【19】ライフ・クライシス・アンデッド
絶体絶命のピンチを乗り越えろ!
毒怪蝶の鱗粉が舞い降りてくる。
アルメリアとチェンスは致命傷を覚悟し、身構える。そして、ついにその時はきた。
パラパラパラ
「ぐ!?」「おうえぇ!!!」
粉が皮膚に触れた瞬間、この世のありとあらゆる苦痛が二人を襲った。
二人はもがき苦しみながらその場に倒れる。それを見たシンリナーはすぐさま回復魔法を唱えようとした。
《エナジーフラッ——》キュピヤアアアアアァァーーーーー!!
アルメリアの悪い予感が的中した。呪文を唱え終わる直前に、毒怪蝶が急下降し、襲ってきた。
「シンリナーさん危ないっ」
「きゃっ!」
とっさにリナリアがシンリナーをその場からどかしダメージを肩代わりした。
ガジンッ 「…っ!」
毒怪蝶の強靭な顎で、リナリアの露出しているわき腹が抉られた。
「露出部分に攻撃とは…知性のある魔物のようですね…」
「ありがとう!助かりましたわ!しかし、今度失敗したら二人はもう……いや!やるしかありませんわ!」
シンリナーは再び魔法の詠唱に入る。それと同時に毒怪蝶も再び向かってくる。
(次の詠唱が途切れてしまったら、時間経過で二人共死んでしまう…何としても私が食い止めなければ…!)
リナリアは苦しんでいるアルメリアを見る。
既に体中が紫色に染まっており、聞くに堪えない呻き声をあげている。
目は虚ろになり、全身には自らひっかいたのであろう爪痕がびっしり付いていた。
それでも、必死なって死に抗っている姿が見てとれた。
「私が…私がやらなければ…!」
徐々に感情が芽生えつつあるリナリアは、今まで感じたことのない凄まじい重圧に押し潰されそうになっていた。
体は強張り、手足が震える。今の彼女は、蛇に睨まれたカエルそのものだった。
キュピイイイイイイイインンンンーーーーーッ!!!!
毒怪蝶はもう目の前まで迫っていた。
リナリアの異変に気付いたのか、シンリナーが詠唱しながら彼女の肩を叩いた。
「はっ…!」と我に返り、振り向く。
シンリナーは詠唱を続けながらも、優しく|微笑んでいた。
「シンリナー様……!…よしっ」
ネガティブから抜け出したリナリアは気合を入れなおし、いつものように仁王立ちをした。
そしてリナリアと毒怪蝶は激しく衝突する。
キュピイイイイイイ!! ガジッ ガヅッ
「ううっ…!うあああああーーーっ!」
激しい攻撃に必死に耐える。魔物を抑えていた腕は両方とも食いちぎられ、噛みつかれた横腹は皮膚が破れ、内臓が漏れ出していた。それでも、残った部位を使って必死に踏ん張る。
ただひたすらに踏ん張る。
ついに毒怪蝶の顎がリナリアの頭をめがけてとんできた。
「ううぅっ!アルメリア様ああぁぁーーーッ!!!!」
《エナジーフラッシュ!!》
ズバッ ドスッ キュピャアアアア!!!
瞬間、周囲に柔らかい緑の光が広がった。
同時に、毒怪蝶に斬撃と矢が刺さる。たまらず毒怪蝶は距離をとった。
「あ…ああ……!」
リナリアの横には…… アルメリアとチェンスが立っていた。
「随分無茶させちゃったみたいだね……体、ボロボロじゃないか…ほんと、ごめんな」
「い、いいんです…いいんですよ…!アルメリア様が無事で…本当に…!」
リナリアはボロボロの体のまま泣き出した。そんな彼女を、アルメリアは優しく抱きしめてあげた。
「おいおいそんな肉片抱きしめていちゃいちゃしてんじゃねーよ!ここまだ戦場だぜ!?ってか俺にも少しは触れてくれよな~…」
「おそらくあなたの心配なんて誰もしてなかったでしょうね」
「何をお!」
毒の鱗粉を何とかしのいだ一同は、体制を立て直し、再び構える。
「鱗粉はほぼ枯渇しただろうけど、まだどんな隠し玉があるかわからないな」
「そうですわね、できるだけ固まって防衛しやすい体制をとりましょう」
「あの虫野郎も弱ってきてるはずだぜ!ここらで畳みかけてやろうじゃんか!」
「ここからが本番ってことですね…!」
窮地を脱した一同は、休む間もなく次の攻撃に備える。




