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ただの駒ヶ根玉職人でも異世界は救えるか?  作者: 駒雅 嶺太郎
~駒ヶ根夢想編~
1/24

技術は魔術を超えて ~ぺんぺん草の活用法~

 毎話ごとに一つは山場を設ける作りを意識。

 初めての執筆活動につきまだまだ拙いですが、先人作家様達が基礎を作り上げてくださった「王道異世界系ストーリー」を書いていきたいので、どうぞ宜しくお願いします。

「なんだ……何処だここ?」


 見渡す限りの草原。気付いた時には既に、この見知らぬ大地に立ち尽くしていた。

 野ウサギだろうか? 小動物が戯れている様だが、腰の高さまで伸びた草でその姿は見えない。


「えぇ……? だって俺今、コンビニでカップ麺買って……あれ?」


 ぼんやりした頭を一度左右に振り、記憶を掘り起こす。そうだ、俺は確か――




 冬も終わり、すっかり暖かくなったある日の午後。仕事が一段落した俺は、夜食を買いに近所のコンビニまで来ていた。


「このカップ麺、美味かったっけ? ……まぁ良いや、買っちゃお」


 小竹田(しのだ) (あきら)、26歳。どこにでもいる平凡な成人男性。


 大学受験に失敗した後、金も目標も無くぶらぶらとしていた俺だったが、家業の(こま)()()(だま)作りを継がされた。


『時代遅れな伝統工芸品(こまがねだま)なんかに一生を捧げろって? 冗談だろ』


 何と言うか、若かったんだ。俺は今にデカイことをやれるんだと、根拠の無い自信に満ち溢れていた。

 これ(・・)で飯を食っている今となっては、あまり思い出したくない。


 親父は立派な職人だった。

 ガキの頃は気にも留めなかったが、自分が同じ世界に入ったことでようやくその偉大さに気付き、同時に痛く感動した。

 親父の作る駒ヶ根玉の美しい木目。完璧な継ぎ目。

 俺はあっという間に、駒ヶ根玉に魅了された。


 俺もいつか、親父のような職人になりたい。そしてまたいつかは……親父を超える職人に、そう思い始めた矢先の事だった。


 母さんが事故で亡くなった数日後、親父(アイツ)は突然姿を消した。





 コンビニを出た俺は手帳を開き、仕事の予定を整理していた。


「えーっと、野村さんが日曜まで。井出さんが今月中だな」


 駒ヶ根玉の製作依頼。

 普段は近所の人や親戚からの注文が多いのだが、たまに北海道や沖縄と言った遠方から、ごく稀に企業等から大量の発注が来ることもあり、何とか衣食住には困らない生活を送れている。


「案外、どんな(もん)も需要ってのは無くならないんだな……。まぁ、こっちとしてはそれが()(がた)いんだけど」



 手帳を見ながら歩いていた俺にも落ち度はあった。

 歩き慣れた道だと思って、油断もあった。


「ん?」


 タイヤの擦れる音に振り返ると、音の主は既に目前まで迫っていた。

 大型トラック。何か操作を間違えたのだろう、運転手は大慌てでブレーキを踏んでいる。が。


「えっ? や」






「そうだ……俺、()かれた……?」


 恐らく数十秒前の出来事、鮮明に思い出せた。ハッと自身の手足を確かめる。


「なんだ、どこも怪我してないぞ。助かったのか、それとも既に死んじまってて……ん?」


 上着の内ポケットに、嫌な違和感。

 入れていたのは何だったか、いやいやまさか。

 恐る恐る取り出すと、それは……。


「うわあああっ!! 野村さんの駒ヶ根玉がぁっ!!!」


 ポケットから顔を出したのは、大きく破損した駒ヶ根玉。納品は絶望的だった。


「あーあ……、中の回路も完全に駄目だな……。あれ? いや、待て待て」


 違う、そんなことでは無い。重大で奇妙な疑問。


「俺自身は間違いなく無事なんだ。なのに何で、玉だけ……」

「ちょっとあなた!! 死にたいの!?」

「!?」


 耳をつんざく大声で思考を遮られる。

 我に返り声のした方を向くと、日本ではまず見ることが出来ないであろう、鮮やかな(あか)い髪の少女がこちらへ向かって来ていた。


「こんな草原のど真ん中で! そんな無防備な姿で! あなた気は確かなの!?」


 草むらを掻き分け、ズンズンと近寄ってくる少女。

 何かただ事でない様子だ。相手は年下だろうというのに、思わず萎縮してしまった。


「す、すみませ……ちょっと今、なんか色々よく分かんなくて……」

「……! あーもう、なんでも良いわ! 一旦街まで戻るから、ついてきて!」

「えっ、うわっ!」


 無理矢理腕を掴まれ、引っ張られる。よほど不味い事をしてしまったのだろうか?

 いや、始めは怒っていると思ったが、どうやら同じくらい(あせ)っているらしい。不法侵入だとか、そういったものではないようだ。


「……! しまった……!」

「え?」


 ガサガサと草の擦れる音。

 周囲の草むらに何か(・・)がいるのだ。前、後ろ……いや囲まれている。

 流石に俺にも理解できた。少女は最初からこれ(・・)を危惧していたのだ。


「な、なんだこいつら? 野生の……でかいぞ!!」

「あなた! 戦える!?」

「戦うって、俺が!?」

「……! 私一人なら何とかなる。けど! 守りきれなくても恨まないでよね!」


 目を疑った。

 少女の(てのひら)の上に、突然真っ赤な炎が現れたのだ。


「なっ……!?」

「はぁっ!!」


 腕を一振りすると前方の草が焼け落ち、初めて敵の姿が(あらわ)になる。

 猿のような生き物だった。だが明らかに、俺の知るそれではない。体毛や爪が長く、何より目付きがおかしい。


「何だあれ……猿?」

「後ろ! 気を付けて!」

「うぉっ!?」


 振り返りながら放たれた火球はすぐ横を通り過ぎ、一匹の猿を捉えた。顔を焼かれ、苦しそうにのたうち回っている。


「俺の背後に居たのか!?」

(助けてもらわなきゃ……死んでたってか!)

「くっ!」


 流石に数が多いのか、彼女の頬を汗が伝う。


「逃げて! これ以上は!」

「そ、そんな……!」


 年端もいかない少女を置き去りにして、自分だけ逃げる?


「何か……俺にも出来ることは無いのか!?」

「早く!!」


(いや! 逃げるなんて手は無い! 落ち着くんだ……、冷静になるんだ!)


 まずは改めて、周囲の状況を分析する。

 何でも良い。何か、使える物があれば!


「! これだ!!」


 周囲に生えていた草を引き抜き、土に混ぜ……、こねる(・・・)


「ま……ずいっ! あっ!」

「オラァッ!!」

「…………え?」


 倒し切れなかった2匹の猿が少女に襲いかかる、瞬間。


「ふー、ギリギリだったな」


 俺が投げたそれ(・・)は、何とか奴等に命中したようだ。


「あなた、今一体……何をしたの?」


 一匹は頭を、一匹は胸を貫かれている。もう起き上がっては来れないだろう。


「ナズナだ」

「え?」

「ナズナ、ぺんぺん草(・・・・・)だよ。ほら、ここらに生えてる。これを土と混ぜ合わせて、即席の駒ヶ根玉(・・・・・・・)を作ったってわけさ」


 目の前の少女は、まだ信じられないという様子で話を聞いている。いや、どうも聞いてはいるが、頭には入っていないらしい。


「この季節で本当に良かったよ……。ナズナは夏には枯れてしまうからな」

「こま……えっ?」



 あぁそうか、言ってなかったんだっけ。



「俺は小竹田 明。駒ヶ根玉職人なんだ」


 何度か加筆修正しました、というか今もしてます。

 この頃の文章、流石に見返すと恥ずかしいレベルでした。まぁ、今もですが。

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