」


この女、どんなのなんだ?女なのを楽しめる外見なのが、

こんなサービスを利用するワケは無いだろうからなぁ



などと思いながら送られてきたメールに添付された画像を見ると

目鼻立ちの全てが派手で大きな金髪女が映っていた。



当日、待ち合わせ場所へと行ってみると、

黒のカラーコンタクトで黒髪に染め、メガネをかけているけど

外見が外人丸出しで雰囲気自体がエロさ全開な女がいた。


写真はクビから上だけだったし、

眼の色と髪の色が違うけれども あの人か? そうかな?

などと思いつつ連絡された番号へとかけると女のスマホが鳴り

電話ごしに聞こえる声と、話している声が重なる。


用意されたという店の入り口に到着、なんとカジノ・レストラン


「イブ・ギャング・ギャンブラーズ」


トンチンカンな意味とかが無いだろう英語での造語看板


店内に入ると、いかにもバクチ打ちって外見の人種ばかり


色んな事をして一山を当てたギャンブラーが

口説いている女に昔の一発当てた時の自慢話をしながら

一緒に過ごしている


古き良き20世紀アメリカのファッションのギャンブラー

そんな人々が、ほぼ毎晩のように集まっている店のようだ


負けた人間は後悔だけを抱えて帰り 

勝った人間は同じフロアのレストランへと流れ込む


二人はギャンブルをせずにレストランの扉を開けた。


------------------------------------------------------- 


この港には言葉に表現できない何かがあるのです 


その魅力とは、言葉には表現できないような過激な刺激 


味わえる色んな旨味にも言葉はいらないでしょう 


この港へと戻ってきた船の皆さま 


新しく、この港へと入港された皆さま 


ようこそ、”マーズ・ベイ・プリンセス”へ


-------------------------------------------------------


マーズ・プリンセス・ホテルという

企業グループに所属する店です。といった説明とか

その会社で偉い人の挨拶が張ってある店内


そういえば宿泊しているホテルと同じような名前


ああ、レンタル人間ショップ ハッピーライフスタイル

とかいうのも含めて同じ関連会社なのかと気づく


食事をして酒が入っている間、

何を話しているのか自分でも忘れるほど

色んな意味で舞い上がっているのがわかった

しかも、独身男子寮で一緒に過ごす人々と、

男子校ノリでナイス・ボディーアタック・ウーマン、

略してNBWとかいう人種を妄想して話していたのだが、

眼の前に出現したのが、ストライクに

自分が脳内で思い描いたNBWだったのでビックリした


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