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歪んだコイゴコロ

作者: 紫宮月音

視点がコロコロ変わります。

理奈視点だけ、香織視点だけ読むという事も出来ます

基本的には全部読んで欲しいですが。

それではどうぞ。

「あのね、姉さん。あたし好きな人ができたの」

「あら、奇遇ね。私も今好きな人がいるのよ」

「そうなの?じゃあ姉さんからどうぞ」

「あら、あなたから言って頂戴」

「……じゃぁ一緒に言おうよ」

「わかったわ」


私達は同じ人を好きになった。


   理奈side



あたしは部屋の中で着替えをしていた。

今日は大好きな彼と姉さんとのデート。

普段友達と出かけるよりも念をいれなくちゃ。

洋服棚の中をがさごそ引っ掻き回す。この間の服どこいったのかな……

確か二段目にしまっておいたはずなんだけど。

「いつまで着替えているの?彼が待ちくたびれてしまうわよ」

一階から姉さんの声がする。

何とか服を探し出して身に纏いはじめる。そして姉さんの事を考えながら。

香織姉さん。あたしの片割れ。唯一無二の人。

あたし達は一卵性双生児。いわゆる双子ってやつなの。

あたし達はホントそっくり。

顔のつくりとか、目の大きさとか、唇とか。

姉さんが二重であたしが一重。

髪はあたしがショートで、姉さんがロング。

でも、いくら見た目が似てても性格はぜんぜん違うのよね。不思議。

姉さんはいつも落ち着いていて、とても同じ年には見えないの。

言葉遣いも丁寧だし、肌も色白で綺麗。

よく難しそうな本なんかも読んでるみたい。

あたしなんか、ガサツで乱暴。

ちょっとした事でも大きな音立てちゃったり。

肌なんか日焼けして小麦色よ。

ああ、おしとやかな姉さんが羨ましいなぁ。

でも、こんなあたしでも彼は愛してくれる。

好きだといってくれる。あたしも彼の事好き。

こんなに幸せなことってある?

姉さんも、彼の事も大好き!

何よりも大切な人達。

考えを打ち切って、あたしは一階へと階段を駆け降りて行った。


香織side



私は、一階のリビングであの人と一緒に理奈を待っていた。

隣では、あの人が紅茶を飲んでいる。

とても……とても愛しい人。

無理なお願いを聞いてくれた優しい人。

私と理奈はあの人に告白をした。普通ならありえないことだわ……

二人と付き合ってもらうなんて。

でも、あの人は受け入れてくれた。とても心の広い人だと思った。私も理奈も大喜びしたわ。

私の可愛い妹、理奈。

けれど、いくら可愛くてもあの人を待たせるのは納得いかないわね……

私は階段の所へいって妹に声をかけた。

すると、もうちょっと待ってーという元気な声が返ってきた。

その声を聞いて思わず微笑んでしまう。

私達は双子。見た目は驚くほどそっくり。

両親でさえ、時々間違えていたわ。

今でもあのばつの悪そうな表情は思い浮かべることができるほど。

思い浮かべるだけで、見る事はもう叶わないけれど。

でも、淋しくなんかないわ。理奈を残してくれたもの。

妹は活発で元気がよくて健康的。肌なんかとてもいい色してると思うわ。

運動も好きだから、適度に筋肉もついているの。

それに比べて私は色白で不健康。体もあまり丈夫ではないし。

動き回りたくてもあまり動けないわ。

あの娘はよく、私の事を羨ましいというけれど。

私から見れば妹のほうが羨ましいわ。

お互いがお互いに足りないものをもっているのね、双子って。

二人という心強さ。今はあの人もいれて三人ね。

好きな人や大切な妹と共にいられる。

こんなに幸福なことってあるかしら?

そんなことをつらつら考えていると、理奈が勢いよく階段を降りてきた。


香織side



夏の日差しはじりじりと焼け付くよう。

私達は近くのショッピングモールへと買い物にきていた。デートともいう。

あの人の右腕は私が。左腕は理奈が掴んでいる。

あの人はちゃんと歩くスピードを合わせてくれる。

日焼け防止の日傘越しに感じる柔らかな光。

その光の中を愛しい人達と歩く。

それだけで幸福だわ。

「あ、あれ可愛いな〜」

妹が何か見つけたのか、一軒の雑貨屋に近づいていく。

つられて私とあの人もぐいぐいと引っ張られていく。

あの人なんかふらついてるわ。私は掴んでいる手を離した。転んだら大変ですもの。

妹は一つのアクセサリーを前にして面白い行動をとっている。

あの人に向かって両手を合わせているわ。……買って欲しいのかしら?

ほら、あの人が驚いているじゃない。

小さなクロスの付いたネックレス。クロスにはルビーが付いてるわね。小さいのが。

値段を見てみるけれど、そんなに高くないわ。

おこづかいはちゃんとあげているけれど……あぁ、そうか。

あの人に買ってもらうことに意味があるのね。

あらあら。そんなに急がなくてもネックレスは逃げないわよ?

店に引きずり込まれて行くあの人を見ながら思った。

私もあとで何か買ってもらおうかしら。



理奈side      



あたしは周りのお店を物色しながら歩いた。

もちろん彼の腕も掴みながらね。

やっぱり夏だから日差しが強いけど、それがまたいい感じ。

外で動くのはいいよね。もっと黒くなっちゃうけど。

姉さんは大丈夫かと見ると、しっかり日傘を差していた。

さすが姉さん、準備ばっちりだね。

なんだかのほほんと歩いてるけど、転ばないかな?

彼の腕を掴んでるみたいだから平気かな……子供じゃないしねぇ。

しばらく歩いてると、雑貨屋が目に付いた。

アクセサリーとかも売ってるみたい。その中で、一つのネックレスが目に止まった。

小さなクロスにサファイアが付いたネックレス。姉さんにプレゼントしたいな。

その隣にはルビーが付いたペアっぽいのもある。あ、アメジストもある。

あたしは、彼に頼んでみた。いわゆるおねだりしてみた。

彼は最初はちょっと困った顔をしたけれど、OKしてくれた。

もちろん全部じゃない。姉さんの分だけ。

あたしはルビーのをちゃんと自分で買うし、彼もアメジストのを買うみたい。

彼が買って、あたしが渡す。不思議な流れ作業だねえ。

店員の人は綺麗にラッピングしてくれた。

三人でおそろい。なんだかワクワクしちゃうな。

姉さんに渡すのが楽しみ。


理奈side



また別の日。あたしは姉さんと一緒に食事にきていた。

いくら彼のことが好きでも、四六時中一緒にいるわけじゃない。

一人暮らしだからって迷惑になっちゃうもの。

彼に嫌われるなんて考えただけでも死にそうだよ。

この間いったショッピングモールにあるお店。

メニューにはパスタばっかり。でも、色々あるみたい。

どれも美味しそうでなかなか選べないよ。いっそ何個か頼もうか?

「一つだけにしておきなさいよ?」

……見透かしたかのように姉さんに言われてしまった。

あたしの考えてることでもわかるのかな?

少し経って、あたしの所にはトマトソースのパスタが到着した。

姉さんのは……黒いツブツブしたのが入ってる……?

なんだろあれ。たらことイカスミとか?すごい組み合わせ……!

姉さんは美味しそうに食べてるけど、なんか気になる。

とりあえず目の前のパスタに専念しようとしたとき、何かが目の隅に映った。

…………?あれ、彼かな?

「姉さん、あそこにいるの彼じゃない?」

いうと、姉さんは訝しそうに斜め前の席を見る。

あたしももう一度見直す。そして、フォークを落としそうになった。

彼と一緒に女の人がいたから。綺麗で清楚な感じで……姉さんみたいな人。

でも、雰囲気が似てるだけで別人。

どうして?ナンデ?なんで他の人といるの?どうして?

彼と女の人はとっても仲がよさそう。

楽しそうに、幸せそうに笑いあってる。

あぁ。あんな人消えちゃえばいいのに。


コロシテヤリタイ……


なんだろう。違和感がある。あたしに向けてくれる笑いとは違うような?

今までに、ミタコトない笑顔。

どうしてその笑顔をあたしに向けてくれないの?

あたしから、離れないで。


香織side



頭がズキズキするわ。それに眩暈もするみたい。

どうして、あの人があそこに。何故?

他の女と楽しそうにしてるのかしら?

快活そうでよく日焼けした……そう、妹みたいな女。

でも、あれは妹じゃないわ。そんなこと分かりきってるわ。

見た瞬間凍り付くようだったわ。ほら、帰った今でもまだ具合が悪いもの。

あんなモノ見たから。

私達に向けるのとはまったく別の種類の笑顔。

私達に見せるのよりも、もっと愛情に満ち溢れた笑顔。

私、あの人のそんな笑顔見たこと無いわ……

嫌。そんなのは嫌。そんなの許せない。


ソンナエガオヲミセナイデ!


あの女。憎い、憎い女。

私達からあの人を奪った女。

ねぇ、私達に何が足りないの?魅力?何なの?オシエテ。

あの人の隣は私達ではいけないの?

愛しい、大切な人と共に居たいと思ってはいけないの?

私は、我儘?



「姉さん、ちょっと話あるんだけどいい?」

「……あの人の事かしら?」

「うん」

「私、今でも信じられないの。幻だったんじゃないかって思うのよ」

「あたしもそう思いたいけど……あれは彼だったよ?姉さんも分かるでしょう?」

「もちろんよ。だからイラつくの。見間違えるわけないわ」

「どうしたらいいのかな。あたしね……女の人、殺してやりたいって思ったの」

「私も憎いわ。殺してやりたいほどね。でも、女を殺してもどうにもならないわ」

「じゃあどうするの?彼を、殺すの……?」

「そんな事、私したくないわ」

「あたしだって。でも、そうしないと彼はまたあの女の人に笑顔を向けるかもしれないよ?

あたし達には決して見せてくれない笑顔を」

「私、あの人に聞いてみようと思うの。あの人は正直だからきっと答えてくれるわ」

「納得のいく答えを?」

「ええ」

「あたし達が納得のいく答えってなに?」

「ただの友達とかよ。仕事仲間とか」

「あたしはそれでも納得いかないよ。騙されてるみたいでよけいにヤダ」

「姉さん……あたしね。最初は付き合えただけで、とてもうれしかったよ。

でもね、そのうちあたしだけ見て欲しいって思うようになったの。よくばりだよね」

「それは私も同じよ。私だけ見て欲しい。他の人なんか見ないでってね……」

「あたしも見て欲しくない?」

「理奈は別よ。私達は双子。一心同体みたいなものよ」

「あたし達の願いは一緒。どうすればいいかな?」

「閉じ込めたりしてみる?そうすればあたし達しか見れなくなるよ」

「わからない……今はまだ分からないわ。あの人に聞いてみないと」



(あたし)(私)の愛を受け止めてください。

 決して、裏切らないで



理奈side


「どう?出来てるかしら?」

姉さんが料理をもってくる。

出来てるも何も……ものすごい美味しそう。

あたしも料理はできるんだけどな〜姉さんには負けるね。

食卓を囲んで三人で晩御飯。とっても楽しい時間。

一口食べる。やっぱり姉さんの料理は上手だ。あたしのはパワフル。

野性味溢れるっていうか……ワイルド?美味しいけど。

彼も美味しそうに食べてるもん。あ、こぼした。

あたしは彼の口元をふきんでぬぐってあげた。

ん?彼になんか白い虫ついてる……とっちゃえ。

「そんなに急いで食べなくてもいいのよ?」

姉さんが彼に笑いかける。

幸せな時間。

「ところで姉さん、なんか羽虫多くない?」

なんかブンブンちっちゃいのが飛んでるんだけど……ちょっとイヤだな。

「羽虫なんかよくいるわよ?気にしないのが一番よ」

それもそうだ。納得しちゃった。

あ。姉さんにも白いのついてる。邪魔だなあ。

姉さんから虫をむしりとる。

「ありがとう」

礼をいわれるとなんだか体がこそばゆくなってくる。

あたしの首には赤。姉さんの首には青。そして彼の首には紫

赤と青を混ぜると紫になる。

二人で一つ。

三人で一つ。

大好きな人と、大切な姉さん。

ずっと一緒にいられるなんて。

あぁ…あたしとっても幸せ。


香織side



フライパンの火を止めて理奈の所にもっていく。

私、自分でいうのもなんだけれど料理上手ね。軽い自己陶酔。

さぁ、あの人も待ってるわ。運ばなきゃ。

皆で食べる晩御飯。どんな料理でも美味しいに決まってるわ。

あら、あの人ったら。

急いで食べ過ぎよ。こぼしちゃってるじゃない。

理奈がすばやくふき取っている。

思わずクスリと笑ってしまう。

…?あの人になんか付いてたのかしら?なんかむしってるわ。

面倒見がいい娘になったわね。

それよりも……ブンブンうるさいわね。

「ねぇ、なんか蝿とんでない?」

「そう?なんかいるけどあまり気にならないや」

確かに。あの人と、理奈と一緒にご飯を食べている事に比べれば、全然気にならない。

でも、蝿が止まると体が痒いのよね……ま、あの人にも止まったじゃない。

しっしと蝿を追い払う。

まったくもう。あ、理奈が私に付いてる白っぽい虫取ってくれたわ。ありがとう。

そういえば。

「理奈、この間ね。近所のおばさんから苦情きたんだけど……心当たりある?」

どんな苦情?と妹が聞いてくる。

「なんかね……お肉が腐ったような臭いがするんですって。そんな臭いするかしら?」

「えぇ?冷蔵庫のお肉腐ってないし、生ゴミもちゃんと捨ててるよ?」

やっぱりおばさんの気のせいよね。どんな鼻してるのかしらまったく。

私の首にはサファイアのクロス。妹の首にはルビーのクロス。

あの人の首にはアメジストのクロス。

二人が一緒だからあの人の色になる。

三人でおそろいなんて、素晴らしいわ!

永遠に三人でいられるなんて…………

私、今が最高に幸福。





『狂っているのはだぁれだ?』





今回は直接グロを書きませんでした。

異常な感じが出せてるといいのですが……

意味不明じゃぁという方は、感想・評価でどうぞ。

メッセージでもかまいません。補足させて頂きます。

私の未熟な力で伝わるとよいのですが……

お読みくださり、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 面白かったです。ただ文章の性格上かわかりにくい点が見受けられたのでそこは残念でした。 内容は普通によかったと思います。これからも頑張って下さい
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