【25】ハブ・ア・スウィート・ドリーム・チェンス
「ここが葬儀会場ですわ」
そこは、村の高台にある広い花畑だった。奥にはすでに大勢のエルフが陳列しており、神聖な空気が感じられた。
アルメリア達の存在に気付いたのか、村の代表者を名乗るエルフが向かってきた。
「よくぞ来てくださりました。ささ、こちらへどうぞ」
代表者に連れられ、木でできた台座の上に登壇した。そこには、チェンスの遺体が入った棺と、チェンスの姿をかたどった銅像が飾られていた。
「それではこれより、大英雄チェンスの葬儀を行います。」
エルフ達のすすり泣く声が聞こえてくる。おそらく、この村でもチェンスは印象的な存在だったのだろう。
棺の中のチェンスは、傷が修復されており、まるで生きているかのように綺麗だった。
そこへ、代表者が何やら液体の入った壺を手渡してきた。
「王子様、どうかこれで、チェンスという存在への未練を、断ち切ってください」
「これは一体…?」
「それは、魔物から採取された強力な溶解液ですわ。その溶解液にかかれば、どんなものでも完全に溶かしてしまえますわ」
「ってことは…」
アルメリアは、チェンスの綺麗な遺体を見ながら動揺し始める。
「この儀式は、この村の風習ですの。亡骸を骨すら残さず完全に消し去ることで、未練を断ち切り、残された者共が再び前を向いて進めるように……という意味が込められているのですわ」
「さようでございます。ですが、もし辛いようでしたら、他の者に回していただいてもかまいません」
「いや、僕がやります。いや、やらせてください…!」
決心したアルメリアは、溶解液の入った壺を少しずつ傾ける。
「お前…これから溶かされるんだぞ…?それなのに、安らかな顔しやがって…本当に…能天気な奴だな……」
ここまで必死に堪えてきた涙が一気に溢れ出す。嗚咽も止まらない。
それは、シンリナーとリナリアも同じだった。
「さようなら…チェンス……!」
そう言って、一気に溶解液を流し込んだ。
チェンスの遺体は、見る見るうちに泡になっていき、眩い光を放ち始めた。
「これ、は…?」
「チェンスの体内に残っていた魔力ですわ。チェンスの最後の見せ場ってとこですわね…」
「…綺麗…」
やがて光は消え、チェンスの遺体は跡形もなく消えていた。
一同は泣き崩れた。もう立ち直れないほどの悲しみが襲ってくる。
それでも、立ち上がらなければならない。
これが試練であるがゆえに。
「これにて大英雄チェンスの葬儀を終了いたします。最後に、チェンスの偉大なる功績を讃え、拍手!」
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!!!
泣き声が入り混じる大きな拍手が村全体に鳴り響き、葬儀は終わりを迎えた。




