【26】シー・ユー・アゲイン・フォレスト
エルフの村で一晩過ごしたアルメリア達は、旅の支度を整えていた。
「王子様、もう行ってしまわれるのですね」
「ああ、これは元々古の竜を探すのが目的の旅だからね」
シンリナーは悲しそうな顔をしていた。
「私もご一緒したいところですが、私には精霊としてこの森を守る使命があるので…」
そう言って、シンリナーは緑色の結晶をアルメリアに手渡した。
「これは、私の魔力が詰まった結晶ですわ。ピンチになりましたらそれを使ってくださいまし」
「うん、ありがたく頂戴するよ」
「リナリアちゃんも、あんまり無理しないでね」
「ご心配ありがとうございます」
シンリナーとの会話を終えた二人は、村の高台に飾られたチェンスの像に向かった。
「あいつにも、別れの挨拶しとかないとな」
「そうですね…」
いざチェンスの像を目の前にすると、自然と悲しみが込み上げてくる。
アルメリアは頬を思いっきり叩き、感情を整えた。
「チェンス…お前とは、一緒に旅したかったよ。でも、この村の守り神になっちまったんだよな。だったら、責任もってこの村を守ってやってくれよな!いいか!英雄になったんだから、少しは真面目にするんだぞ!でも、たまにはふざけて和ませてくれよな…」
それはアルメリアの願いだった。もう一度、彼の陽気な姿を見たかったのだ。
「アルメリア様…」
「…よし!挨拶は済んだ!行こう、リナリア」
アルメリアは、リナリアの手を引き、村の出口へと走り出す。
村の門には、大勢の村人が集まっていた。どうやら見送りをしてくれるようだ。
「王子様、この度は村を救っていただき誠にありがとうございました」
「ああ、こちらこそ、お世話になったよ」
「たしか、古の竜をお探しのようでしたよね?」
「!もしかして何か知ってるのか?」
「いえ、残念ながら…。ですが、ここから南に進みますと、“火竜のオアシス”という砂漠地帯がございまして、そこに行けば何か手掛かりを掴めるかもしれません」
「そうか、貴重な情報をありがとう」
そう言って歩き出そうとすると、鍛冶屋の亭主が走ってきた。
「はあ…はぁ…何とか間に合いましたな…」
「鍛冶師さん!どうしたんですか?」
「あなた様の剣、戦いで刃こぼれしていたでしょう?ですので、勝手ながら新しい剣を作らせていただきました。これをぜひあなた様に使っていただきたい」
その剣は、討伐した毒怪蝶の牙を加工したもので、柄の部分には聖域の周辺に生えている神聖な植物を模した装飾がなされていた。
「最後までこんな…ありがとうございます!大切に使わせていただきます!」
鍛冶師は手でグッドマークを出し、大声で叫んだ。
「どうか、旅のご武運を!!」
皆の声援を背中に受け、村から旅立つ。
「また、二人きりになっちゃったね」
「そうですね」
再び感じる草原の静けさに、どこか虚しさを覚える二人。
すると、空から声が聞こえてきた。
「お二人共!またこの村に戻って来るのですよ!今度は村人総出で歓迎いたしますわ!」
「シンリナー様!?」
なんと、シンリナーが宙を舞いながら叫んでいた。
「ああ!また来るよ!必ず!」
「いいましたわね!?絶対ですのよ!私、ずっとお待ちしておりますわ!」
「うん、また会いに行くよ。チェンスにもね」
二人は様々な思いを胸に秘め、次の目的地である“火竜のオアシス”へと歩みを進めた。
エルフの森編 ー完ー




