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ただの駒ヶ根玉職人でも異世界は救えるか?  作者: 駒雅 嶺太郎
~魔玉戦争編~
20/24

ある春の日のミステリー! ~そして誰もいなくなるか~

 今日も元気に……おや、不穏。

「……駄目だ、死んでる」

「一体……誰がこんな事を……」


 ()の遺体が、家主を失った(かや)()きの民家へと運ばれて行く。

 運んでいるのはミカとドロシー。二人とも既に慣れた手つきだ。

 何故なら、ここ数日で彼女らが運んだ遺体は……、これで5人目(・・・)だから。


「あと5人……、か」

「何故……! 何故こんな事に!」




 この日俺達が滞在していたのは、ある小さな村だった。

 その人口、わずか10人。主に川で魚を捕ったり、野性動物や魔物を狩って生活しているらしい。

 急な訪問であったにも関わらず、彼らは親切にもてなしてくれた。それが、こんな事になるなんて。


「犯人は……この5人の中の誰か、って事だな」

「そんな……あぁ……、アラン……!!」


 先程死亡が確認された男、アランの妻が泣き崩れる。

 最愛の夫の死。彼女の反応は本来ごく自然なものの筈だが、村人達の視線は冷ややかだった。

 彼女も、容疑者の1人なのだから。


「……いい加減にしやがれ!! 誰がこんな事してやがるんだ!!」

「……そう言うお前だって、この前アランと揉めてたよな?」

「!? てめぇ! 俺も妻と子供が殺されてんだぞ! 言って良い事と悪い事があんだろ!!」


 最初に殺されたのはこの村の村長だった。

 背後から頭を強く殴られ、即死。

 当然旅人の俺達が真っ先に疑われたが、その日ここへ来たばかりだった俺達には、動機が無い。

 偶然訪れた旅人に疑いの目を向けさせる。それが犯人の狙いだと説明し、なんとか疑いは晴れた。


「何にせよ……この村はもう仕舞いだよ。子供は居ねえ、女は1人」

「皆さん、まずは落ち着きましょう。絶対に一人で行動してはいけません」

「そうだ……、あんたらがこの村へ残ってくれよ。6人も居るんだから」

「気の毒だけど、私達にはまだする事があるの。犯人を捕まえたら、また東へ向かうわ」


 1人、また1人と殺された。

 俺達からは犠牲者が出ていない事でまた疑われたが、村人に強い恨みを持った怨恨殺人である証拠だ、と言いまた難を逃れた。


「とにかく、今日はもう遅い。今夜は常に3人が起きて見張りをしてください。」


 結論から言うと犯人は俺なのだが、そんな事はどうでも良い。

 村人3人が見張りをし、夜は更けていった……。





「ば、馬鹿な……!」

3人共(・・・)、死んでいる!!」


 翌朝、見張り3人の死体が発見された。

 3人もの人間が声を上げる間も無く殺されたのだ。

 明らかに常人の仕業では無いのだが……彼らはもう、そこまで頭が回らなかったらしい。


「しらばっくれやがって……! つまりもう、お前しか残ってねぇじゃねえか!!」

「こっちの台詞だ!! アキラさん、こいつが犯人だったんですよ!!」

「クソッ! 一体どっちが犯人なんだ!?」

「……こうなったら!」

「!?」


 男の1人が、護身用に持っていた小刀を取り出す。

 この男……殺る気だ。


「殺される前に!! 殺してやる!!」

「やっぱりお前が犯人だったのか!! やめろっ!!」

「や、やめて下さいっ!」

「うおおっ!!」


 男達が激しく揉み合う。

 とばっちりを受けては御免だ。少し離れた場所で見学させてもらう。


 地面を転げ回る2人だったが、数秒の後、一人の呻き声と共にその動きが静かになった。


 生き残ったのは……。


「ち、違う! 見てただろアキラさん! これは正当防衛だっ!」

「いや……、どんな経緯であれ、あんたはその人を刺した。殺人犯は(・・・・)……あんただ(・・・・)


「……ま、まさか……アキラ、さ……」

「黙れ魔物め!! 駒ヶ根メリケンパンチ!!!」

「ぐはぁっ!!!」


「………………」




「終わったあああぁぁ!」


「良かったわね。アキラ、ずっとやりたがってたもの」

「…………楽しかったね」

「あぁ! 昔から憧れてたんだよ! 『ミステリーごっこ』!」


 そうなのだ。丁度良い人数の村を見つけた時、これは天の導きだと確信した。


「あの人達! 良かったの!? 殺しちゃって!」

「アキラさんに間違いはありませんよ、彼らは魔物だったのです」

「あぁ、初日に出された川魚に()があった。咽に刺して殺そうとしていたに違いないよ。奴等は魔物だったんだ」

「サスガハ アキラサン ダゼ」

「よく骨を見破ったわね……、アキラが無事で良かったわ」

「よーし! 魔物の集落も潰したし、冒険再開だ!」

「「「「「おー!」」」」」


 今日も魔物に正義の鉄槌を下した一行。

 魔王の最期も、近いかも知れない……。








「……ミヘッグ、終わったのです」

「結局全滅?」

「そうなのです、予想通りだったのです」


 魔王城で話すいつもの2人。

 『千里眼』のミシェルに、『時空穴』のミヘッグ。当然今回彼女達は、何も手を出していない。


「で、今回の動機(・・)は?」

魚に骨が入っていた(・・・・・・・・・)、らしいのです」

「…………」


 心の荒んだ魔物達には、アキラの慎重な性格も、ただの異常者に見えてしまうらしい。


「それでこいつらは魔物だ! と?」

「……そうなのです。あの様子だと、今回も全く疑いを持っていないのです」

「本気で何とかしないと……不味いわね」


「また誰か送り込むのです! あの悪魔達を倒せる魔族を!」

「待ちなさいって。何か作戦を立てないと、また犠牲が…… !!」

「ん? 何か思い付いたのです!?」


「ええ……。行けるわ! あいつなら勝てる!」

「あいつ?」




 悪の権化たる魔族の、卑劣な策略。

 果たしてアキラは、これを退けることが出来るのだろうか……。






「待ってろよ魔王!! その首へし折ってくれるッ!!」


 実はそろそろ終盤です。多分。

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