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となりにはアンデッド  作者: 仁ぐうす
火竜のオアシス
53/57

【53】インプルーブ・アンデッド

いよいよオアシス編終盤へ

話しを終えたアルメリア達は、宿から出てラックを探した。すると、村の外でサボテンを焼いているところを発見した。



「おーい!そんなところにいたのか…ってえぇっ!?ラックが火を()いてる!?」


「あぁ、言ってなかったか?サラマンダー族は一応火を噴けるんだぜ!でもまぁ、あんまり使うことないから火力は退化しちまってるがな」


「じゃ、じゃあツグサも火を噴けるのか…?」


「はい、一応」ボウッ!


「ひゃっ!火は怖いです…」



ツグサが大人しそうな見た目で火を噴く姿を見て、アルメリアは驚きを隠せなかった。その横で、リナリアは火を怖がりアルメリアの腕にしがみついた。



「んで、話は終わったのかよ?」


「あぁ。ここの精霊様に会うために“火竜の洞窟”に行くことにしたよ。だからこれから村で準備をしていこうとしてたんだけど」


「ラックさんも一緒に準備しましょうよ」


「この村で…か」


「やっぱり嫌ですか…?」


「……」



ラックは少し沈黙した後、話し始めた。



「わかってんだ。穏健派の奴等に迷惑をかけたのは俺ら過激派だってことは。けどよ…戦わなきゃ何も変わらねぇ。ろくに戦いもせず、ただ俺らを追い出したアイツらを…俺はやっぱり許せねえんだ…!」


「けどさ…せっかく準備を手伝ってくれるって言ってくれてるんだから…」


「準備だけなんだろ?それで自分たちは戦いに行かずに、ここで平和に暮らしてるだけなんだろ!?結局は俺たちしか戦ってないじゃねえかよ!アイツら腰抜け共は…――」


「いい加減にしてくださいっ!」ペチン…



文句ばかり言うラックの頬に、ツグサの弱々しいビンタが入った。

ツグサがこんなことをするなど予想もしていなかったアルメリアとリナリアは、驚きで棒立ちになっていた。

ラックもよっぽど驚いたのか、困惑した表情になっていた。



「あ!あの…えっとすみません、つい…。ですが、穏健派の人たちだって本当は一緒に戦いたいはずです。でも、あの方々は戦闘には向かない体なんです。だからせめてもの埋め合わせとして準備を手伝ってくださるのです。穏健派の方々は、気持ちでは一緒に戦ってくれているんです!どうか…どうかわかってあげてください…ラックさん!」


「……そう、だよな。すまねぇ…俺さ、馬鹿だから真っ直ぐにしか進めねえんだ。だからお前みたいな先導者がいねぇとすぐ道を踏み外しちまう…。俺も少しは成長しないとな」


「…ラックさん」


「効いたぜ、お前のビンタ!」



ツグサの説教により目を覚ましたラックは、はりきってサボテンを焼きだした。



「そんじゃ、まずは腹ごしらえだ!腹減って準備どころじゃねぇよ!」


「サボテンって美味いのか?」


「私の肉の方が美味しいのでは?」


「え…リナリアさんの肉…??」


「サボテンはなぁ、貴重な水分をとれるし腹も膨れる…まさに最高の食材なんだぜ!まぁ、(とげ)を取んのはちょっと面倒だけどな」



そう言ってラックは手際よく棘を取っていき、スライスしたサボテンを葉っぱの上に並べていった。


「そら!できたぜ!俺特製サボテンステーキだ!食ってみろよ」


「ん、美味い!サボテンなんか初めて食べたけど、思ったより美味しいんだなぁ!何というか肉厚ジューシーでまるで肉を食べてるみたいだ!…味はあんまりないけど」


「これならやっぱり私の肉の方が美味しいような…」


「あの…リナリアさんの肉って一体…」



4人は食事を終え、装備屋に向かった。



「あの~、何か装備が欲しいんですけど」


「おや!あなた方のことはジュベリ様から聞いておりますよ。欲しいものが

ありましたら何でも持って行ってください!お金はいりませんので」


「何でもって言われましても…」


「まあまあ、こいつが協力したいって言ってくれてんだ、いいもん貰ってこうぜ!」



遠慮気味なアルメリアをさておき、ラックは店に置いてある槍をさっそく手に取った。

その槍は、(あお)い半透明の素材でできており、()の部分には、海の波のような綺麗な装飾が施されていた。



「これ、なんだか神聖な魔力を感じるな…」


「はい、それは水の精霊の加護を受けた特別な槍なんです。その槍に魔力を

通すと、なんと水属性の魔法“ジャバ”が発動しますよ」


「まじかよ!ここには“魔武器(マジックウェポン)”なんて置いてあったのかよ!もったいねえ、俺これをいただくぜ!」



ラックは“蒼海(そうかい)(やり)”を装備した。

一方、ツグサは様々な杖を見て迷っていた。



「う~ん…やっぱり回復魔法特化の杖なんて置いてないのかなぁ…。だったら攻撃魔法特化にしてバリアの強度をあげようかな」



そう言ってツグサは骨でできた杖を手に取った。杖の先端には角の生えた小振りの頭蓋骨がついている。



「その杖はリトルリザードの骨でできておりまして、攻撃魔力を上げるだけでなく、炎耐性上昇の効果も付きますよ」


「そうなんですか!これから精霊様に会いに行くし、ちょうどいいかも!」



ツグサは“リザードワンド”を装備した。さらに、回復魔法と炎耐性上昇の効果が付く、真っ赤な布にリトルリザードの鱗が施された防具の“炎のローブ”も装備した。

アルメリアは、オアシスに置いてきた剣と防具を()しみながらも、防具を選んでいた。



「う~ん、やっぱ炎耐性があった方がいいのか?でも僕には耐性あるみたいだし…」



そんなことを呟いていると、装備屋の店員が声をかけてきた。



「アルメリアさん、ここの精霊様を(あなど)ってはいけませんよ。なにせ炎耐性のある私達サラマンダー族でさえ丸焦げにされてしまうと言い伝えられていますから」


「えっ!?そうなんですか?精霊様の火力強すぎる…」



話しを聞いて余計に考え込んだアルメリアに対し、店員はある防具を(すす)めた。



「この防具はここらで採れるスポンジ石という鉱石で作られたものです。スポンジ石は、たくさんの水を貯えることができ、高温になると水を一気に放出するという性質を持っています。この防具も同様の性質を持っており、これならば精霊様の攻撃も数回はしのげることでしょう。いかがでしょうか?」


「おぉ!じゃあそれでお願いします!」



アルメリアは“水飲(みずの)みの(よろい)”を装備した。

オアシスで装備を引っぺがされ、半裸状態のままのリナリアは、炎の精霊の話を聞いて、(おびえ)えながら防具を見ていた。



「うぅ…今度の戦いは真面目に消えかねない……それに、今のままじゃアルメリア様を守れない…!…かといって、鎧みたいな重い防具は装備できないし…う~ん……」


「あなたの種族はアンデッドですね?炎を浴びると消えてしまう…まさに相性最悪の戦いですね。そんなあなたにはこの装備をお勧めいたします」



そう言って店員は黒い道着のようなものを持ってきた。



「これは、精霊様が住んでいる火山地帯に自生している“燃えない草”という黒い植物の繊維(せんい)でできています。“燃えない草”というのは、その名の通り火をつけても燃えず、溶岩の中でさえ燃えない特殊な植物です。この道着にはその植物が100%使われており、炎耐性が非常に高いんです。精霊様の攻撃をまともに食らわなければ十分効果を発揮することでしょう」


「…!それでお願いします」



リナリアは“()えない道着(どうぎ)”を装備した。



「よし!これで皆装備が整ったな!」


「おいおい、お前の武器がまだじゃねえかよ?」


「あぁ、僕の武器はこれだ」



そう言って、アルメリアはずっと担いでいた斧を手に持った。



「それは…!アマリスさんの斧!?」


「そうさ、これでアマリスも一緒だ」


「さすがアルメリア様…!使い慣れていない武器だというのに…なんと慈悲深い…!」


「へっ…まったく、(いき)な野郎だ!」



装備を整えた一同は、村を出て、いよいよ火竜の洞窟へと歩み始めた。


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