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ただの駒ヶ根玉職人でも異世界は救えるか?  作者: 駒雅 嶺太郎
~極東旅行編~
14/24

一匹たりとも逃がさんぞ! 深緑のガスコンロ作戦!!

 前回は少し大人しかったですが、今回は今まで通りの元気なアキラさんをお楽しみください。

「うち宿屋なんだ! どう、泊まってかない?」


 そう言う少女に着いて行くと、オシャレな木造の宿屋。

 断る理由が無い、即決だ。





「長旅ご苦労さん、うちでしっかり休んでいってくださいな!」


 飽きもせず東を目指す6人は、新たな町、フィフスタウンを訪れていた。

 自然豊かで、住民の心にも余裕が見える。素敵な町だ。


「良かったわね、こんな良い宿が空いてて」

「アキラすごい! お金持ちなの!?」

「前に作っ(偽造し)た金がまだまだ残ってるからな。そっちの心配はいらないよ」

「宿のおばさんも良い人そうですしね!」


 気付けば俺達もそこそこの人数だ。

 部屋を3つも取ったが、出費は全く気にならない。いくらでも作れるから。


「じゃあ私達、先に寝ますねー」

「マタアシタナ アキラサン」


 皆それぞれ部屋へと入っていく。残念ながら、一緒に……という展開は無い。知ってた。


「ふー。しかし、穏やかで気持ちの良い町だなぁ。宿の娘さんも可愛かったし……」


 セカンドシティとは大違いだ。と、爆散したミカの故郷を思い出す。


「色々あったな……。 よーし、久し振りのベッドだ。今日は思い切り寝てしまおう!」


 つい数日前までただの(こま)()()(だま)職人だった俺が、今では女の子達と異世界を冒険している。

 次はどんな敵が現れるのか……どんな出会いがあるのか………

そんなことを考える内に、意識は溶けていった。





「あれっ?」


 おかしい。目を開けるとそこには木製の天井ではなく、一面の星空。

 今まで居たはずの宿の一室ではなく、冷たい石畳の道に立っていたのだ。


「なんだこれ……夢か?」

「そう! 夢だぜ。」

「!? 誰だ!」


 空から現れたのは、大きな翼を持った魔物。

 皮膚は緑色の鱗に覆われ、顔には二本の角。如何にも化け物という風貌だった。


「俺は魔王軍の幹部……。俺の能力は!」

「!! 姿が……!?」

「どうだ? 完璧だろう。」


 魔物が指を鳴らすと、その姿は先程の宿屋の娘になった。顔や声はもちろん、衣服までもが再現されている。


「良いか! 俺はこの能力でお前達を殺す! 顔を変え! 一般人に紛れ込み! 一人一人殺してやるからな!」

「なんだと……!? 何か、区別する方法は……!!」

「無駄無駄! ハハハハハハハハ!!」

「うっ……視界が……」






「ハッ!」


 鳥の鳴き声。

 窓からは眩しい光が射し込んでいる。


「朝……夢だったのか? いや、こうしちゃいられん!」


 大急ぎでエリー達を起こす。

 早くしなければ、奴はいつどこで襲ってくるか分からない!


「全員急げ! ここを出るぞ!」

「どうしたの? そんなに慌てて」

「………………眠い」






 俺達は脱兎の如く町を飛び出した。

 幸い早朝だったため、誰とも遭遇せずに駐めてあった駒ヶ根玉まで辿り着けたのだ。


「よし、みんな乗り込め! 飛ぶぞ!」

「何とか逃げ切れましたね……」

「逃げる? いや、あいつは危険だ。今この町で! 決着を付けてやる!」


 駒ヶ根玉を急上昇させ、町の直上まで移動する。

 そう、奴は今確実にこの町のどこかに居るのだ。今逃がしたら、次は確実に殺られる!


「エリー! 火を放て!」

「えっ!? え、ええ! 分かったわ! はぁっ!」

「オイオイ、イイノカヨ」


 町の四方八方に魔法の炎がばら蒔かれた。

 元々緑の多い町だったことが幸いし、すぐにそこかしこへと燃え広がって行った。


「……! ミカ! あいつ逃げてるぞ! あれが魔物かもしれん!」

「分かった………………えいっ」


 取りこぼした部分は、ミカの雷魔法で狙い打つ。

 奴は絶対に、この町から逃がさない!!


「くそっ、外れか! むっ、あっちにも居るぞ!」

「…………えいっ」

「あの辺火が足りないわね……はっ!」



 数十分にも及ぶ死闘。

 ついにフィフスタウンから、動く者の気配が無くなった。



「……、 なんて有り様だ……。」


 生き物の居なくなった黒い大地。

 それを見下ろしながら、俺達は言い様の無い悲しみを噛み締めていた。


「アキラさん、まさかとは思いますが、本当にただの夢だったということは……?」

「いや、それは無い。これは俺の勘だが、絶対にそれだけは有り得ないし、有ってはいけない。きっと間違いなく、俺達は奴を倒したんだよ」


「それに、もしそうでない可能性があったとしても、よね?」

「あぁ、その通りだエリー。もし万が一、ほんの一ミリそうでない可能性があったとしても……疑わしきは罰する! そうしなければ、俺達が殺られていたんだ」


「すみません、アキラさん……! そんな辛い決断を迫られていたなんて!」

「アキラ! かわいそう!」

「これは……仕方のない犠牲なんだ。今までだって見てきただろう? 吹っ飛んだセカンドシティの人達、無謀にも勝手に開戦したサード王国の奴等、水没したエルフ達……」

「アキラ……」


 そう。俺達は、いや、この世界の全人類は、彼らの犠牲の上に生きているんだ。

 決して歩みを止めてはいけない。振り返ってはいけない。


「魔物さえいなければ、こんな事には……! あいつらが全ての元凶!!」


 これまで何人もの人々の死に触れてきたアキラ達。

 この怒りをどこにぶつければ良いのか分からず、ただ悲しく叫ぶ声が、こだました。


「そして魔王ッ! お前さえ居なければ! 俺は許さんからなッ!!」




 過去は振り返らない。

 6人は次なる出会いを求め、長い長い、東への旅を続けるのであった。


 「木造」「自然豊か」のワードだけで、勘の良い人なら今回の作戦に気付けたでしょうね。


 ところで、最近本当に駒ヶ根玉作成パートやってません。どうしよう。

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