【21】ラスト・ホープ・アンデッド
チェンスは弓から槍に持ち替え、アルメリアと共に走る。
毒怪蝶は近づかせまいと、連続で毒液を放つ。しかし、シンリナーのピンポイントバリアにより弾かれる。
「くらえぇ!“ウィンドスピア”!」 ズブシャッ
チェンスの、風魔法を武器に纏わせた突きが、毒怪蝶の胴体に刺さり、炸裂する。
「いっけええー!」 ブオンッ ザァンッ
続いてアルメリアの“飛ぶ斬撃”が、毒怪蝶の8本ある脚の内の右半分を切り落とした。
ピギャアアアァァ!! ズウン…
脚を断たれ、毒怪蝶は大きくバランスを崩す。そこに間髪入れずにアルメリアが強靭な顎に切りかかる。
「うおりゃあ!」 ガイン! ボロッ
剣が刃こぼれしたが、見事切り落とすことに成功した。
多大なダメージを受けた毒怪蝶は、ピンク色の体液を流し、明らかに弱っている素振りをみせた。
「「とどめだぁぁ!!」」
アルメリアとチェンスは大きく振りかぶり、最後の一撃を放つ……
ガジッ 「うっ!?」「がっ…」
…寸前に、何者かに不意打ちを食らい、その場に倒れた。
「あ、あれは…森の魔物たち!?」
なんと、毒怪蝶の周りに魔物の軍勢が群がってきた。
アルメリアとチェンスは、森ムカデの不意打ちにより、毒を食らってしまったのである。
「な…なんで…急に…魔物たちが…?」
「アイツの体液だ…!ピンク色の体液が…雑魚を呼び寄せるフェロモンを放ってやがった…!」
瀕死の毒怪蝶の、最後の抵抗であろうこの状況は、アルメリア達に再び絶望を与えた。
「私は…一体どうすればいいですの!?魔力もあと少ししかありませんわ!」
「アルメリア様が魔物の大群に…!は、早く!早く助けに行かなくては…!」
急に一転した状況に、シンリナーとリナリアはパニックに陥った。
体の自由を奪われたアルメリアとチェンスは、虫型の魔物たちに少しずつ体を食いちぎられていた。毒の効果で痛みも麻痺し、もはや叫ぶ気力もなくなっていた。
そんな状況でも、アルメリアはまだ諦めていなかった。
今にも閉じてしまいそうな眼を必死にこじあけ、かすれた声で力なく語り掛ける。
「チェ、ンス……生…きて、る…か…」
「あ、ぁ…な、んと…かな…がふっ…」
「チェン、ス…槍、まだ、持って…る、か?」
「ある…ぜ」
「そ…れ…風、で…前…に——!」 メリッ
話途中でアルメリアの首が食いちぎられてしまった。話を聞いたチェンスは、アルメリアの意図を考える猶予もなく、それに全てを賭けることにした。
《ウィ、ンド…!》 ヒュゴォッ!
チェンスは最後の力を振り絞り、風魔法で槍を前方に飛ばした。
その先には、2人を助けようと走ってきていたリナリアがいた。
「チェンスの槍…?」
リナリアは、それを反射的にキャッチした。その瞬間、リナリアの心にどこからともなく使命感が沸き上がった。
「私が…やるんだ…!」
アルメリアとチェンスにより紡がれた希望は、最後、リナリアに託された。
希望は託された!




