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第6話 王都‐冒険者

「着きましたね!ここが私たちの国のニーズヘグ西王国です。」


道中いろいろあったがなんとか王国までたどり着いた。魔法を使ったからだろうか体には疲労がたまっている。ここなら少し休めそうだ。


王都を囲う城壁に空いてある門に近づくと見張りをしていた武装した2人の男が声をかけてきた。


「止まれ!」「身分の証明になるものを見せろ!」


どうやら王都の門番らしい。するとハルカさんが先ほども見せてくれた銀色の冒険者カードを見せる。


「B級冒険者か!失礼したな、通ってもいいぞ。後ろの二人は誰だ?」


「私の連れだ、危険はない。」


そうかと言った後は興味なさそうに門番の男は持ち場にはなれていった。

セキュリティがしっかりしているのはいいことだ。


門を抜けると広々とした街が広がっていた。人の通りも多く道行く人たちにも笑顔が見られた。

悪の独裁を敷くような街ではなさそうで一安心といったところだ。


足元は石畳のちゃんとした道で、その奥には立派な王城が見える。自分たちが今いる大きい道路を真っ直ぐ進んでゆけば着くのだろう。インフラも整っている国らしい。


そんなことを考えながら3人で人通りの多い通りを進んでゆく。

道の端には露店が立ち並んでおり活気を感じられた。


「イラッシャイ!安い商品が揃ってるヨ!南セレーネの珍しい飾りだヨ!」


その露店を見て俺は驚いた。売り物の首飾りではない、その声の主にである。

そいつは緑色の肌に鋭くとがった鼻をしたゴブリンだったからだ。


「どうかしましたか?リュートさん。面白い品物でもありましたか?」


「いや、ゴブリンが店を開いているから、驚いてしまったんだ。そういうものなのか?」


道を歩いていたのは全員人間だったからいきなりゴブリンが当たり前のように商売をしていたからびっくりしてしまった。周りの人も特にそれを不思議と思っていなそうだ。これがカルチャーショックというものだろうか。


「あのゴブリンさんはきっと南セレーネ国からやってきた商人ですね。ここニーズヘグ西王国は人以外の居住を認めていませんが、入国して商売をしたりすることは国の許可があればだれでも許されているんです。ほかにも北ヘカトンケイル法国からも商人の方がやってきたりしてます。亜人も住む南セレーネ国からはだいたいが商売熱心なゴブリンさんが来ていますね。」


なるほど、人間とも友好的な関係になるモンスターもいたりするのか。エピックからこの国の事を教えてもらっていると早速ゴブリンがこちらをターゲットにしてきた。


「そこの青い指輪のニイちゃん!見てってくれヨ!」


「え、俺?」


「そう!いい首飾りが揃ってるゼ!お連れの彼女さんにプレゼントしてあげたらどうヨ!」


「え!?彼女だなんて私はそんな…」


「あ、俺金持ってないんで大丈夫です。」


そそくさとゴブリン露店の前から立ち去る。ああいう手合いはちょっとでもこちらが食いつくと帰らせてくれないんだ。すぐに逃げるに限る。


後ろのエピックの顔がなぜか不満げだ…

そんなに俺の彼女と間違えられたことが嫌だったのだろうか?不安になる。


そうこうしていると目的地の冒険者ギルドに着いた。木造のかなり大きい建物だ。大きく開かれた入口からは鎧に身を包んだ屈強な男たちが出入りしている。


「着いたぞ、リュート、エピック」


俺とエピックはハルカについていく形でギルドの中に入る。中では冒険者たちが酒を飲みかわして騒いでいた。酒場も隣設されているのだろう。精気に満ちた空気が入口からでも伝わってくる。


入口入ってすぐ右手にあるカウンターにグレーの髪をした女性が机に突っ伏してぐっすりと眠っていた。授業中に寝る学生みたいだ。ハルカが揺すって目覚めさせようとする。


「起きろメルク、勤務中だぞ!」


メルクと呼ばれた女性は気だるそうにあくびをしながら目を覚ました。ウェーブのかかったきれいな髪に温和そうな顔をした人だ。


「ミスティックタイガーの討伐のクエストの報酬と記録を頼む」


そういって剥いできた毛皮の一部や片耳、それと銀色の冒険者カードを渡すとメルクがまじまじと素材をルーペで鑑定した。


「たしかにミスティックタイガーのものですね。これがクエスト報酬と、クエスト記録を始めますね。」


受付の女性がずいと硬貨が入ってるであろう袋をカウンター越しにこちらに渡した後、棚から石版のようなものを取出した。石板にある窪みに受け取った銀色の冒険者カードをはめて、石板の中心にある大きなくぼみには厚い本を乗せた。すると乗せた本の白紙の部分が自動で開きすらすらと文字が書かれていった。


便利な魔法だな。あの本でだれそれの冒険者はどんな魔物を倒したかというのを記録しているのか。

受付のメルクが記録が終わったのかカードを元の持ち主のハルカに返した。


「しかし、大変だったでしょう。このあたりには出ないモンスターの討伐でしたし。」


「いいや、私は戦っていない。モンスターを追跡していたら彼らが倒していた。」


「あらそう?彼らはハルカのお知り合い?」


「いや、なんでも天から降ってきた天臨さまらしい。」


そう言われたメルクはキョトンとした顔をしていたがハルカがカウンターを離れてしまうと興味がなくなったのかあくびをした後すみやかに睡眠を再開した。


「一杯くらいおごるぞ、二人ともテーブルに座れ。」


誘ってくれたので俺とエピックはハルカさんと向かい合う形になって四角いテーブルに座る。

するとウェイターが注文もしてないのに三人分の麦酒を持ってきた。酒場で酒を飲まない奴なんていないということなのだろう。断りづらくなってしまったのでありがたく奢ってもらうことにする。


「あの受付の女はメルクマールといってな、見ての通り朝から晩までずっと眠ってるやつなんだ。なんでも昔は凄腕の魔術師だったらしいんだが今は見る影もない。大魔法の代償に睡眠を求め続けているだの討伐した悪の女神に眠り続ける呪いをかけられて今も抵抗しているだの噂されてるが、まあ単に眠いだけだろう。」


話を聞きながらもらった麦酒をちびちびと飲む。あまり美味いものではない。もっともまだ酒の味もわからないままこの世界に来たのだから麦酒が口に合わないのは当然のことだが。


「さて、リュート。行く当てがないのだったら冒険者にでもなったらどうだ?冒険者カードがないといろいろ面倒だろう。」


「あ、私もいい機会ですし冒険者になっておこうと思います!私くらいの年になるとほとんどの人が冒険者やってますし。」


いきなりの提案に不意打ちを食らった。冒険者?俺が?


「え?ちょっと待ってくれ。冒険者ってそんな簡単なノリでなるものなのか?もっとこう、「俺はまだ見ぬ未知の世界を見たいんだ!」とか「冒険王に俺はなる!」みたいな覚悟でやるものじゃないのか?それに冒険者試験とかの対策もしなくちゃならないし。」


「リュートさんの世界では冒険者ってそんな感じなのですか!?」


また常識の違いで驚かれてしまった。異世界カルチャーショックだな。


じっくり話を聞いてみると想像していた冒険者のイメージとだいぶ違っていた。まず驚いたのはこの国の殆どの人間が冒険者になっていて冒険者カードを持っているそうだ。


そんなに多いのかと思ったが、無限に魔物が湧いてくるのだから国民全員が魔物を討伐でもしないと数で負けてしまうらしい。モンスターのPOP調整なんてゲームではないのだからしてくれないのだ。


だから必然的にみんな冒険者になって魔物を狩る。そのため冒険者カードはこの国では身分証明書のような扱いになっているらしい。門番にもそれを見せないと入国できないし宿屋などでも泊まることを拒否されたりする。


俺の元の世界でいう運転免許証のようなものと思っておけばいいだろう。普通の人ならみんな持っているものだから身分の証明にカードはなりうる。


それに冒険者登録されている者には国の戦争に赴かなければならない義務があるそうだ。国民の9割が冒険者なのだからほとんど強制兵役があるに等しい。世知辛いな。


もう一つ驚いたのが冒険者のランク制だ。冒険者にランク自体があることでは不思議ではないが、それによって受ける国からの恩恵がかなり違ってくるらしい。


例を挙げると、国の大臣になって政治を取りたいならば冒険者ランクはBランクは超えていないと国民投票が得られなかったり(そもそも立候補すらできない)、Sランク冒険者にでもなると多少の犯罪行為すら見逃されるらしい。ランクごとにまとめてみるとこんな感じだ。


〈Dランク〉‐誰でもまずはここから、弱い魔物を狩ったり高ランク冒険者についていったりして経験を積む。たくさんモンスターを狩って、目指せCランク!木の冒険者カードが貰える。


〈Cランク〉‐王国民の半分以上はこのランク、10年間ほどコツコツ魔物を狩りつづけてようやくなれるランクだ。このくらいのランクになってから自分の店を持ったり芸術の道に進んだりと自分の好きなことをやれる。銅の冒険者カードが貰える。


〈Bランク〉‐魔物との闘いの才能がある程度あったり、政界進出を目指したりしている者がなるランク。かなり名誉なことなので酒の席や息子や孫に自慢できるレベル。大量の魔物や危険な魔物を何度も狩った者がなれる。たまに王国軍へのスカウトが来たりもする。銀の冒険者カードが貰える。


〈Aランク〉‐国民のほとんどに知られていて、その名が他国まで届くレベルの冒険者ランク。国の公的機関などが無料で使用できたりとかなりの恩恵が国から与えられる。国家重大危険認定された魔物を倒したり、ダンジョンを踏破し奇跡の力をもたらす神遺物ゴッド・オーパーツを手に入れた真の冒険者の称号。金の冒険者カードが貰える。


〈Sランク〉‐百年に一人現れるかどうかという最高の冒険者ランク。国の特記戦力のひとつでありこのランクの冒険者を何人国に抱えているかでおおよその戦力が分かると言われているほど。人知を超えた魔術や神の技としかいう他ない技術を持つ冒険者が選ばれるランク。白銀の冒険者カードが貰える。




長々と冒険者についての講義を受けたが何はともあれ冒険者になってみるのがここでは最善の選択だろう。


「俺、なってみます。冒険者に。」


こうして俺こと矢車龍斗は晴れて冒険者へとなった。



最近戦闘をしてないような気がするのでここらで主人公の能力まとめです。


名前:矢車龍斗

年齢:17

所持スキル

【水魔法スキル】

〈治癒‐ヒーリング〉対象の細胞を活性化させることで傷口をふさぐ。体力や魔力は回復しない。


〈激流切断‐フルイドスラッシャー〉激しく回転する円状の水を手のひらの間に発生させる。回転力を維持したまま対象に向けて発射することもできる。


〈粘性‐スライミ―〉粘々としたスライムめいた液体を対象に向けて発射する。


〈潔癖‐クリーン〉対象の汚れなどを落とし清潔な状態にする。


〈濃霧‐ディープミスト〉ステルス効果のある濃霧を周囲に放出する。視覚系スキル妨害の効果もある。


〈放水‐スプラッシュ〉珠玉の指輪から大量の水を放出する。特別な効果はない。


【非公開スキル】

〈超越者‐エクストリーム〉???????




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