【54】ファイア・スピリット・アンデッド
アルメリア達は、村を出て火竜の洞窟に向かっていた。
前方には既に火山地帯が見え始めている。
「うわぁ…暑そうな所だなぁ…」
「あぁ。俺一回だけ行ったことあるけど、あそこはスゲー熱いぜ。覚悟しろよ」
「…これは私にとっての最難関…」
「リナリアさん…大丈夫ですか?」
話をしながら歩いていると、周囲に大きなトカゲのような魔物が集まってきた。
「リトルリザードの群れだぜ!どうする?戦うのか?」
「戦おう。僕は斧をまだ使いこなせてないし、もっと経験を積みたい」
「では、一応守備力上昇魔法をかけておきますね! 《シェルド》 」
ツグサが呪文を唱えると、4人の体が青く発光した。
それと同時にリトルリザードが一斉に飛び掛かってきた。
「っしゃあ!さっそく槍の力を試してやるぜ!」
ラックは槍に魔力を通した。すると、槍は眩く光り、勢いよく水が発射された。
槍から放たれた水は、リトルリザードを何匹か巻き込み、遠くへ吹き飛ばした。
「すげぇ…!これが“ジャバ”なのか!属性魔法初めて使ったぜ!…でも結構魔力消費するな」
“ジャバ”の威力は絶大だが、できるだけ魔力を温存したいため、ラックは普通の攻撃に切り替えた。
「この斧でも放てる技があるはずだ。飛ぶ斬撃はちょっと無理かな…だったら…――」
アルメリアは斧に魔力を通し、思いっきりぶん回した。
「…大回転斬りだっ!!」 ブウゥゥゥン! ガッガッガガッ!
広範囲の攻撃により、多くのリトルリザードが切り刻まれた。
「私にも何か技があれば…」
即死魔法を使うのは気が引けるため、新たな特技を考えるリナリア。
「…そうだ!」(アルメリア様!どうかこっちを見ないでっ…!)
リナリアはお腹を擦ると、思いっきり力み、口から胃液を発射した。
「オボェェッ…」 ビチャァッ
胃液がかかったリトルリザードは、一瞬にして紫色になり、ドロリと溶けていった。
「ふぅ…これぞなんでも溶かす“溶解液”!」
「おぉ…ア、アンデッドらしい攻撃ですね…」
近くで見ていたツグサは、少し引いていた。
そうこうしているうちに、リトルリザードの群れは壊滅した。
「よし!斧の使い方はだいぶわかった。ここからは魔物との戦いはできるだけ避けて進もう」
それから魔物の群れには数回遭遇したが、全て逃げながら進んだ。
しばらく歩くと、ついに火竜の洞窟に到着した。
入り口からは、凄まじい熱気を感じる。
4人は覚悟を決め、洞窟の中へと足を踏み入れた。
「すごい熱さだ!そこら中に溶岩が流れてる…」
「そりゃあ火山の中にいるようなもんだからな」
洞窟の中には大きな空洞が広がっており、そこら中に溶岩が流れている。
奥へと続く道は一本道だが、遠くが煙で阻まれて見渡せない。
「どこから魔物がでてくるかわかりませんよぉ…」
怖がるツグサをエスコートしながら慎重に進んだ。進んでいくうちに、道の端に黒い植物が見え始めた。
「あ。これ、私の装備の」
「燃えない草が生えているということは、もう聖域が近いのかもしれませんね」
「血の気の多い精霊様か……どうか穏便に済ませられますように…!」
アルメリアは祈りながら歩いた。すると、目の前に大きな石の扉が現れた。
「おい…この先から神聖な魔力を感じるぜ!」
「ということはここが聖域なんだな…!みんな、覚悟はできてるか?」
「ちょっ、ちょっと待ってくださいっ!ドキドキが止まりませんっ…」
「今回ばかりは私も緊張します…」
緊張するツグサとリナリアを落ち着かせ、深呼吸した後、アルメリアはゆっくりと扉に手をかけた。
その瞬間、ゴウッという風の音と共に目の前が真っ白になった。
「な、何だぁーっ!?」
「一旦扉から離れよう!」
突然のことに驚いた4人は後ろに下がり、真っ白な世界から脱出した。
すると、目の前には白い煙が広がっていた。
よく見ると、その煙には目と口が付いており、どうやら魔物のようだった。
「あれはギズモだ!にしてもデカいな…こいつも聖域の魔力を吸っていたのか?」
「アイツには物理攻撃は通用しないぜ!しかも毒持ちだ!」
「ギズモはバリアすら通り抜けてしまいますっ!一旦逃げましょう!?」
4人は逃げようとしたが、ギズモは広範囲に広がり、全員を包み込んだ。
ブワァァァ―――ッ
「くっ…苦しいっ…」
「おぇっ…毒がっ…まわってきやがっ…」
「ううぅ…頭が…痛い…」
3人が苦しむ中、リナリアだけはピンピンしていた。
「私には効かない…けど、一体どうすれば…!」
リナリアが考えているうちに、3人は倒れてしまった。
「ど、どうしよう!直接攻撃が効かないのなら……やってみるしかない…!」
《アスディアロ》
リナリアはギズモに向かって即死魔法を唱えた。すると、煙が透き通っていき、ギズモは消え去った。
「大丈夫ですか!?皆さん!」
「ああ、何とかな…」
「リナリア、本当に助かったよ。ありがとう」
「お役に立てて何よりです、アルメリア様!」
「ちぇっ!こんな時にイチャイチャしてんじゃねーよ!おぅっ…頭いてぇ…」
「すぐに回復魔法をかけますね… 《キュアリム》《リフレア》」
ツグサは回復・状態異常回復の魔法を唱え、体勢を立て直した。
そして、再び扉に手をあてた。
「よ、よし…今度は大丈夫だな。じゃあ、行くぞ」
アルメリアは重々しい扉を押し開いた。
扉の先には広い空間になっており、地面にはエルフの森と同様に、大きな魔方陣が描かれていた。
「ここが聖域か…不思議と熱くないな」
「あ、見てくださいっ!奥に燃えている人がいますよ!?」
「まじかよ!今助けてやるぜ! 《ジャバ》 」
ラックは槍に魔力を通し、水魔法を燃えている人型に向かって放った。
バシャッ!! 「ぐわあおぉう!!?」
人型は驚いたのか声をあげ、4人の方を見た。
「誰だぁっ!!俺に水をかけやがった輩はぁっ!!?」
「な、なんか怒ってないか?あの人型」
「もしかして魔物なんじゃねえのか!?」
「言葉を話す魔物ってことは…私と同じ人外種…?」
「聖域に魔物がいるなんて大問題ですよ?」
4人が魔物だと疑う中、燃える人型が大声を出した。
「全部聞こえてんだよぉっ!!いいかぁ!?俺はココの主であり、精霊の“バーナー”だぁ!!」
「えぇっ!?あなたが精霊様!?」
「まじかよ!俺まじで無礼者じゃねえかよ!」
「あわわ…私のせいですみませんっ!」
4人が驚いてあたふたしていると、バーナーはアルメリアに近付いた。
「ンン…?お前から神聖な魔力を感じる…まさか加護を受けているのか?」
「あ…あの…バーナー様にお願いがありまして…」
「ん、いいだろう。何でも聞いてやるよ」
意外にもあっさりと返事がきた。
「ほ、本当ですか!?ありがとうござ…」
言い終わる前にバーナーが声をあげた。
「ただし!!この俺を倒せたらなぁーーっ!!」
「えぇーーーっ!!?」
「まじで戦闘狂なのかよ!」
「ひぃぃっ…焼き殺されちゃいます!」
「や、やめて…私消えちゃうよぉ!」
「さあ!!貴様らの強さを!この俺に示して見せろぉっ!!」
バーナーはより一層激しく燃え上がり、4人も戦闘態勢に入った。
こうして、話す余地もなく、強制的に戦闘が始まった。
次回、えぐい精霊戦




