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1 ヤドカリとタラバガニは蟹とは違う仲間

暑い、布団を跳ね飛ばそう。ん?布団はどこだ?探さなきゃ…あれ?なんでこんな硬いところで寝てるんだろう。


瞼が重いが布団を探さねばならん。アレは就寝に欠かせない相棒なのだから。


網膜に光を入れるのは寝起きには重労働だが背に腹は代えられない。俺は早く二度寝をしたいだけなんだ。


しかし、もたらされた視覚と嗅覚と聴覚は劇物じみた気付薬となって俺を覚醒させた。


一面のトロピカル、ビーチなサンドのスメル、ドップラーの効いたウェイブ達。


………Hawaiian?ワッツザファック?

そして遅れて体温の上昇も感じるようになり、ここがようやく自分のベッドでないことに気付く。


陽が照りつくのを感じ、恐怖は喉と胃の奥に真空を生み出し、驚愕と共に感情の席に次々と着席していく。


何が起きたのかを確認せねばと肉体を動かすが、そこで聴覚は聞いたことのない軋みを拾ってしまった。


何故動くと同時に軋む、という疑問はすぐに視覚が解決した。


俺の目には群青の殻に覆わた多関節の足、いや脚が飛び込んできた。


その事実から目を背けるために天を仰ごうとすると、背中に何かが乗っていることに気付き、そしてこの時点でようやく自分の手を見た。


わかっていた。シザーマン…いや、マンは人型だ。

手の代わりの鋏を背後にまわそうとすると硬い何かにぶつかった。


今まで得た情報と理性が俺の形容し難い感情を抑え込むのに数十秒かかり、その末に結論を無理やり捻り出した。

割り切るために。



俺は甲殻類になったのだ。

おそらくは、ヤドカリに。




〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓


『うおおぉおぉあうぉあぁぁぁあああ”あ”!』

「ギシュシュシュブクャシュシュシシシュ!!」



知ってたけど言語がだせねぇ。

そして何故青いのだ我がヨダレもとい泡よ。



現実を受け入れたくない思考と連動して慣れない関節をやたらめったら動かしてのたうちまわったが、やがて背中のヤドが地面に接すると、その重みで容易に転がることはできなくなったのでそのまま重力に身を委ねた。


一体俺が何をしたんだ。

ただ、深夜までもつれこんだTRPGのせいで朝帰りなってそのまま寝床にダイブしただけなのに、まだ二十歳になってようやく酒を楽しめるようになったってのに!

ウオォォオオォァァァアアァァァ!!!


…はあ、動いたし寝起きだから腹減ったなぁ。

腹が減ってると気が滅入るだけだ。そうだ、まずはお腹のペコちゃんを制圧しようじゃないか。

そうすれば脳にいった栄養が俺に特に理由のない閃きを賜わってくれるかもしれん。


しかしこの身体で食えるものかぁ…。

いきなりナマモノは早いからさっきぶつかった、あヤシぃ木の実を食べよう。

捕獲する手間も省けるし初級甲殻類には丁度いいだろう。


オラッ!その味わい深そうな中身をを晒しな!その情熱を秘めた熟れた肉体をたっぶり楽しんでやるからよぉ…!


うぬぅ、以外と身持ちは堅いようだな。

ならばこの新たに生まれ変わった(ハサミ)で少しずつ慣らしてやろう!フハハハハハ!



体感で数十分後、中身を食べ尽くすことができた。味はかみごたえのある甘さ控えめなまったりとした巨峰に似てた。

うまかった。ファンタジーなお点前でした。



よし、わたしにいい考えが生まれたぞ。

とりあえずこれからは次の食事のことだけを考えよう!

こんなに美味いものが転がってるんだからとりあえず飯探ししなきゃ損でしょ!


大丈夫だって安心しろって、危なくなりそうならすぐ逃げればイケるってヘーキヘーキ!


元に戻るとかどんなところとか気になることは沢山あるけど、まずは行動しなきゃはじまらんからな。


やっぱり空腹はいかんよ。空腹は。

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