嗤った
町を消し去れる力があるらしい。
となるとあの魔族は、
「倒さないとまずい相手ですか?」
「そうね。町を破壊しに来るのは確実で、助けを呼ぶという手もあるけれど……その前にあのユキがどうなるか」
ミネルヴァの言葉にあそこで捕まっているユキがこれからどうなるのかといった話が出る。
そういえばああいった魔族は、
「見つかったら、目撃者は消せ、になるのですか?」
「場合によるわ。何かやろうしているのを目撃したら……」
「俺たちが街に戻って助けを呼ぶ間に殺されるかもしれないですね」
そこまで言ってから俺は考える。
現状では俺はまだ魔法初心者ではあるが、多少の攻撃の威力調節はできる。
いざとなったら戦えばいい。ただ、
「女神パワーで俺たちの命の保証は、どこまでできますか?」
「死にそうになったら転移して治療、くらいまでなら多分出来るわ」
「なるほど……そして、もしユキをあそこからここ周辺に転移させたら、あの魔族たちはどんな行動をとるか」
まずはユキの保護だが、あそこから連れてくるなら俺の特殊能力は最適だ。
だがユキがいなくなったとすると、と俺が考えているというとルナが蒼い顔で、
「目撃者が町に着く前に倒せ、みたいな展開にはなりかねませんか」
「俺もそう思う。となるとユキをこちら側に連れてきて戦闘になるが……」
「……逃げると町の人たちが全滅、になるんですね。そして私たちの命の保証は……」
そこでルナがミネルヴァの方を見る。
ミネルヴァは片眼をつむり、
「そこだけは安心して。私が手を出しても大丈夫な範囲だわ」
「……どうする? ルナ、戦うか?」
それにルナが蒼い顔をしながら頷く。
と、そこで魔族側に動きがあった。
ユキが何かを言われたらしく悲鳴を上げた。
同時に魔族の一人が手を挙げて、その腕には氷のような剣のようなものが生まれ……嫌な予感がした俺は即座に念じた。と、
「ぎゃあああああああ……あれ? 皆さんどうしてここに?」
悲鳴を上げていたユキが俺たちに気づいて不思議そうに周りを見回してから、見える範囲に魔族がいるのに気づいて再び凍り付く。
ガタガタ震えるユキ。
だが魔族たちは、ユキがいなくなり不思議そうな顔をしていたが、ユキのあげていた悲鳴の声が聞こえたからだろう。
こちらの存在に気づかれてしまった。
そこで魔族の一人がこちらに手をかざして、
「! 危ない! “風の壁”」
ルナが即座に何かをした。
同時に突風が吹き荒れる。
それこそ周りの木が一瞬にして倒れる程度のものだ。
けれどルナの魔法で俺たちはどうにかなったらしい。
さすがは公爵令嬢? ということなのだろうか?
だが見通しのよくなった場所に立つ俺たちは、ここにいる魔族たちにも俺たちがよく見える、ということだ。
必然的に魔族との戦闘は避けられないものらしい。
スローライフ予定が突然こんな災難が降ってくるものだな、と思っているとそこで……魔族の一人が嗤った。
「おや、女神様がこんな場所で人間を連れて……どうされたのですか?」
そう問いかけてきたのだった。
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