小休憩 ~ハロー聖剣、フォーエバー聖剣~
~唐突なキャラ紹介~
アキラ ・・・ 主人公。異世界転移した日本の駒ヶ根玉職人。
エリー ・・・ ヒロインその1。アキラの良き理解者、兼共犯者。
ドロシー ・・ ヒロインその2。人権無し。
姫 ・・・・・ ヒロインその3。リアクション担当。
ミカ ・・・・ ヒロインその4。ナチュラル外道ロリ。
サーニャ ・・ ヒロインその5。新参エルフ。賑やかし。
「分かった! 剣だ!」
今日も今日とて魔王討伐のため、東を目指す一行。
丁度良い木陰を見つけ、6人はのんびりと休憩を取っていた。
「何よ突然……剣がどうしたの?」
「俺達に足りない物だよ! ずっと何かムズムズすると思ってたんだ!」
「剣なんて……必要ですかね? 私達の魔法と、アキラさんの駒ヶ根玉があれば十分では?」
奴等は揃いも揃って冷めた反応。と言うか、さして興味がないご様子。
女子共にはこのロマンが理解できないのだろうか。
「『剣と魔法の異世界』だろうよ! どっちが欠けても駄目なんだって!」
「いや、そんなキャッチフレーズみたいなの言われても、私達知らないし……」
「トイウカ アキラサン ドッチモ モッテナイジャン」
「ぐっ」
痛いとこ突いて来やがる……。
確かに俺は剣も無ければ、魔法も使えない。ハッキリ言って異常なのではあるまいか。
「だからこそだよ! 魔法は無理でも、剣ならこう、ズバーッと……、俺一人でも戦えるじゃん!」
「今までの活躍見てたらどうにも……、最悪素手でも大丈夫なんじゃないの?」
「………………お兄ちゃんなら、できるよ」
「お前ら……、一般人の俺になんちゅうことを……」
ぶっちゃけた話、駒ヶ根玉を作るのは中々面倒なのだ。
性能はその場にある素材に大きく左右されるし、何より咄嗟の事態への対応が難しい。
「要は俺はお前らと違って、自己防衛能力が低いって話なんだよ。俺一人の時に襲われでもしたら、どうすりゃ良いんだ?」
「アキラ! 魔法使えないの!? 可哀想!」
「サーニャだけだよ……、俺の事心配してくれるのは……」
「駒ヶ根玉って! 魔法じゃなかったの!?」
「だーかーら! あれは科学の……はぁ、もう良いよ。この説明何度目だろ」
どうやら、俺のロマンと危機を理解してくれる仲間は居ないらしい。
「もう知らん! お前達駒ヶ根玉に乗せてやんないからな! 走って着いて来い!」
「そう言えば……、この辺りには大昔の剣が封印された、洞窟があったはずですが」
「行きましょうとも。すぐ行きましょうとも」
「全く……何がそんなに良いんだか、サッパリだわ」
「ここです」
「さっきの木陰から徒歩一分じゃないか。仕込みか?」
「いいえ、ただのラッキーです」
暖かくも神秘的な木漏れ日。明らかにレジェンダリーなサムシングが眠っていそうな雰囲気だ。
付近に転がる石も苔むし、何十年も人が踏み入っていないという様子。
「ドロシー、先頭頼む」
「ナンデワタ……! ワカッタゼ、アキラサン」
脳波コントロールはこういう時に便利だ。いっそ全員操ってやろうか……流石に冗談だが。
「剣あった?」
「ナイゼ」
中は思ったより狭い。
中腰になってなんとか通れる狭さだが、確かに奥まで進める。
剣に纏わる噂の真偽はさておき、かつて人間がここを通ったのは嘘ではなさそうだ。
「剣あった?」
「アッタゼ」
「そうか。……えっ!? マジで!?」
「デモ ナンカ ヤバソウダゼ」
「何? ……うぉっ」
トンネルを抜けた先には、巨大な空洞が広がっていた。
エルフの里で見た鉱石と同じ物だろうか、壁や天井のあちこちが淡い光を放っている。
「……人間か」
「魔物……!?」
巨大な蛇のような怪物が、部屋の大部分を占領していた。
そしてその奥には、岩に突き刺さった古びた剣が、確かに確認できるではないか……!
「魔物……などと! 一緒にするでない……!」
「じゃあ、どちら様だ!」
「我はこの剣を守護する、聖獣なり……! 人間よ、力無き者にこの剣は渡さんぞ……?」
空気が変わった。
攻撃の意思を見せれば、即座に滅されるであろうことは目に見えた。
「すみません……、俺達ちょっと近くを通ったから寄っただけなんで、帰ります」
「なんだと?」
「剣は護身用に欲しかっただけなんで……、護身用の武器手に入れるために命賭けるってちょっと、本末転倒なんで……」
「……ふざけているのか?」
「すみません、魔物じゃないなら討伐対象外ですし、お邪魔しましたー」
「…………本当に帰った…… ん? これは?」
「あーっ! 明るい! やっぱ俺狭いのと暗いの苦手だわ!」
「アキラさん、本当に剣、良かったんですか?」
「…………いつでも攻撃、したのに」
俺が大人しく引き下がったのが余程珍しかったのだろう、皆不思議そうな顔をしている。
エリー以外は。
「ふー! 狭かった! もういや!」
「サーニャ、危ないからこっちに来なさい」
「え? エリーさん、危ないって一体……キャッ!?」
サーニャが入り口から離れた瞬間。ドゴオッ!!と、激しい爆発音が響いた。
今俺達が出てきた洞窟がガラガラと音を立て、崩れ落ちているのだ。
「爆発!? 一体何が!?」
「あら、気付かなかったの? まだまだアキラのことが分かってないわね」
「駒ヶ根玉さ。洞窟に入る前に、念のためいくつか作っておいたんだ」
「そ、そうだったんですね! 流石はアキラさんです!」
「凄い! アキラ! 魔法みたい!」
「よーし、多分ぶっ壊れたけど、一応剣探すぞ!」
「マダ アキラメテ ナイノカヨ」
全員で協力し、瓦礫をどかす。
途中で蛇みたいな死骸が出て来たが、気持ち悪かったので焼いて食った。
「…………! あった。剣」
「ほんとか! でかしたぞミカ!」
他の瓦礫に守られる形となっており、奇跡的に無事だったらしい。
もしかすると、これも伝説の剣の加護なのかもしれない。
「いよっしゃあ! 念願の剣を! ……剣……、あれ?」
「どうしたの?」
「あれっ? おっかしーな……なあ、剣って全部こんなに重いの?」
「どれどれ……そうですね、こんなものじゃないですか?」
「は? 嘘だろ……こんなの振れる訳ないじゃん……」
「アキラメロッテ コトダナ」
「ふっざっけんなッ!!」
力任せに叩き付けられた剣は、乾いた音を立てて砕け散った。
休憩回でした。
いつものジェノサイドも「許さんぞッ!!」も無く、私にこんな平和な話が書けるのか、と自分でびっくり。
前書きも初めての方へのキャラ紹介風で、たまにはこういうのも良いですね。




