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第5話 道中‐王都へ

ドサリとモンスターは倒れゆく。それと同時に疲れと安堵から俺もひざを地面につけ、ふぅと一息ついた。

爪で切り裂かれた胸の傷口は痛むが、とにかく無事に勝利することができて何よりだ。


そう思っていた矢先に水の珠玉が反応してステータスが開かれる。

ああ、モンスターのスキルの吸収が出来るんだった。新しく得た力の情報が頭の中に流れ込む。


【水魔法スキル】

ー〈濃霧‐ディープミスト〉

ーー使用者たちへのステルス効果と視覚系スキルの阻害効果をもたらす霧を発生させる


ー〈激流切断‐フルイドスラッシャー〉

ーー激しく回転し敵を切り裂く水流を生み出す


身体(フィジカル)スキル】

ー〈膂力強化〉

ー〈持久力強化〉


かなりスキルが増えたな、あの虎の霧の力も手に入れたみたいだし身体能力も上がったみたいだ。

やはり強いモンスターを吸収するとそれに見合った分のスキルがもらえるらしいな。


「リュートさん!大丈夫ですか?」


エピックが心配して駆け寄ってくれた。返事を返しながら水魔法の一つの〈治癒〉を自分にかけてみた。

胸の傷口が煙を立てて回復していく。あまり気持ちよくはない。


「本当にミスティックタイガーを一人で倒してしまうなんて!やっぱり天臨さまはすごいです!」


エピックが褒めてくれるが俺の力だけではない、彼女が一緒に戦ってくれたからだ。

それとなく訂正してお礼を言おうとしたところに唐突に横やりがはいった。


人間が1人こちらに向かって走って近づいてきたのだ。

徒歩だというのに馬に乗っているかのように速い走りだった、風魔法を使って加速しているのだろう。


女性は茶色の長い髪をポニーテールで後ろにまとめていて、鋭い目をしている。腰に下げた刀からもわかる、彼女は闘いに慣れている人だ。


「君は冒険者か?この付近に土地のモンスターの強さの基準を大きく上回るモンスターが出没しているんだ。一般の冒険者であればなすすべなく食われてしまうだろう。半端な勇気で死ぬよりも今は逃げ…」


彼女の言葉は途中で千切れた。地面に横たわるそれは自分たちが今まさに話題にしていたミスティックタイガーそのものであった。

それだけでなく追っていたものがすでに無残な死体となっていた姿がようやく目に入って理解したからだ。


「これ…は…?」


困惑しながら彼女は質問を投げかける。

目の前の光景にリアリティがなく、自分の見ている景色が本当なのかどうか不安になっているような表情も含んだ声だ。


「あー、俺たちが倒しました、この霧を出してくる虎」


隠し立てするようなことでもないし、そもそも隠しようがないので素直に答えた。

出会ってから戦うまでを大ざっぱに説明してみたが、それでもまだ疑問は晴れないようだ。


「にわかには信じられないが、死体を見せられれば納得するしかないな。

なんにせよ協力感謝する。こいつを討伐するクエストの報酬は君たちに渡そう。」


丁寧に感謝を述べてくれた、真面目な人なのだろう。


「自己紹介が遅れたな。私はハルカ、王都にて冒険者をする者だ。」


ハルカさんが名を名乗ってくれたのでこちらも名前を返す。

すると彼女が懐から銀色の板のようなものを出してきた、名刺だろうか。


「B級冒険者の方なのですね!格好いい!」


「ああ、まだ日は浅いがな。」


どうやらハルカさんの出したカードは冒険者であることを示すカードのようだ。

カードには文字のようなものが印字されているが、読めない。いつか勉強せねばならないだろう。


「さて、君たちは王都へと向かうのだろう。私も同行しよう、ギルドに戻って報酬を君たちにも渡さなければならないからな。」


言いながら彼女は取り出した小刀でミスティックタイガーの皮をはいでゆく。手慣れた手つきだ。

一緒に剥いだ皮を風呂敷に詰める作業を手伝った。

それが終わると立ち上がり共に道をたどり王都へと向かう。


「返り血でずいぶん服が汚れてしまっているな。〈潔癖―クリーン〉でもかけてやる。

呪いの効果がつく血液を持つモンスターもいるから返り血の処理は今度から怠るな。」


彼女が血に濡れた俺のシャツに手をかざすとこびりついていたモンスターの血がかさぶたのようにはがれていった。戦うための魔法ではなくこんな便利なものもあるのか。


お礼を返すと、唐突に頭の中でスイッチが入るような感覚がした。


【水魔法スキル】

~新スキル解放~

ー〈潔癖―クリーン〉

ーー物に付着した汚れを落とす


新しいスキルの獲得か、こうやって自分に魔法をかけられた時にも使える魔法は増えるのか。

使える手札が増えるのはいいことだ。


頭の中に意識を飛ばしていると、隣でエピックとハルカさんが話していた。

話の内容に耳を側立てているとエピックが俺のことについて話してしまっていた。


俺の出自は黙っておこうと思ったが(どう考えても怪しすぎる話なので)口止めを忘れてしまった。

なんとなく俺の事を話すエピックは誇らしげだった。


「だから、リュートさんは天臨の魔法使い様なんですよ!」


「ハハハ!そうか、天臨か。まあ王都は法国のように入国が厳しいわけじゃない。どっから来たやつだって問題ないさ。」


どうやらハルカさんは俺の事を色々やらかした奴か何かだと思ってしまっているらしい。

まあ空から教会の天井を突き破って落ちてきた男なんていう話を信じた方が不気味だ。

元より住所も生まれもこの世界ではないのだから結果オーライといったところだろう。


軽くあしらわれたように感じたエピックが反論してくれていたり俺がそれをなだめたりしている間に、王都の街へと到着した。


王都が俺の前に立ちはだかっていた。



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