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ただの駒ヶ根玉職人でも異世界は救えるか?  作者: 駒雅 嶺太郎
~極東旅行編~
8/24

さらばセカンドシティ!鮮血の打ち上げ花火の巻

 悲しき町。

 一行は彼らの呪縛を解くことができるのか。

「何だか……活気の無い町だな」


 (こま)()()(だま)を町のはずれに着陸させ、四人は情報収集をしていた。


「駄目ね。役に立ちそうな情報は0(ゼロ)だわ」

「コッチモ シュウカク、ナシ ダゼ」

「……と言うより、この町おかしくないですか? どうも暗い顔をした方ばかりです」


 そうなのだ。

 今まで賑やかな城下町に居たのもあるが、それにしてもここの空気は不穏だ。


「仕方ないな。必要な物資だけ買ったら、もう次の町へ……」

「す、すみません……旅の方ですか?」

「ん?」


 振り返るが、誰も居ない。

 いや、背が低く視界に入らなかったのだ。

 声の主は10歳にも達していないであろう、幼い少女だった。


「お嬢ちゃん、私たちに何か用かしら?」

「……お母さんからは、言っちゃダメって言われてるんだけど……」


 どうやら訳有りらしい。いや、これはまさか?


「聞こう。ひょっとすると、大人達は王様(オッサン)の情報操作で口止めされているのかも知れない」


 あのオッサン、大した手掛かりでは無いから等と言って、細かい事は何も教えてくれなかったのだ。許せん。


「あのね、実は……」






「「「「呪い?」」」」

「はい……」


 どうやらこの町は攻めてきた魔物によって、『水不足の呪い』をかけられたと言うのだ。


「住人が皆深刻そうな顔をしていたのは、口止めじゃなくて、水不足が原因だったのね」

「あれ? それならドロシーの魔法で、水が出せるじゃないか。解決しないか?」

「マホウノミズ、 ソノウチ キエル。ムリ ナンダゼ」

「魔法はアキラが思っている程、万能なものじゃないのよ……」

「そうなのか……」


 あんな異常な能力でも、無理なものは無理、か。


「でもアキラさんなら、何とか出来るのでは!?」

「え、ほんとに!?」


 幼女が希望に満ちた目でこちらを見てくる。心苦しい……。


「残念だが、出来るわけがない。確かに今までは運が良かったけど、駒ヶ根玉は本来ただの民芸品だ」

「そ、そうなんだ……」


 そう。今までは偶然に助けられ、その場に適した使い方が出来ただけだ。

 現代日本の知識を(もっ)てしても、水不足の解消は容易ではない。


「可哀想に……」

「ソウイエバ、サッキ ミタ イドモ カレテタ ゼ」

「そうか。俺達に出来る事は、もう……!?」


 井戸!? 井戸だって!?


「ドロシー! 井戸があったのか!?」

「アッタゼ、アキラサン」

「ナイスだ! 案内してくれ!」

「流石アキラ、また何か思い付いたのね!」


 5人が向かった先。

 随分と使われていないのだろう、寂しい枯れ井戸が確かにあった。


「この井戸、ずっと前にダメになっちゃったよ! こんなのどうするの?」

「安心してください。アキラさんは、いつも私達には想像のつかない方法でピンチを切り抜けるんです」

「……よし! 行けそうだ!」


 井戸の(かたわ)らに、壊れた桶が打ち捨てられている。拾い上げ、そして……。


「エリー!」

「了解!」


 エリーの炎が、井戸を破壊した!


「い、井戸になにするの!?」

「驚かせてゴメンね、これが欲しかっただけなんだ」


 それは、井戸を構成していた()。サイズも丁度良い。


「石は駒ヶ根玉の素材に最適……だったわよね?」

「あぁ。流石だなエリー、もうすっかり俺の助手だぜ」


 初めて会った時からは考えられない成長だ。

 ひょっとすると、彼女には職人の才能があるのかも知れないな。


「オラッ!」


 石を桶に叩きつけ、完全に破壊する。桶は数十個の木片となった。


「木は水に浮く。石は水に沈む」


 石の上に、均等に木片を並べる。


「単純だが、この違いを利用するんだ」


 慎重に……! 慎重に!

 木片の間隔が狂ったら、そこで全てが終わる!


「……! よし! ドロシー、水を数滴垂らしてくれ!」

「ハイ、アキラサン」


 並んだ木片に、水が染み込んでいく!!


「……! 完成だ!」

「す、すごい! お兄ちゃん達、いったい!?」

「何度見ても……凄いわね」

「アキラサン ハ テンサイ ダゼ」

「出来たんですね……! 駒ヶ根玉(・・・・)が!!」


 光沢のある玉。日本人の伝統と技術の結晶!


「あぁ。この駒ヶ根玉なら……!!」

「!!」


 完成した駒ヶ根玉を、勢いよく井戸の底へと投げつける。


「何も……起こらない?」

「いや、時間がかかっているんだ。地下水脈(・・・・)に辿り着くまでね」

「ジメンヲ ホリススンデル ノカ!」


 全ては順調だ。音が……聞こえる。


「な、なに!? この音!」

「怖がらなくて大丈夫よ。これは水が湧き上がってくる音」

「ああ、玉が地下水脈に達した証拠……!?」


 おかしい。この音の感じ……何か!!


「ハッ! まさか!? みんな、逃げろオォ!!」

「な、なに!?」

「!? そんなっ!!」

「イッタイ、ナニガ!?」

「アキラさん!?」


 幼女を抱き抱え、全力で走る。


「駒ヶ根玉だっ! 乗り込め!!」


 町のはずれに()めてあった駒ヶ根玉に何とか滑り込む5人。

 すぐさまエンジンをかけ、東に向けて発進した。


「あ、あれは……」

「……石油(・・)だ」


 セカンドシティ全域に、黒い液体が降り注いでいた。

 その根源(こんげん)はもちろん、あの古井戸だ。


「私の、町が……!」

「!? ダメだッ!! 見るなッ!!!」


 次の瞬間!! 町は爆音と共に!!

 巨大な炎に包まれた!!


「!!?!? お母さああああああん!!!」

「……そんな……っ!」

「これが……呪いの正体だったんだ」


 セカンドシティは跡形もなく吹き飛んだ。

 これが魔物の呪いの真の効果だったのだろうか。

 きっとそうなのだ。そうに違いない。


「あぁ……」

「!」


 気を失ったようだ。

 子供にはこんな光景、耐えられる(はず)もない。


「……魔王!! 絶対に!!! 許さないからな!!!」


 (なお)も巨大な火柱が立ち上るセカンドシティ。俺達はこの光景を一生忘れないだろう。


「クソオオォォッ!!!」


 悲惨な現実を胸に刻んだ一行は、思いを新たに、次の町を目指すのであった……。

 できませんでした。

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