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ただの駒ヶ根玉職人でも異世界は救えるか?  作者: 駒雅 嶺太郎
~魔玉戦争編~
19/24

殺してでも生き残れ! ~四天王と4人の悪魔の巻~

 前回新しいオモチャを手に入れたので、アキラさん大喜びです。

「……失礼しましたー」

「あっ、どうだった?」


 数多の魔物達が住む、東の果ての魔王城。

 その一室の、一際(ひときわ)巨大な扉を開けて出てきたミシェルに、結果(・・)を尋ねるミヘッグ。

 しかし返ってきたのは、意外な答えだった。


「……『気にするな!』と言われたのです」

「……はぁ?」


 仲間の魔族を3人も殺され、その犯人一味が今もここに向かっている。その報告への返答が、「気にするな」。

 いくら彼が『魔王』と言えど、異常な言葉だ。


「あのさぁ……、あんた、ただでさえ説明下手なんだから、魔王様に正確に(・・・)伝わってないんじゃないの?」

「伝えたのです! それに魔王様は、既にあの()の事を知っていたのです……」

「それって例の、(こま)()()(だま)とか言うやつ? なんだって魔王様が?」


 駒ヶ根玉。「西の悪魔」アキラが所持する、幾多の魔物と魔物以外とを葬ってきた殺戮兵器……と、彼女らは認識している。

 ご存じの通り、本来は単なる日本の民芸品であるのだが、異世界の住人たる彼女らには知る由もない。


「そしてこうも言っていたのです。『元よりこの世界の人間に私は殺せないし、その男も絶対に私を殺すことは出来ない』と」

「はぁ~、回りくどい言い方……って、そうじゃないでしょ!」


 突然怒鳴り声をあげるミヘッグに驚き、ミシェルの小さな肩が跳ねる。


「な、何を突然怒ってるのです!?」

「魔王様が死なないのはそりゃ結構な事よ。でも、私達魔族が死なないとは言ってないじゃない!」

「はっ! そうなのです!」


 昨夜から連続している異常事態のため、ミシェルの頭は既に限界だったのだ。もっとも、元々頭の回転が早い方であるとは言えないが。


「魔王様が動かないと言うのなら……私が動くわ。自分の身は自分で守るのよ」

「それは駄目なのです! ミヘッグの能力は替えが利かないのです! もしお前まで殺られたら……」

「ば~か、私が直接戦う訳無いでしょ。ま、戦っても負ける気はしないけど」

「ほっ……でもそれじゃあ、また誰かを送り込むのです?」

「そゆこと。まぁ、まずは様子見がてら、あのアホ集団にでも行ってもらおうかね。」

「あー……アイツら(・・・・)なのです? 良いと思うのです、私もそんなに好きじゃないのです」


 アホ集団(・・・・)を探しにその場を後にするミヘッグ。一方、反対方向へ向かうミシェル。


「ちょっとあんた、何処行くのよ」

「え? もう疲れたから、部屋でお休みするのです」

「……あんたが()ないでどーすんのよ。次のための情報収集するのよ!」

「うげぇ~……ていうか次って、もうアイツらが負ける前提で話してるのです……」






 ――――どうも、たけのこ派のアキラです。


 自己紹介をしている場合ではない。俺達6人は、今日も今日とて東を目指していたのだが……。


「……四天王、だと?」

「如何にも!」


 どうにも頭のおかしい魔物に絡まれてしまったのだ。


「魔王軍の?」

「そうだ」


 エリー達は最低限の警戒はしているが……、どうやら俺一人で倒せると思っているらしく、やや遠巻きに見守っている。


「何故……、4人(・・)いるんだ?」

「四天王だからだ。」


 ちなみにミカとサーニャは昼寝を始めた。


「バカかお前ら! なんで四天王が4人揃って(・・・・・)来るんだって聞いてんだよ! 普通1人ずつだろ!」

「……はて? 何を言っているやら……」


 分かっている。確かにそんな決まりは無いし、この方が確実だ。だけど……だけど……!


「『この先ひょっとして、四天王とか出て来るのかな~』って寝る前に妄想してた俺のワクワクを返せよッ!!」

「だからこうして出て来たではないか……。どうやら頭がおかしいと言う噂は本当だったらしいな」


 人の夢を壊しておいてぬけぬけと、これだから魔物共は生かしておけん……んっ?


「おい貴様ら、誰の頭がおかしいだと? 誰がそんな根も葉も無い噂流しやがった!?」

「知る必要は無い」

「貴様は今から」

「死ぬのだからな」

「あっ……」


 最後の奴にも台詞残してやれよ可哀想に……。


「アキラー、手伝おうか?」

「いや、こいつらは俺がやる。何をしようが人の勝手だが、この俺を侮辱する事だけは! 万死に値する!!」


 魔物共が構える。いやなんで揃って待ちの構えなんだよ、数で勝ってんだから攻めて来いよ。


「ふふふ……。4人相手に勝てると思っているのか?」

「勝てるよ。相手が4人だってんなら……」


 3本の髪の毛を抜き、投擲用駒ヶ根玉に突き刺す!


「「「「俺が4人分になる」」」」

「バカな! 分身しただと!?」

「流石アキラ! 毛髪を利用して、駒ヶ根玉で自分の分身を作ったのね!」

「「「「さぁ……始めようか」」」」


 四天王と4人の俺がそれぞれ向かい合って立つ。

 緊張が走る。誰かが動けば即座に均衡は崩れ、凄惨な殺し合いが始まるであろう。


「数が増えようと、所詮は人間」

「我々魔族に」

「敵う筈がないのだ」

「……そっ、その通りだ」


 そいついじめられてるのか?


「……!! 死ねィッ!!」

「!!」


「「「「駒ヶ根メリケンパンチ!!!!」」」」

「「「「ぐばあああぁぁっっ!!!!」」」」


 その終演は呆気ないものだった。正義の正拳突きによって、悪しき魔物達は無事粉砕された……。


「流石はアキラさんです!」

「シテンノウ タイシタコト ナカッタナ」

「「「「なに、敵がバカで助かっただけだよ」」」」

「……ところでアキラ、その分身髪の毛(生物の一部)で作ってたけど、いつになったら消えるの?」

「「「「……あっ」」」」






「あっ」

「えっ?」

「4バカが死んだのです」

「ウッソ! もう!?」


 魔王城中庭。ミシェルの千里眼により、一連の戦いは監視されていた。


「4人に分身した男に、能力を使う間も無く殴り殺されたのです」

「なんで人間が分身するのよ……、新手の魔法?」

「駒ヶ根玉なのです」

「だから何なのよそれは……」


 予想外に早い決着に、流石のミヘッグも内心焦っていた。

 その一方で、予想通りという様子のミシェル。

 「何だかんだ言って、ミシェルの話は少なからず誇張されているだろう」。そう高を括っていたミヘッグだったが、自分の認識が甘かった事を知った。


「終わったから、さっさとそのどこでもホール閉じるのです。また奴等に見つかったら今度こそ……ひっ!?」

「こ、今度は何よ!?」

「……残った分身達と、殺し合いを始めたのです……」

「…………」




 生物の一部を素材にした駒ヶ根玉は持続時間が長い? だったら壊せば良い。至極自然な流れでそれは始まった。

 しかし玉達もまた、アキラである。この世の何よりも我が身が大事だ。当然鬼神の如く抵抗し、その死闘は一時間に及んだ。


「トメナクテ イイノカ?」

「分身が勝っちゃったら、どうするんです?」

「大丈夫よ、アキラが勝つわ。私は信じてる」

「ドノ アキラサン ダヨ」


「「「「うおおおぉぉっ!!」」」」


 分身達は忘れていた。駒ヶ根玉は所有者を傷付けられない事を。


「「「「お前が死ねやあああぁぁ!!」」」」




 ……いや、本体も忘れているようだった。


 投稿時間って、何時が良いんでしょう?

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