【52】グローリー・パスト・サラマンダー
朝、心地よい眩しさに目を覚ます。
「んん~…朝か…良く寝たな~……ってうわぁ!」
なんと、アルメリアと同じベッドにリナリアが寝ていた。
アルメリアの声で、リナリアも目を覚ました。
「あ、おはようございます!良く眠れましたか?」
「う、うん…っていうか、君寝ることができたんだね」
「はい!実際には効果が無いのですが、一応眠ることはできるんです」
「そうだったのかぁ……って違う違う!君のベッドはあっちでしょ!?なんでここに寝てるのさ?」
「だって…アルメリア様が、感情を抑える必要は無い…って…」
その言葉を聞いて、アルメリアはようやく昨夜のことを思い出した。
どうやら昨夜の一件で、リナリアはアルメリアにかなり懐いたようだ。
表情も豊かになり、まるで別人と話しているかのように感じた。
「ああ…そうだった。…そうだったけど、こんなことされたら僕は…」
「どうしたんですか?顔が赤いですよ?まさか毒にやられて!?」
「そこは相変わらずなんだね…。そういえば、ラックたちがいないな」
アルメリアは横のラックとツグサが寝ていたベッドを見た。
二人の使っていたベッドをよく見ると、少し紫色になっていた。
「まさかこれって…」
アルメリアは心配になって立ち上がると、扉の向こうから2人の声が近付いてきた。
「はぁ~…ったく、寝苦しかったぜ…ま、いいけどよ」
「す、すみません…私のせいで」
ガチャッ
2人が扉を開け、部屋に入ってきた。
「おう、起きたか!よく眠れたみたいだな」
「おいおいラック、お前らのベッドがなんか紫色になってるんだけど…」
「ああ、それな!昨日オアシスから逃げてる時に俺、毒に侵されたツグサの脚抱えて走ってたからよぉ、なんか毒が腕にうつっちまってたみたいでな」
「そうなんです。ですから解毒をしてきたんです」
「やっぱりか…とにかく無事でよかったよ」
2人の元気そうな顔を見て安堵するアルメリア。しかし、ラックの一言が急に気になりだした。
(ん…?寝苦しかった、だって?じゃあ昨夜のアレ、もしかして見られてたのか…⁉)
「な、なあラック!昨日の夜さ、何か見た?」
「ん?悪夢ならしこたま見たぜ。ちきしょー、あのアバズレの面がまだ浮かんできやがる!」
(よ…良かった~…アレ見られてたら結構恥ずかしかったぞ…)
ラックの言葉に、アルメリアは再び安堵した。
そんな時、部屋の扉をノックする音が聞こえた。
コンコン…
「失礼してもよろしいでしょうか?」
「…?どうぞ!」
そう呼びかけると、扉が開き、年老いた男と若い女のサラマンダー族が入ってきた。
「おはようございます。わたくし、この村の代表者を務めております、ジュベリと申します」
「私はこのお方の補佐で、ジニアと申します」
「なんと!この度は村に泊めさせていただきありがとうございます」
「ん?穏健派の爺と嬢ちゃんが俺たちに何の用だ?」
「ちょっとラックさん…もうちょっと言い方変えましょう?」
穏健派の2人は、ラックの煽りにも動じずに話を始めた。
「門番から、オアシスより脱走してきた者がいると聞きましてな。ぜひお話を聞かせていただきたいと思い訪問したのです」
「わかりました。では、少し長くなりますが、現在に至るまでの経緯をお話しします」
アルメリアはこれまでのことを細かく説明した。その間、ラックは穏健派の2人をずっと睨んでいた。
「…ということで、今に至ります」
「そうでしたか…さぞかし辛かったでしょうなぁ…」
「革命を起こそうだなんて…それもたったの5人で、ですか…」
「そうだ!俺たちはお前らと違ってまだ諦めちゃいねえんだ!」
ジュベリは難しい顔をして話し始めた。
「あなたたちでは、オアシスを奪還するのはおそらく無理でしょうなぁ…」
「なんだとぉ!?この爺!ただ嫌味を言いに来ただけか!?あぁ!?この野郎!」
「ラックさん落ち着いて…!まずはお話を聞きましょう?ね?」
ツグサは、拳を握り立ち上がるラックを必死に止めた。
「けっ!こんな腰抜け共の話なんか聞いてられっか!」
「お、おい!どこに行くんだよ!?」
「腹っ減ったからサボテン食いに行くんだよ!」バタンッ!
だいぶ気分を害したのか、ラックはついに部屋から出て行ってしまった。
「…すみません、とんだご無礼を…」
「いえ、いいのですよ。わたくし共が悪いのですから」
「あの…過去に何があったのか教えてもらえませんか?」
「いいでしょう。ジニア、よろしく」
「かしこまりました。では、私からお話しさせていただきます」
「…」
補佐のジニアが、過去のオアシスでの出来事を話し始めた。途端に、ツグサの表情は強張り始めた。
「まず、私達サラマンダー族は全員が元々オアシスに住んでいたということはご存じでしょうか?」
「はい。それから格差が生まれて、肌の色素が薄い者が追い出されたという所まではラックから聞いています」
「そうでしたか。それでは、そこから先をお話ししましょう。
オアシスから追い出された私達は、何とか協力してこの砂漠地帯に一つの村を築き上げました。それからしばらくして、暮らしが安定してきた頃、色素の濃い連中が突然オアシスに特攻をしかけました。それに怒ったオアシスの兵士が、今度はこちら側に攻撃をしかけてきたのです。それにより、安定しつつあった生活が乱され、村人も徐々に減っていきました。このままではいけないと思った若き日のジュベリ様は、この状況を作り出した色素の濃い連中を“過激派”と呼び、一人残らず村から追い出しました。すると、オアシスの攻撃は止み、また平和な日常が戻ってきたのです」
「なるほど…それであの集落に攻撃が向いていたのか。え…じゃあもしかして、協力して築き上げた村っていうのは…」
「はい。この穏健派の集落なのです」
「…はぁ…はぁ…はぁ…」
「お、おい!大丈夫かツグサ!?」
ツグサは胸をおさえ、呼吸を荒くしていた。
「す…すみません…あの時のことを思い出すと…怖くなってしまって…」
「無理もない…あの時は無害だった連中まで追い出してしまったからのう…本当に申し訳ないことをした」
「いいんです。こうしなければ救えなかった命があるのですから…」
「そんな過去があったのか…。でも、元を辿ればやっぱりオアシスの連中が原因のように見えるな…」
過去の話を終えたところで、ジュベリは本題を話し始めた。
「肌の黒い連中…“イフリート族”は私達よりも遥かに能力が高く、とても好戦的な連中なのです。しかしながら、追い出される直前までは皆仲良く暮らしていました。そこでわたくしは考えたのです。これにはさらに裏の勢力が関わっていると」
「裏の勢力…?でも、この砂漠地帯にはこの種族以外存在しないんじゃないですか?」
「その通りです。ですから、考えられることはただ一つ……“魔物の仕業”です」
「魔物の仕業…か。ということは、オアシスのイフリート族は魔物に操られているということですね」
「はい、最近は魔物が増えてきているらしいですし。でも、もしそうだとしたら、ここの“精霊様”に、正気に戻してもらえるかもしれません」
「え、ここにも精霊様がいらっしゃるのですか!?」
精霊という言葉を聞いて、アルメリアはシンリナーの事を思い出し、少し頼もしく感じた。
「はい。精霊様はここから南東のオアシスを越えた先に存在する“火竜の洞窟”という場所におられます。しかし、精霊様はとても好戦的なお方でして、自身が認めた者としか話をされないのです」
「な…なんだそれ…シンリナー様とは全然違うじゃないか…」
「ですがもうそれしか方法が残っていません。私達穏健派はなるべく平和的な解決を望んでいるのです」
話を聞いて納得した3人は、火竜の洞窟に向かうことにした。
「アルメリアさん…でしたかな?わたくし共が着いて行っても戦力にはなりますまい。ですからせめて旅の準備だけでも手伝わせてください」
「おお!とても助かります!さすが穏健派の人たちだ…。言っちゃいけないけど過激派の人たちと違って協力的で助かるなぁ…」
「アルメリア様…それは遠回しの悪口では?」
横で聞いていたリナリアにつっこまれながらも、アルメリアは村を旅立つ前に準備を整えていくことにした。
お話回




