【51】リリース・ペイン・アンデッド
夜、アルメリアがふと目を覚ますと、リナリアが窓から外を眺めていた。
リナリアの体はもう完全に回復しているようだった。
「リナリア、もう体は大丈夫なのか?」
「アルメリア様、私のことよりも自身の心配をなさってください」
リナリアはまた無機質な表情に戻っていた。
アルメリアは、リナリアに気になっていたことを聞いた。
「ねえ、リナリア、君さ、本当は…痛覚、あるんだろう?」
「前にも言いましたが、アンデッド族に痛覚はございません」
予想通りの回答だった。
しかし、そこで終わらせずにアルメリアは問い詰めた。
「でも…森ムカデの時も、それに…拷問の時だって、痛がってたじゃないか?」
「・・・本来なら無いはずです。ですが、私は人間とのハーフなので、その人間的部分が痛みを感じているのかもしれま…――」
「そういうことを聞いているんじゃない!僕は…君という一人の女の子の、本心を聞きたいんだ…!」
アルメリアの言葉を聞いたリナリアは、一瞬驚いた顔をしたが、すぐにまた無機質な表情に戻ってしまった。
「私はアルメリア様の護衛役です。ただでさえ使い物にならないのに、余計な感覚や感情があっては任務に支障が出ます」
「僕さ、さっき生まれて初めて拷問を受けたんだ。痛くて…辛くて…何より心細かった。これがリナリアの受けていた苦しみだったのかって思った」
「…」
「でも、違ったんだ。僕の時は隣に仲間がいたし、その仲間に助けてもらえた。リナリアはずっと孤独で辛い拷問を受け続けていたんだろう?しかも、死ぬこともできずに。それが、どんなに辛い事か…わかったんだ」
「……」
リナリアはアルメリアの話をただただ黙って聞いていた。
「だからさ、少しは君と平等になれたかなって…はは、そんなわけないか…」
話を聞いているうちに、リナリアはだんだん悲しそうな表情になっていき、感情を必死に抑え込んでいるのがわかった。
「なぁ、リナリア…過去に何があったのかは分からないけど、もっと僕を頼ってもいいんだよ?つらいことがあったなら話してくれていいんだよ?まあ…同情ぐらいしかしてあげられないだろうけど……それでも、少しはすっきりするはずだ」
「…でもっ…私、は……うぅっ…!」
そう話した瞬間、リナリアが急にアルメリアの胸に飛び込んできた。
そして、感情が一気に溢れ出たのか、今まで聞いたことのない大きな声で泣き出した。
「…本当は!傷つけられると痛いのっ!いつも怖くて心細いのっ…!もっと甘えたくて…愛されたくて…抱きしめられたくて…たまらないのっ!!でも…私は…臭くて醜いアンデッドで…こんな魔物紛いの体で…」
「…うん、うん!よく、話してくれたね。それでいいんだ。何も、感情を抑える必要なんてないんだよ」
そう言って、アルメリアはリナリアを優しく抱きしめた。
リナリアの冷たい体に、少しでも人間の温もりを感じさせようと、腕で優しく包み込んだ。
「アルメリア様…あったかいです…。こんな醜い私でも、受け入れてくれるんですね…本当にお人好しな王子様です…」
「ははは、昔からよく言われるよ。でも、君への想いは特別だ。君は決して醜くなんてない」
「あの…もう少し…このままでいてもいいでしょうか?」
「ああ。気が済むまで付き合うよ」
リナリアはこれまでの苦しみを吐き出すかのように、しばらくアルメリアの胸で泣き続けた。
心の苦しみからの解放




