【13】グッド・ムード・アンデッド
斬撃をとばせ!
魔物の軍勢との激しい合戦が始まった。
アルメリア率いる前線の物理攻撃部隊は主に槍を使い、地上の魔物を討ち、中間にいるエルフによる遊撃部隊は弓を使い、宙に舞う魔物や前線の討ち漏らしを狙う。
シンリナー率いる後方支援の魔法部隊は、攻撃部隊へ強化魔法や回復魔法、時には援護射撃を行っている。即興で構築した陣営の割にはほぼ完璧といってもいいだろう。
それでも、人数が多すぎるため、倒れた者を見逃すと、時間経過により、どうしても死者が出てしまう。
「くそっ…きりがない!…でも魔物を倒しているうちに力がついてきたような…」
多くの魔物を倒しているうちに、アルメリアの基礎能力値がそこそこ上がっていた。
「アルメリア様、今の身体能力なら強力な技が繰り出せるのでは?」
「新技か…そうだな…小さい頃やってみたかった“飛ぶ斬撃”…今ならできるかも…!」
アルメリアは剣をぎゅっと握りしめ、魔力を刃に集中させた。すると、剣が眩く光り始めた。
「いっけええええー!」 バシュッ
剣を勢いよく振り下ろすと、小ぶりではあるが、光の刃が飛んで行った。
「やった!できたぞ!!ぐふっ…」 ブスッ
喜びのあまり油断していたところを蜂の魔物に刺されてしまった。その後、即座にシンリナーの回復魔法が飛んできた。
「もう、油断しないでください!あなたがやられたら統率が乱れますのよ!」
「す、すみません…」
倒れては蘇り、魔物を倒し続けていると、急に魔物たちが退き始めた。
「軍勢が退いていく…やったのか…?」
「何とかしのげたようですね」
エルフの集落から魔物が全て去り、エルフ達は歓喜の声を上げていた。
「やったぞー!!」「村を守ったんだ!」「これでひとまず安心ですわ!」
アルメリアは死者を出してしまった罪悪感を持ちながらも一息ついていると、一人のエルフの男が駆け寄ってきた。
「やってくれたな!俺はずっと信じてたぜ、王子さん!」
それは、弓矢で蜂の魔物から守ってくれたエルフだった。きりっとした顔の青年で、近くで見ると、割と筋肉もある。
「あ!あの時はありがとうございました!」
「そんな堅くなることないって!俺たちはもう仲間なんだからな!それに、俺たちも謝らなくちゃいけないしな」
「それはもういいよ、仲良くできればなによりだから」
「ほんっとお前は甘ちゃんだなぁ!このこのっ!」
「わっ!やめろよ~!」
その夜、エルフの村はたちまちお祝いムードに入った。
旅に出てから大変な事ばかり続いていたせいか、それを発散するが如くアルメリアは仲良くなったエルフと共にはしゃぎまくった。
リナリアはというと、自分の肉を周りからは見えない位置からちぎり取り、エルフ達にふるまっていた。どうやらエルフ達には好評らしい。
そんな緩み切ったムードの中、シンリナーだけは考えに耽っていた。
「魔物の軍勢が退いていった方向には聖域が…ということは、今こうしている間にも…!」
陽気な雰囲気の中、一部不穏さを残しつつ夜が更けていった。




