三題噺 [神話] [糊] [雀荘]
――僕の家の傍には、昔から代々続けられている雀荘がある。
何を隠そう、そこは僕の幼馴染の家であり――
昔からよく遊びに行っていた。
麻雀を覚えてからでは、たまに一階も利用している。
先代の店主――――幼馴染の祖父は、かつて『伝説の雀士』とまで言われていたそうで。
彼が積み上げてきた数々の神話は、店の常連の人たちによって度々耳にしていた。
「なんでそんなに麻雀が強いの?」
ルールも知らないまま横で見ていることが多かった当時の自分は――
そんなことを、頻繁に尋ねていたらしい。
ただ、その祖父も人をよく突拍子のない冗談を言う性格で。
「俺には運命の女神がついていてな」としか答えてくれなかったことだけは覚えている。
――――
珍しく麻雀を打っている爺さんを見かけた。
数局の間、その様子を後ろで眺めていたのだが――
長い間、打つのをやめていたことがが響いているのか状況は芳しくない。
その対局を終えた爺さんの戦績はラス――最下位だった。
なのに、なぜだかほっとしたような表情を見せている。
あの頃をそのままなぞるように――
「なんであんなに麻雀が強かったんだ?」と聞いたところ。
「……運命の女神が、俺のもとを去っていったんだろ」と、寂しそうな表情でそう言った。
――――
――その日の夜。
爺さんは既に、住まいにしている2階へ戻っている。
親父さんは店の奥で片付けをしていた。
自分と同じく大学卒業間近の幼馴染が、一人掃除を進めているのを眺めながら――
爺さんに聞いたときと同じ内容を尋ねてみる。
「……なぁ」
「……んー?」
「お前は、爺さんの強さの秘密、聞いてみたことがあるか?」
「……あるよ。店を親父が継いだ時に」
親父さんが店を継いだのは5年前。
その時には、既に打っている姿を見なくなって1年は経っていた。
「理由……聞きたい?」
「……え?」
「爺さんがここぞって麻雀を打っているときにはね、いっつも、キッチンを担当していたお婆ちゃんが、特別におにぎりを握って出してくれてたんだって」
「そのとき手についたお米の糊を麻雀の牌に付けて――」
――――なんてことはない。
神話というのも蓋を開けてみれば、ただのイカサマによる勝利だったのだ。
…………
「呆れた?」
「あぁ――」
運命の女神ってのは――
婆さんのことだったのか。
そう、幼馴染の祖母は6年前に亡くなった、
自分も葬式に参列していたし、よく覚えている。
ショックで麻雀を止めていたこともあるだろうけど――
そんな理由もあったなんて。
「なぁ、お願いがあるんだけどさ――――」
――――
その話を聞いてからは――
自分も麻雀を打つときに、おにぎりを出してもらうようにしている。
「はい。いつもの梅干し入り」
「……サンキュ」
自分はイカサマなんてできないし、しないけど。
「来た――!」
それでも、爺さんのおにぎりの話を聞いて、
なにか特別なものを感じたから――
「一筒、ツモ!」
リハビリ三題噺第一弾
[神話] [糊] [雀荘]
えー……。
お題見て30分で書きました
神話と雀荘ってこれぐらいしか使い方なくね、という
あと、タイトルでお題書いたら
ネタバレになる可能性大だった、でもやめない
“―”の使い方が気になっている人はすいません。癖になってます
[三題噺]書くときは速度優先で
推敲もほとんどしていない文なので
誤字・脱字・時系列のミスがあるかも
どうしても気になったら修正します
ジャンルの設定の仕方、タグの付け方等
こうした方がいいという意見があれば
気軽にコメントください