ゲート
ある高校の女子便所で三人の派手な女子と、小柄で目つきの悪い女子が向かい合って立っていた。
「便所飯とか初めて見たわー」
派手な女子のリーダー格、ユカは嘲るように笑った。
仲間の女子二人も同じように笑った。
「(教室で食ってたら、テメーらが弁当に虫だの砂だの入れて来るからだろうが…)」
目つきの悪い小柄な女子、神田 結は心の中で舌打ちをした。
「つーかさ、学校来んなつったよな?
何で来てんの? フユカイなんですけど」
ユカは追い打ちをかけるように、結に言った。
普段ならさっさとこの苦痛な時間を終わらせるために、結は黙って俯いているだけだが、
今日は違った。
「うっせーんだよ、このクソビッチ共が」
「…あ? なんつったコラ」
「毎度毎度、セコい嫌がらせしやがって、このノータリンが…」
「あぁ!? 調子こいてんじゃねぇぞ神田ぁ!」
「神田ぁ、痛い目にあってみるかぁ!」
女子高生とは思えない形相で叫ぶユカとその金魚の糞に対し、結はニヤリと笑うと、手に持っているカバンから本を取り出した。
「…何だそりゃ?」
ユカが怪訝そうに、結の本を見つめる。
それすらも結にとっては、愉快だった。
「…死ね、死ね死ね消えろーー」
ブツブツと憎悪の言葉を呟き始めるのと同時に、周りに紫色の光が現れる。
「死ねクソビッチが!! 『ゲート』」
紫色の光が、女子便所を埋め尽くした。
あまりの眩しさに、ユカ達だけでなく結も目を閉じた。
光は、しばらくすると徐々に収まった。
「なんだったんだ…」
恐る恐るユカが目を開けるとそこは、いつもの女子便所だった。
ただ、目の前にいた結の姿は何処にも無かった。
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結は期待に胸を膨らませ、目を開けた。
「どうなったかな? あのクソ…お…ん…な…?」
目に映った光景は、いつもの女子便所ではなく、
「ここ何処だよ…」
何故かボロボロに朽ち果てたビルの屋上に立っていた。