第4話 雫鬼
えーと、誰だかわからんがこのタイミングで何のいたずらだ?
と俺は思ってしまった。
そりゃそうだろう、もう殺されるんじゃないかって状況だよ?俺は。
そんな中話しかけてきたのが、宝具って……そんな笑えない冗談……。
『いや、それで間違いねぇよ、俺が話しかけてんだよ。』
……だよな。
それで?お前は一体何者だ、鬼殺し……なのか?
『あーぁ。その辺は後回しだ、今はあの獅子王ってのを倒してぇんだろ?』
まぁ、そうだな。倒す方法でもあんのか?
正直、未だに信じられない。だってそうだろ?数年間ずっと一緒に戦ってきた武器がいきなり話しかけてくるなんてのをどう信じろと?
『とりあえず、だ。もう少し距離を取りたい。準備が必要なんだ。正確には環境だな。』
逃げろって事だな。
『ちげぇよ。』
───え?
×××
「あのぉ。鬼殺しさん?これ大丈夫なんだよな。」
あまりの不安に声に出してしまう。
『あぁ、大丈夫だ。お前ならなんとかなる。』
今、適当だったろう。わかるぞ、間違いないよな。適当だよな。
ザザザザザッ……バサッ!
───来た!!!
俺は獅子王の大きく振りかぶる腕を見て……避ける。
「やっぱ無理だろ!死ぬだろあれは。」
そう、鬼殺しが俺に伝えた距離のとり方とは。
奴のあの強烈なパンチをくらうと同時に後ろに飛べというもの。
無茶苦茶だ。
まず、合わせて飛ぶってのがどれだけ難しいか、こいつはわかってるのか?
『あぁ。めんどくせぇ。じゃあお前は防御だけして俺の合図で飛べ、いいな。』
難易度は少し下がった。
だが、それ以前に怖いんだが……。
次の一手でどうにかする、そのために俺は防御の体勢でかまえる。
相手の動きに反応するだけ……そうだ。簡単だろ。
何も迷うな、今勝たなきゃいけない敵にだけ集中しろ。
───黒夢 紫月!!!
獅子王が俺の左側から現れたのに気付き体をそちらへ向ける。
『今だ、飛べ。』
鬼殺しの合図で俺は後ろへと軽く飛ぶと獅子王の攻撃による勢いでかなりの距離を飛ばされた。
おいおい、今の下手すると死んでたろ。絶対に死んでたよな。
『大丈夫だ、生きてんだろ。一々、文句ばっかうるせぇな。』
こっちは下手すると死んでたんだ、文句の一つや二つは許してほしい。
それでこの次はどうするんだ?まさか死んだふりでやり過ごす、とかではないよな?
『───剣を胸に刺せ。』
「は?」
おいおい、それは殺られるくらいなら自殺しろってことか?
プライドもクソもないじゃないか。
『黙って刺せ!それしかないんだよ。お前があいつとやり合うにはな。というか刺せば勝てるだろう。』
それを信じるだけのもんが今ないんだが、俺はどうしたら。
『俺もお前に死なれても困る理由がある。』
×××
「今のは受け身を取っただろう?逃げる事しか出来ないのか?」
獅子王が近づいてくる……時間がない。
どうする。この状況……鬼殺しを信じて刺すか……?こいつを。
いや無理だ、絶対死ぬだろ。
じゃあ、ここで獅子王に黙って殺られるか?
いや、そうじゃない……今どうするかじゃない。
今までどうだったか、だ。俺はこいつを……鬼殺しを信じて戦ってきた。
なら、こいつの言葉は信じるに値する。
「よし!行くぜ!」
『あぁ、行け───。』
「これ鬼神[刃]解放したままで大丈夫?」
『むしろ、それでいいんだよ。しまらねぇなぁ。』
俺は大きく深呼吸をして剣先を自分に向ける。
「見つけたぞ、終わらせてや───」
「お待たせしたな!ここからが本番だ!」
俺は勢いよく鬼殺しを刺す、そうすると俺を黒い何かが包み込む。
黒いそれが弾け飛ぶと同時に赤い電気が俺の周りをバチバチしてるのがわかる。
次第にそれは収まり、自分の状態を確認する。
特に変化は───角が2本生えてるくらいか、俺は目を開き獅子王に睨みをきかせる。
『一応、鬼になるわけだ、名前やるよ。』
それ、いいな。気に入った。
「鬼神[心]覚醒……雫鬼。」




