第7話 使徒王と対峙した者
「俺が半使徒?なんの冗談だよ。半分使徒だってのか?」
俺は目を見開き戸惑いながらミダラを問い詰める。
「正確には使徒になりかけた人間ってとこじゃな。」
どうして俺が使徒なんだ。俺は人間じゃないか。
それに使徒は死んだ生き物だって書いてあった。
俺はまず死んでないはずなんだ。そしたらまず俺が使徒ってのもおかしな話で……。
「信じられぬのか?」
当たり前だ。誰だって自分が使徒だなんて言われても信じられるはずがない。
「お主は記憶が曖昧で、残ってるのは親に捨てられた、という事だけじゃろう?」
「だから……だからなんだよ。」
「はぁ……まずお主は友と2人で鬼殺しを探しに行った。そこで死にかけたのじゃ、だがたまたまそこにあった鬼殺しにお主が触れることによって核が上書きされ、使徒になるのを抑えられておるのじゃ。」
確かに使徒について書かれていた本には、生き物が使徒になる時、その生き物についての記憶が周りから消える……。
「それじゃあ……まさか。」
「そのまさかじゃ。まぁ、当然じゃろうな。いきなりちだらけのお主が鬼殺しを背負って自分の家に入ってきていれば恐怖に驚くのも無理はない。」
だが、俺は確か一人で鬼殺しを取りに……。
「まだわからんか?もう一人はなったんじゃよ。使徒にな。そして、そいつは使徒専門の機関かなんかにやられたのじゃ。お主は雪に埋もれていて気付かれなかった、だから何もなかったのじゃ。」
信じがたい出来事が次から次へと。
でも、それは全て辻褄が合ってしまう、それが何よりも悔しい。
「天照について、じゃが。単純じゃ使徒の核を元に戻す。簡単に言えば死体に戻すものじゃよ。核を。その際に全ての魔力を使う事になるがな。」
魔力は回復するが、その次を放てるようになるまで間隔がかなり必要ってことか。
「でも、待てよ?なんでそんなものを誰が何の目的で作ったんだ?」
「先代『全知』の持ち主が寿命が短く使徒発生率の高い獣人のために作り上げたのじゃ。」
獣人のために、か。確かにそういう事ならな。
「お主……チャナカドゥを殺そうか迷っておるな?」
「それが……なんだよ。」
ミダラは立ち上がり俺に背を向ける。
「先ほど説明したように使徒には使徒王と呼ばれる強力な存在もある。」
「あぁ、今なんでその話を?」
「チャナカドゥは1度、その使徒王の1人と対峙し生きて帰っている。」
「なっ!?」
使徒王と対峙しているのに生きて帰ってこれている……だと?
そんなのありえるのか?
「だからのう?あいつともし殺り合うというなら、覚悟……するんじゃぞ。」
「言われなくても、生半可な気持ちで戦ったりしねぇよ。」
俺はそう言い残しミダラの屋敷を出る。
×××
「あ!シズキ!おかえり。」
「おぉ、コロナ。ただいま。」
俺が出てくるなり俺の横まで小走りで来るコロナ。
「そういえば俺って獅子王のとこでどのくらい寝てたんだ?」
かなり体力が回復してたから次の日に目が覚めた。なんて事はないと思ってる。
「3日だよ?」
「3日もか!?」
って事は奴の言ってた食事とやらは2日後?一体なんなんだ食事って。
ミダラはそれについては教えてくれなかったし。なんだってんだ。
「ねぇねぇ?シズキ……。」
「……あ、ん?なんだ?」
「明日お祭りなのは知ってるよね?」
あぁ、そういえばチャナカドゥへの捧げ物の前夜祭だかなんだか、か。
捧げ物ってのが素直に食事だといいんだけどな。
嫌な予感がする。
「あぁ、知ってるよ。」
「その、さ?一緒に行かない?お祭り。」
「おう、いいぜ。約束な。」
俺はこの時、何も知らなかった。
この後起こる衝撃の事態も。
そして、最悪な捧げ物の正体も。




