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ただの駒ヶ根玉職人でも異世界は救えるか?  作者: 駒雅 嶺太郎
最終章 ~そして駒ヶ根へ~
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無の世界の死闘! ~鈍く輝く希望を繋げ~

 いつになく真面目。

「――っていう訳で、最近の(こま)()()(だま)はそれなりのプロテクトが義務付けられてるんだ」

「なるほど……、それはさぞかし混乱があったでしょうね」


 最近、俺はエリーに駒ヶ根玉の基礎知識をレクチャーしている。

 今日は数年前に見つかった、玉の脆弱性についての話だった。

 かなり専門的な話なのだが、やはりエリーは頭が良い。あっという間に吸収していく。

 しかし……。


「……駄目だわ、どうしても形にならない」

「作り方は完璧なんだけどな……この世界の人間には作れないのか……?」


 自分で言っておいて何だが、そんな事はあり得ない。

 石を投げれば落下するように、物が燃えれば灰になるように、設計が正しければ必ず出来るはずなのだ。

 駒ヶ根玉は魔法のような不確定な物ではないからだ。もしこの世界の物理法則が違っているならば、俺にも玉が作れなくなっていなければおかしい。


「何なんだ……、これだけが分からない。重要な事のような気がするのに……」

「アキラサン、ヒルメシ タベルゼ」

「……あ、あぁ。エリー、俺達も行こうか」

「えぇ」


 ドロシー達が呼んでいる。今日の昼飯もどうせパンだろう。でも、トッピングは何にしよう……等と考えていた時だった。


 世界が、暗転した。


「!? 何だっ!?」

「み、皆は!? アキラ! 皆が居ないわ!」

「それは違う……。居なくなったのは、貴様ら二人だ」

「!?」


 いつからそこに立っていたのだろう。

 真っ暗な空間の中、男は燃えるような赤い髪を逆立て、鬼の如く鋭い眼光をこちらへと向けている。

 上半身には何も纏っておらず、その膨れ上がった筋肉は明らかに戦士。

 下半身にはフリルのついた漆黒のスカート。そのカラーリングは明らかに狂人。


「貴様がルシファーを……」


 憎悪に満ちた眼差し。

 容易に察しがついた。今の状況、男の正体、そしてその目的。


「お前は魔王軍の奴で……、ルシファーの仇討ちをしに来たって訳か。そしてこの空間」

「そうだ……ここは俺が作った空間。貴様らは今、この世の全てから(・・・・・・・・)『隔離』されている」


 ――不味いな。

 この世の全てから。それはドロシー達の援護を受けられない、なんて生易しい制約ではない。


「貴様はもう、新たに玉を作ることが出来ない」

「アキラ! こいつ、知っている(・・・・・)わ! 明らかに駒ヶ根玉の性質を知った上で攻めてきている!!」

「あぁ……、この前の予知野郎と一緒だ。だから想定内ではあるんだが……確かにこれはヤバイ」


 世界との隔絶。即ち、駒ヶ根玉の材料供給(・・・・)の断絶。

 計画的だ。いよいよ本気で殺しに来てるってか……!


「エリー、治癒用の駒ヶ根玉だ。念のため持っててくれ」

「ええ、分かっ……! なるほど、理解したわ」


 エリーに一粒の玉を渡しておく。

 これを飲めば、前のように腕が切断されていてもなんとかなる。

 出来ればそんな事態は避けたいが、贅沢を言って勝てる相手でもなさそうだ。


「……俺の名はサジタリウス! 友を殺したお前は悪だ! いざ勝負!」

「俺は小竹田 明! 俺に歯向かう奴は例外無く悪だ! 来い、薄汚い生ゴミが!」


 二人は同時に距離を詰める。

 ――と見せかけ、急停止し二発の玉を投擲。

 読まれていたらしく、ギリギリのところで避けられる。

 

「っ! らぁっ!」

「……!」


 投擲自体がフェイントだ。

 飛び道具主体と思わせる事で、油断を誘い殴り倒す作戦だったのだが……。


これ(近接武器)も知ってたか。やっぱりお前ら、偵察要員が居るな?」

「……強がるな。分かっただろう、勝てないと」


 今度はサジタリウスが攻める。


「うぉっ……!」


 パワーこそ凄まじいが、幸運なことに速度が今一つ。

 人間の俺でも何とか見える。

 エリーは息を飲んで見守っている。彼女の炎では、俺を巻き込んでしまうからだ。


「……おらっ!」

「そいつを待ってた」

「ア……アキラッ!!」


 最後の玉を放った……のだが……。


「……っ! ぐはっ!」

「アキラアアァッ!!」


 ――腹が……何だ、これ……


 (おびただ)しい量の血が流れる。玉を投げる瞬間、カウンターを受けたのだ。

 腹部に大きな穴を開けられ倒れたアキラに、エリーが駆け寄った。


「アキラッ! 治癒用の駒ヶ根玉よっ!」

「無駄だ……そいつは今、呼吸が止まっている」

「……その程度、問題無いわ! アキラの玉なら……」

「何だ、知らないのか?」


 そう、サジタリウスは……駒ヶ根玉の性質を知っているのだ。


「駒ヶ根玉は所有者の呼吸(・・・・・・)が止まっている間、機能を停止する。今貴様が飲ませたそれは……ただの(から)だ」

「…………そん……なっ……」

「何をしている? 次は貴様だ」

「くっ……!」


 アキラを置いて逃げるエリー。

 追うサジタリウス。地面に横たわるアキラには見向きもせず、エリーへの追撃を開始する。


「どうした! 逃げるのか!」

「……っ!」


 エリーも魔法の炎で応戦するも、当たらない。

 次第に距離は詰められ、そして……エリーは、サジタリウスの拳の間合いへと入ってしまった。


「よし、終わりだ」

「ええ、終わりね」

「!? がっ……!!」


 何が起こったのか分からず、自分の腹を見るサジタリウス。

 そこには背中から貫通した、何者かの右腕が生えていた。


「バカな……確かに! 貴様の呼吸はっ!」


 そこに立っていたのは……死んだ筈の男。


「痛かったぜ腐れ外道が……。絶対に!! 許さんっ!!!」


 腹を貫き、間違いなく殺した筈の、あの男!


「アキラ……!」


「確かにあの状況、俺の(・・)駒ヶ根玉には治癒機能が無かった」

「だとしたら……何故っ!」

アカウント譲渡(・・・・・・・)よ。あの時、あの玉の所有者は……私だったッ!」

「譲渡だとっ!? 有り得ん! そんな簡単に出来る事ではない筈!」

「数年前まではな。だがここ最近、日本じゃ色々あったんだ。セキュリティやアカウント関連の技術は飛躍的に向上した!」


「……ア、キ…………!」

「うるせぇっ!!!」

「ぐっ……はぁっ!!」

「魔物ごときが……神聖なる俺の名を呼ぶんじゃねぇ」

「アキラ……やったわね!」

「……おっ?」


 二人を囲っていた空間が消え去った。サジタリウスが息絶えたらしい。




「アキラー! 無事だった!」

「ヨカッタゼ、キュウニ キエテ ナニゴトカト」

「本当に……ご無事で何よりです!」

「悪いな、心配かけて……」


 そうだ。まずは無事生き残った事を喜ぶべきなのだが……。


「…………お兄ちゃん、どうしたの」


 素直には、喜べそうにない。


「……分かったんだ」


 薄々勘付いてはいた。だが今回の事で……確信した。


「魔王の、正体が」






「魔王様の……正体なのです?」

「正体って……何よ」


 魔王城。ミヘッグはミシェルの千里眼によって、サジタリウスの敗北を知った。


「さぁ? それ以上言わないのです」

「魔王様って言ったらそりゃあ……いや、たいして私達も知らないわね」


 ミシェル達魔族はただの魔物と違い、魔王によって創られた(・・・・)生き物だった。

 しかし、カメルやサジタリウスといった一部の者を除き、その経緯は本人達も知らない。


「そんな事より、どうするのです? サジタリウスでも駄目だったのです!」

「ここに来るのも時間の問題、か。最悪その時は……」

「その時は……?」


「逃げる」

「……はぁ。その時は私も連れて行くのです」


 いよいよその瓦解が現実味を帯び始めた魔王城。

 果たして無事、悪は根絶されるのだろうか……。




「……許さねぇ…………!」



 まだまだダメですね、ガチバトルを書けるだけの力が無いのに無理をしてしまいました。ガチ、ってほどでもないけど。

 最終話まで頑張りますぞー

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