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我々の好物である

 そういった話を聞きながら中に入る。

 掃除の行き届いているきれいな屋敷だった。

 窓ガラスには埃が積もっておらず、よく掃除がされているのが分かる。


 そう思って俺が見ていると幽霊の執事のセバスチャンが、


「幽霊になるとやりたいことを見つけるのも大変で、こういった掃除も生きがいなのです」

「そ、そうですか」

「やることが何もないというのはきついですね。ですがここにいる分には何かこうかすることがありますから。それに庭では、我々の好物である“お化けの実”がありますしね」

「“お化けの実”ですか?」

「ええ、幽霊になると特に美味しく感じられる果実です。天然物は特に美味しいのですが、そういった場所は“怨霊”と呼ばれる特に危険な幽霊が一人占めしていることが多く、手に入らないんですよ」

「そうなのか。その“お化けの実”は俺達でも食べられるのか?」

「食べられますがそれほどは美味しくないですね。ただ……」


 そこで一度幽霊執事のセバスチャンは一度言葉を切ってから、


「まあ、ごく稀にね。自分が死んだことを“忘れて”しまった幽霊がいるのですが、その実を食べさせて自覚を促すといった方法にも使えますね。……挑戦しますか?」

「いえ、結構です」


 今の話を聞いて食べるのは嫌になったので俺はそう答えた。

 だが“お化けの実”が好物というのは重要な情報だ。

 その好物というものはゲーム内では後々必要になることが多い。


 後でどんなものなのか見ておくのは良いかもしれない。

 そう思っているとそこで、ある場所に案内される。

 そこは調理場の様だった。


 コンロのようなものやオーブンのようなもの、冷蔵庫のようなものまで一通りそろっている。

 しかもそこそこ大人数で食事が出来そうな机と椅子までそろっていて、なかなかいい。

 これからここで食事を作ってもいいかもしれない、などと俺が思っているとそこで、


「キッチンは一通り手入れとメンテナンスはしております。そういった事が好きな幽霊がおりますので、すぐに使えますよ。ただ材料は買ってこないといけませんが……家庭菜園や果樹もありますので、それを使っていただいてもかまいません。そういった事が好きな幽霊がいますので」

「そうですか。……というか今まで逃げて行った方々は使わなかったのですか?」

「説明する前に逃げて行ってしまいましてね。仕方がないので、『どうなっても知りませんよ……』と恨めしく思いながら告げたら、大抵次の日には逃げて行ってしまうのです」


 酷い話ですよというセバスチャンだが、普通の人間から見ると脅しに聞こえるなと思った。

 だがそれは俺は言わない。

 また、ルナが嬉しそうにそれらの調理場を見ているので、使いたいのかもしれない。


「ルナ、料理がしたいのか?」

「はい! 料理やお菓子作りって楽しいですよね。つい作りすぎちゃうんですが」

「そうなのか……そのうち食べさせてほしいな」

「! は、はい、頑張ります!」


 元気よく答えたルナが嬉しそうにほほ笑んだのだった。


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