完成版!
魔法を集めて転送をすることになった。
ただ攻撃といっても時間差があると上手くつなげられないかもしれないので、
「俺が号令をかけるので、3、2、1の順で魔法を用意していただけますか」
「「「分かったわ」」」
ルナとユキ、フィルロッテがそう答えた。
ちなみにミネルヴァは応援する係らしい。
魔族を攻撃できない制約のためこのような状況になっている。
そして各々が……俺でも感じ取れるくらい、物騒な気配を醸し出している。
本気で“殺る”気のようだ。
俺の背に冷や汗が垂れるも、それは努めて出さないようにして、
「3、2、1……今だ!」
それと同時に、
「“紅蓮の輪舞”」
「“悪逆の凍土”」
「“人知無き雷”」
次々と魔法が放出されるもいずこかに消えていく。
どんな魔法なのだろうと思っていると、遠くの方……正確には、戦場の方で雷やら炎やら氷の柱やらが吹き荒れているのが、目で見える。
遠いのに。
どんな威力だったのかすごく気になったが、すっきりしたような女性陣を見ていて俺はそれ以上怖くて聞けなかった。
そこで偉そうな人がベランダに急いで出て、大きく手を振る。そして、
「今ので魔族だけを攻撃できたようです。また能力値が分かるので攻撃しやすいとのこと。そして、勇者ライたちも敵を倒すのにこの剣は使いやすいといった話をしています。この調子でよろしくお願いします、だそうです!」
「分かりました。皆、すぐに続きはお願いできそうか?」
「「「もちろんです」」」
元気よく答えた三人に俺も何かすべきか考えたが、転送に集中するべきとルナに諭されて俺は転送に集中することに。
なんだか地味だなと思いながら俺はそれから二回ほど、魔法を転送する。
これでどれくらい敵を削れただろうか?
そう思っていると再びベランダに出てきた偉い人が焦ったように手を振り、
「弱めの魔王軍は今の魔法で大量に倒されたようなのですが、一体、凄く強い魔族が現れたらしく、勇者たちが苦戦しています!」
そう俺は聞いたのだった。
一体危険な魔族が現れて苦戦しているらしい。
状況はどうなっているのだろうか。
「……近くまで行って接続は危険だし……遠距離を見れればいいんだ。そうか、光の屈折を利用して遠方の光景を見ればよかったんだ」
いまさらながら俺は気づいた。
いざ魔法があってもどう使おうかとなると気付かないものである。
早速、遠方の光景を目の前に映し出すように特殊能力を使ってみる。
現れたのは、四角い窓のようなものに先程の勇者たちや疲弊した人、そして……黒い怪獣のような勇者たちよりも身長が三倍はあるかのような生物がいる。
赤くぎょろぎょろとした目が体に幾つもついていて、一つは勇者を、もう一人はその仲間達、もう一つは周りの状況といったようにそれぞれの行動を見つめているらしかった。
その凄惨な光景と恐るべき敵の姿に俺は凍り付いた。
けれどすぐのそれに向かって、俺の渡した剣で立ち向かっていく勇者たちの姿が見える。
そこそこに切り傷は与えているようだが、決定打にはならない。
俺にも何かできることはないか。
敵はおそらくはこれ一体。
だったら目標が一つなら、精度よく、俺の魔法でも転送して攻撃が出来るのではないか?
だが、下手に攻撃をして戦っている彼らを巻き添えにしてしまってはどうにもならない。
どうする……俺はそう考えているとそこでミネルヴァが、
「ジングウジ、ごめんなさいね。思考を読んでしまったわ。……意外に真面目なのね」
「……」
「でもさっき教えた魔法があるでしょう? それなら……戦っている彼らにすらも恩恵を与える魔法」
「そう、なのですか?」
「ええ。……あまり私が介入するのはよろしくないから、ここまでしか言えないけれど、後はジングウジにお願いするわ」
ミネルヴァにそう言われて俺は、その魔法を使うことにする。
使いたいと願うと、体から魔力がほんの少しちりっと減ったのを感じる。
ちくっと、小さなとげが刺さったような変な感覚。
今まででは全くなかったそれを感じながら、脳内で再び図形のようなものがやけに複雑に絡みついて一瞬浮かぶが、ここでゆっくりそれを見ているわけにはいかない。
次に転送するよう特殊能力を使う。
「“双極の刃”」
俺は呟いた。
それは転送されて発動するはずだったが、遠距離を見るその画像では、その魔族である黒い怪物の頭上に光の球が一つ落ちてくる。
一見弱々しいそれは、次の瞬間大きな光の柱になっていた。
轟音が聞こえる。
ここから遠めでも分かるような大きな光の柱が空高く伸びて破裂音を立てて消える。
一瞬の出来事だった。
あの黒い怪物が跡形もなく消滅している。
何が起きたと思っている内に今度は金色と小さな光の粒が降り注ぎ、あの線上にいる人達に降り注ぐ。
見ていると、その光が触れた場所から傷口のようなものが治っている。
回復効果のある魔法であるらしい。
攻撃と回復、両方の効果のある魔法であったようだ。
そう思っているとそこでフィルロッテは、
「こ、これは、まさか古代魔法王国シアルの強力な魔法使いたち数百人が命懸けで引き起こしたという魔法の……完成版!」
「え? そうなのですか?」
「起こった事象が一致している。お主、なんともないのか?」
「……特に変化はありません」
「……これだから異世界人は」
そう俺はフィルロッテに言われてしまったのだった。
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