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旦那様が多すぎて困っています!?〜逆ハー異世界ラブコメ〜  作者: ことりとりとん


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57.出来ること

 


「僕の知る女性は実家の母と妹ですが、二人とも特に仕事はありませんでした。父のひとりが家政を担っていて、二人の世話もしていましたね。

 そういうものだと思っていましたが、イズミルはそれを求めてはいないのですね」


 エルの言葉に頷く。


「うん。産まれた時からの人生ずっとそうだったらいいのかもしれないけど、私はそうじゃない。

 大学へ行って勉強して、バイトとはいえ働いて、そうやって稼いだお金で友達と遊びに行く。

 そういう普通の暮らしをしてたのよ」


 そう言うと、三人とも目を見開いて驚いた。


「外で働いていたのか!?」


 カイルが叫ぶようにそう聞く。


「うん。家の近くのスーパーと、大学の図書館で」


「家業でもないのでしょう? それなのに掛け持ちしてまで働くとは……。

 僕らはイズミルのことを活動的で可愛らしい女の子だと思っていましたが、考えをもっと変えないといけませんね」


 私の過去の話はほとんどしてこなかったけれど、育った環境を知って貰ったら、少しは理解してもらえるかもしれない。

 そう思ってもっと話をしようと思ったら、重ねるようにツィリムが口を開く。


「分かった。魔術師団で仕事を探してくる」


「はっ? ツィリム、正気か!?」


 ツィリムに分かって貰えた、と思う間もなくカイルが反対する。


「家のことはイフレートがする。それなら外の仕事をすればいい。

 師団なら仕事はある。俺も依頼したいことがあるから」


 端的なツィリムの言葉がこれほど嬉しかったこともそうはない。


「ツィリム、何故、そんなことを言うんだ……! イズミルに負担をかけたいのか!!」


 カイルもエルも私を守ろうとしてくれていて、でもそれは私の望みとは違って。

 それが苦しいんだ。


「カヤッタエラでは、家のことは女性の仕事。この国みたいに、家事をする男はいない。

 外出はしないが、家が職場のようなものだ」


「……そうなのか。そんなこと、聞いた事も無かった」


「カヤッタエラは、貧しい。女の人でも少しは仕事をしないと、生きていけない」


 ツィリムの発言を聞いて、カイルが考え込む。


「国が違うだけで、俺とツィリムの常識は違う。イズミルと違って、当たり前か。

 泣いてしまうほど追い詰めていて、申し訳なかった」


 カイルに深々と頭を下げられて、ぎゅっと心が詰まる。私のことを理解しようと頑張ってくれたことが、たまらなく嬉しい。


「カイル、ありがとう。泣いちゃってごめん。カイルのせいじゃないの。ほんとに。

 ワガママだと思うけど、私のしたいこともさせてほしいの」


「僕らの考えを押し付けて、イズミルが満足していると思い込んでいました。

 こうしてきちんと話してくれて良かったです」


「俺は、自分ならどう思うか、という視点ではイズミルのことを考えていなかった。

 イズミルがしっかりと自分を持っている所が好きなのに」


「そうですね。僕も反省しています。

 最近イズミルの元気がないような気がしていましたが、ラスキス殿下との話し合いでストレスを感じているからだと思っていました。

 それだけでなく、僕らにも原因があったのですね」


「ううん。みんなが悪いんじゃないの。私のワガママもあると思う。

 でも、今までのままじゃ、耐えられなくなりそうだから。

 分かってくれて、本当に嬉しいよ。ありがとう」


 喧嘩みたいになっちゃったけど、分かって貰えて良かった。

 世界が違うんだから感覚も常識も全然違うけれど、過ごしやすいように努力していきたいな。




 そのあとは、私が温めて器によそうだけの簡単な夕食準備をしているのをみんなが見つめていた。


「そんなに見られたら逆にやりづらいよ〜」


「いや、やりたいと言うだけあって慣れているのだな、と感心していたんだ。

 きっと俺の妹は、やり方自体を知らないと思う」


「そういう国で育ってきたんだから、それが普通だし良いんでしょ?

 でも、私は出来るからやりたいの。

 もうすぐだから座っててくれる?」


 手早く盛り付けて、スプーンとフォークも並べる。

 それだけの事なのに、ツィリムはなんだか嬉しそうだ。


「カヤッタエラに、帰ったみたい。

 おれは、母さんがご飯の支度をしてくれるの、好きだった」


 懐かしい故郷を重ねて見ているようで、ツィリムの瞳は少し潤んでいる。


「料理全部を出来るかは分からないし、イフレートにも来て欲しいけど、皆が帰って来てからの支度はやるからね」


「確かに、誰かがご飯の準備をしてくれるというのは、いいものかもしれないな。

 今は申し訳なさの方を強く感じてしまうが……」


「すぐに感覚を変えることなんて、出来ないよね。

 少しずつでも慣れてくれたら嬉しいな。そうやって私もこの国に慣れてきたから」


「おれも、そうだった。違う国で生きるのは、大変だから」


 穏やかな笑顔で見つめてくれるツィリムが頼もしい。

 異国で暮らしているのは、私だけじゃないって思えるだけで、元気になれると思うんだ。


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