【45】リターン・シャイン・アルメリア
ラックは拷問官が言った通りに、廊下の突き当りを左に進んだ。その先には、銀色の分厚い扉があった。
「ここだな…!」 ギィィィィ…
重たい扉をゆっくりと開く、するとそこには…オアシスの兵士が大勢集まっていた。
「ん…?あいつ、反逆者じゃないか!?」「脱走だ!捕まえろぉ!!」
「くそっ!はめられた!?」
どうやら偽の情報を掴まされたらしく、そこは兵士の詰所だった。
「…やるしかないな!」《グロウ!》《グロウ!》《ファスト!》
ラックは覚悟を決め、強化魔法を重ねがけした。
兵士が武器を持って一斉に襲い掛かってくる。
兵士たちの攻撃を、ファストによる俊敏性を生かし、避ける。そしてひるんだ相手に強化された拳を放った。
ゴッ!「ぐあっ!」 ゴッ「うぎいっ!?」
「見たか!これが俺のカウンタースタイルだ!」
詰所の兵士は一瞬にして全滅した。
ラックが余裕をこいていると、後ろから不意打ちが飛んできた。
ビシィッ!!「ぎゃあっ!?」
背中に鋭い痛みが走る。血が滴っているところを見るに、どうやら肉を抉られたようだ。
「くっ…だ…誰だ!?」
「脱走だなんていけない子ねぇ~♡」
カツカツと音を立て、現れたのは…
「私は処刑人ベローズ、あなたのような強そうなオトコが大・好・物なの~♡」
「ふざけやがって…てめえもぶっ飛ばす!」
ラックはベローズに飛び掛かった。
しかし、目にもとまらぬ鞭裁きで、ラックの全身に鋭い打撃が叩き込まれる。
バシビシベシバシビシィッ!!!「ぎゃああああああああっ!!」
「もぉ、せっかちさんなんだからぁ♡レディーの扱いが分かっていないようねぇ…そんな子には……おしおきよぉっ!!!」
バシバシバシバシバシ!「うぎゃあああああっ!いてぇっ!!」
精神的にもくる鋭い痛み。それに加え、一撃一撃が皮膚を切り裂くほどの打撃の鋭さ。
ベローズを前に、ラックは少し弱腰になってしまっていた。
「そ…その先に…女2人が…いるんだな…?」
「えぇそうよぉ。でも…もう死んじゃってるかもしれないけ・ど♡おほほほほほ!」
ラックの頭は、さっきの拷問で一瞬限界を超えたため、かなりの疲労が溜まっていた。
その上、鞭によるダメージを受けすぎたため、今にも倒れそうな状態になっていた。
「く、そ…ここまで…なのかよ…」
一方、アルメリアはまだ床に寝そべっていた。
「僕は…あのまま死んでしまいたかった。そうすれば、もう何も考えずに済んだんだ」
頭の中に、今までの思い出が駆け巡る。
小さい頃、今は亡き兄に言われた最後の言葉…
『もし僕が帰ってこなかったら、次はお前が意志を継ぐんだ、アルメリア』
「意志を継ぐって……これはただの成人の儀なんでしょ?なんでそんなに必死だったんだよ…兄上…?」
出発の直前に、王に言われた言葉…
『アルメリアよ。この旅を経て立派に成長した姿で戻ってくるのを楽しみにしておるぞ』
「父上、成人の儀とは、時に周りを巻き込むこともあるのでしょうか?」
エルフの村で出会ったばかりの頃、チェンスが言ってくれた励ましの言葉…
『そう思い詰めんなって、お前は十分頑張ったよ』
「そうだよ。僕、頑張ったよ。でも、お前の所にはまだいけないのか…?」
「わからない…何もかも、わからない」
考えれば考えるほど、無に堕ちていく。
堕ちていくほど何も感じなくなる。
そんな状態でも、懐だけはなぜか温かい。
このぬくもりを感じていると、つい最近のことのようで、もう遠い昔のことでもあるような、何だか懐かしい気持ちになった。
「僕、まだ何かやらなくちゃいけないのかなあ…」
誰もいない空間に問いかけ、返事の来ない虚しさに涙が流れる。
そんなアルメリアを励ますかのように、輝きの減った緑の結晶が懐から飛び出し、赤く腫れた頬に優しくすり寄ってきた。
「シンリナー様…こんな時でも献身的だな……そっか、精霊様だもんな」
瞬間、エルフの森での思い出が再び蘇る。
このままでは、ラックがチェンスと同じ道を辿りかねない。それだけは…
「…絶対に許されない!」
目の輝きを取り戻したアルメリアは、緑の結晶を懐にしまい、処刑部屋を飛び出した。
アルメリア、辛うじて復活!




