19.sideエル
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イズミルに外出したいと言われた時、やっぱりと思うと同時にとても申し訳なくなった。
僕の知る女性は母と妹しかいないけど、2人ともイズミルのように活発ではない。
僕にとって女性とは儚く美しい、触れればば壊れてしまいそうなものだった。
でもイズミルは違う。
よく笑い、よく話し、とても頭がいい。
しかもそれだけじゃなく、僕ら夫を支えようとまでしてくれる。
そんな彼女は家の中にずっといることが退屈で、苦しいものに感じてる。
僕だってそれに気づいてたし、どうにかしてあげたいと思ってたけど、イズミルには彼女を取り巻く様々なものがあるんだ。
神殿も王宮もまだイズミルの本当の力に気づいていないけど、気づくのは時間の問題だ。
それまでになるべく味方を増やして、イズミルを守れるようにしないといけない。
いろんなとこで工作活動してる今、イズミルを外に出すのはかなり危険度が高いけど、彼女は毎日外に出るのが普通らしく、引っ越しまでの1ヶ月はストレスのかかるものだったらしい。
こちらの世界に慣れてきて、次は外を見てみたいと思うようになったとイズミルは言っていたけれど、僕の知る女性はそんな風に考えない。
少なくとも母も妹も外に出たいといったことはなかったと思うし、出ることの方がストレスになっていた。
でもイズミルはそうじゃない。異世界から来て不安なのにしっかり自分の居場所を持てるほど強く賢い人なんだから。
繰り返すようだけど僕はイズミルの希望はなるべく叶えてあげたい。
1人で考えていても解決しないと思ってカイルに相談した。
イズミルが自室へ戻った後の深夜のリビング。
「イズミルに外出したいと言われたのですができるでしょうか?私としては叶えてあげたいのですが……」
「むしろエルは大丈夫なのか?神殿がうるさいんじゃ?」
「月儀式は終わりましたしどうにかなると思います。現状神殿内でのイズミルの優先度はあまり高くありません。
数ある信託の関係者の1人っていう程度です。若い私で預けているぐらいですしね。
むしろ今を逃してイズミルは外に出られなくなるかもしれません。神殿も王宮も気づいていない今しかないかも……」
「なるほど、俺が思ってるほど神殿はイズミルを気にしてないか」
「はい。なのでどこかへ出かけてみたらどうかと。
普通の女性と比べても外へ出てませんし」
「ならどこへ行く?」
「私の結婚式の衣装を選びに行くのはどうかと思っています。
人が少ないから安全ですし、余程のことがなければ大丈夫でしょう」
「そうするか。だが俺達のメンツ的には物理攻撃に対して弱いだろう。騎士を手配するか?」
「神殿騎士に頼んでもいいですが……あまり良い知り合いがいないのです」
「それならセラルシオという奴がいる。部隊長クラスだから腕も立つし俺の結婚式の時にイズミルと話していたから、イズミルが気に入れば、夫の候補に入れてもいいと思うしな」
「そうですね、神殿は神託という切り札を持っていますから、夫は王宮よりの方がいいでしょう。
いざという時、神殿に逆らえないようでは困りますから」
「じゃあセラルシオに頼んでおく。他の準備は頼むぞ」
軽く頷くとカイルは自室へ戻っていった。
あぁ、外出が楽しみで仕方ない。
イズミルはあのキラキラの笑顔で僕に笑いかけてくれるだろうか?
できれば僕の衣装も一緒に選んでもらって、イズミルの選んだ衣装で式をしたいな。
短編小説『俺の天使は盲目でひきこもり』を投稿しました。
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