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現想真魂録~幻想の勇者共が現代入り~  作者: 観測者S
第柒章 Summer Vacation !
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第57話 Underground of the mind

暗く出口のない恐怖と絶望は、もうたくさんだ。

寒く薄汚れ、音も、痛みも感じない。

畏怖に満ちたこの運命に捕まり、助け等来ない。

自力で出る事も叶わず、生気も失せ、息も絶え堕ちていく。

運命さえ失い、抗議の声さえ最早誰にも聞こえない。

凍えるような寒さや眩暈、致命傷程度では、この苦しみにはまるで届かない。

既に正気は失い、体が悲鳴を上げるが、それでも死ぬ気で己を保つ。

姿の見えない真の敵は、この心を深く蝕んでいく。

深夜・八十神高校 屋上



妖夢「不知火!?」


天音「不知火?あれがか!?」


山岸「味方……なの?」



メティス「ペルソナ・レイズアップ―『プシュケイ』」



機械的に声を発したメティスは、自身の顔の前で指を鳴らす。

それと同時に何かが砕ける音が響き、メティスから青いオーラが噴き出し、大きい蝶の様な顔を持つ、白いドレスを纏ったメティスのペルソナ『プシュケイ』が現れれる。



メティス「スキル発動・『烈風波』」



メティスの感情のない指示に従い、プシュケイは両手で輪を作り、その中心から慎へ向けて衝撃波が放たれる。



慎(ヒノカグツチ)「ぬぅうん!!!」



それを慎は片手を振り払う事で相殺する。



不知火「(あやめ)!!!」



それにより正面ががら空きになった隙に、音よりも速く不知火が正面へ潜り込み。



不知火「夢想……断界!!!」



黒く輝く不知火の太刀、阿修羅で斬りつける。



慎(ヒノカグツチ)「ぐぬぅ……!?貴様、何をした!?」


不知火「貴様は人世の無意識から生まれ、そしてそこにある己の概念に依存する存在。」


不知火「ならば、貴様と言う存在を人世の無意識から隔絶すれば、貴様を滅することが出来る。」


慎(ヒノカグツチ)「……小癪なぁッ!!!」


不知火「とはいえ、まだ多くの力が残っているのは確かだ。ある程度は私が削ろう。この者を正気に戻すのは、貴様らの仕事だ。」


霊夢「……何だか分かんないけど、今のアンタは味方ってことでいいのね?」


不知火「……フン。」



慎(ヒノカグツチ)「この我を……根源から断ち切っただと?」


慎(ヒノカグツチ)「いいだろう……まずは貴様らから、新たな世界の贄にしてくれよう!!!」


不知火「……私は、負けぬ。推して参る!!!」


メティス「……対象の殲滅を続行します。」


山岸「ペルソナッ!!!」



山岸は、懐から取り出した、『S,E,E,S』と刻印の入った銃……の形をした、桐条より支給されたペルソナの『召喚器』を、みずからのこめかみにあてがい、引き金を引く。

青いオーラと共に、山岸を包み込むような丸い体、そして聖母の様な上半身をもった山岸のペルソナ『ユノ』が現れる。



山岸『……どういうこと?私の『ユノ』でアナライズできない!!!』


ラビリス「どないしたん?」


山岸『彼とあの娘をサポートしようと思ったんだけど、私のユノを通すとまるで姿が見えないの!!!』


山岸『彼ら……一体何者?』



里中「よし、まずは堅実に強化から!!!お願い、ハラエドノオオカミ!!!」


ハラエドノオオカミ「『ドラゴンハッスル』!!!」



里中に召喚されたハラエドノオオカミが、彩愛と勇太を除くすべての味方に強化を施す。

攻撃力・防御力・速度を一定強化するそのスキルは、不知火には意味を為さなかった。



妖夢「力が……沸いてくる!!!」


天音「今ならいつもより上手く舞えそうだ!!!」


山岸『やっぱり、彼には効いてないみたいです。』


慎(ヒノカグツチ)「小細工など通用せぬわ!!!」


魔理沙「なら正面から行ってやる!!!」



魔理沙は懐から八経路を取り出し、ヒノカグツチの生成した防具を纏った慎へ向ける。



霊夢「ちょっと!?そんなの撃ったら慎が……」


不知火「スペルカードとしては発動するな。直接魔法としてぶつけても効果があるかどうか怪しい。」


魔理沙「マジか?でも、そっちの方がおもいっきりやれる!!!」



八経路の中心に魔力が集約され。



魔理沙「喰らえ、マスター・スパーク!!!」



魔理沙のほぼ全力の魔砲が放たれる。



慎(ヒノカグツチ)「効かぬわッ!!!」



慎はそれをかぎ爪で弾くと、それだけで弾道は捻じ曲げられ、遠く彼方へと消え去る。



魔理沙「マジかッ!?」


天城「花の()は」



その横で、天城は何処からともなく取り出した扇子で、目の前に現れる『女教皇』のタロットカードを砕き、その背後に青いオーラと共に天城のペルソナ『スメオオミカミ』が現れる。

花びらを模した小さい盾を両手に構え、そして背後へ回る様に花びらのような刃を連ねて装備した、全身を金色に染めた女性型の天城のペルソナ『スメオオミカミ』。



天城「移りにけりな、いたづらに。」


スメオオミカミ「『華焔』!!!」



スメオオミカミがその右手を掲げると、慎を中心に炎で出来た巨大な花びらが渦巻く。

それはやがて慎を包み込むように集まり、凝縮し、慎を中心に爆ぜる。



慎(ヒノカグツチ)「ぬあああッ!!!」


天音「私も行こうかねぇ!!!『鳳翼』起動、封神『朱雀』!!!」



それに続き、天音も己の封神、朱雀を纏う。

懐から、常に持ち歩いている扇子を取り出し広げ、大きく構える。



天音「我が(せん)は!!!」



そして、コンパクトかつダイナミックに舞い、己の周囲に炎を巻き上げ。



天音「全てを包む武の抱擁!!!」



それは巨大な焔の鳥を成し。



天音「()で包め!!!明鏡止水!!!業破抱擁!!!」



天音が扇子を慎へと向けると、それは一直線に慎へと飛んでいき、焔の華を包み込み、さらに大きな爆発を起こし、巨大な火柱をあげる。



慎(ヒノカグツチ)「羽虫どもが生意気なァッ!!!」



しかし、その爆炎を突っ切って慎は現れ、そのまま天城へ特攻する。



妖夢「もう動きは見切ったッ!!!」



そして天城へと突っ込もうとする慎の真横から、妖夢がそれ以上の速度で迫り。



妖夢「未来永劫斬ッ!!!たあああッ!!!」



先程のマスタースパークの効き具合を鑑み、ほぼ全力で斬りかかる。



慎(ヒノカグツチ)「ぐぬうッ!!!」



慎はその剣をもろに受けるが、纏われたローブには傷ひとつつけず、僅かに吹き飛ばす程度にとどまる。



妖夢「これでも一応本気だったんですけどねッ!!!」


メティス「スキル使用・『ブレイブザッパー』」



妖夢の剣でのけ反った隙をメティスは見逃さず、プシュケイに命じ攻撃を行う。

プシュケイの音速を超える手刀は、結果的にかまいたちの様な風の刃へと変わり、装備された左側のかぎ爪の破壊に成功する。



慎(ヒノカグツチ)「小癪なァ……!!!」


早苗「間髪入れずに行きます!!!『客室の明るすぎる夜』ッ!!!」



早苗は目の前に、光らせた指先で五芒星を描く。

五芒星は完成すると、そこから高出力の霊力ビームが放たれる。



慎(ヒノカグツチ)「ふんぬぁああああ!!!」



それに対抗するため、慎は仮面の口の部分を開き、エネルギーを集約させる。

口の部分が開いた、とはいってもその下にまだ仮面のパーツが残っており、口が見えている訳ではないのだが、咲夜はここに隙を見出し、



咲夜「大きな口は」



時間を止め、開かれた口の中に。



咲夜「『ソウルスカルプチュア』」



魔力を込めた、ナイフ連打を喰らわせる。

そして時を戻し。



咲夜「塞いでしまいましょう。」


慎(ヒノカグツチ)「!?」



攻撃を受けたことで、慎の溜めたエネルギーは霧散し、そして早苗の砲撃をもろに喰らう。

大きく校庭へ吹き飛んだ慎。だが、そのダメージは仮面に皹を入れる程度だった。



ラビリス「アリアドネッ!!!」


アリアドネ「ハッ!!!」



そして吹き飛んだ慎の足元に、ラビリスに召喚されたアリアドネが糸を飛ばし、移動を封じる。



霊夢「はあああああっ!!!」


不知火「……!!!」



そして追撃を入れるべく、不知火と霊夢は上空からとびかかる。



霊夢「天覇風神脚!!!」


慎(ヒノカグツチ)「フン!!!」


霊夢「ッ!?」



そのまま一気に仮面を蹴り砕こうとした霊夢の回転蹴りは、対応した慎の右手に掴まれることで止まり。

そのまま投げ捨てられる。



霊夢「うわっ!?」


不知火「模傚(もこう)!!!」



吹き飛ぶ霊夢と入れ替わる様に不知火が慎へと接近し、



不知火「天覇風神脚!!!」


慎(ヒノカグツチ)「何ッ!?」



霊夢を放り投げた後で体制の崩れた慎の懐に、綺麗に不知火の五段回転蹴りが決まる。













慎の夢の中・どこかの廃工場



現実ではヒノカグツチに体を乗っ取られている慎だが、実際は眠りについた時から、ずっと夢の中にいたのだ。

夢の中では7年前の慎は、己の(てき)を斬り殺し、引き裂き、消滅させ続けていた。



慎「……ハァ……ハァ……」



このような夢は、慎は何度も見たことがある。

しかし、いつもならもう目が覚めているタイミングで、目は覚めない。

そして、いつもなら激昂してまともな思考など出来ないでその手に持った『木刀』を振り回すが、なぜだか今は落ち着きを取り戻している。

己の姿も現在のものに戻っており、慎にとっては、今の状況は違和感の塊であった。



慎「……流石に人外の群れにケンカを売った記憶はないんだがな。」



睡眠とは記憶の整理であり、夢とはその過程で生じる幻覚。

『夢』と言う物をそう捉えている慎には、今の状況は理解しがたい物であった。



慎「……こんな真っ黒で無限湧きする怪物、見たことないねぇ。」



整理するはずの記憶に存在しないモノが、夢の中の慎を取り巻いていた。

否。記憶にはある。ただし、知識として。



慎「桐条のデータをハックした時に見たが……確か、『シャドウ』とか言ったか?」



人の無意識下に眠る自我が、自由と心を求めて人間その他から這いずり出た化け物、シャドウ。

慎を取り囲んでいたのは、ヒノカグツチに憑依されている影響で流れ込んでくる『無意識の海』に巣くう無限のシャドウだった。



慎「一匹一匹は大したことないが、こう数が多くてはかなわんな。」



 スライムから手が生えたような姿のそれは、顔に当たる部位であろう場所に仮面を被っており、その仮面をたたき割れば一撃で仕留められることに、慎は既に気付いている。

しかし、いくら戦闘能力の高い慎であれ、一度に視界に収められるシャドウの数、振るえる木刀の数、腕の数には制限があり、最初は面倒だと蹴散らしていたが、今ではすっかり心理的に疲弊していた。

 後ろから降りかかるシャドウの腕を気配で察知し横によけ、カウンターで仮面を砕く。あまり高い知性を持たないシャドウは避けることも無くその一撃を喰らい、消滅する。意図的かは判断しかねる挟撃が慎の左右から襲い掛かるが、それを右回転斬りで処理し、その直後真上から落下してくるシャドウを斬り上げにより一撃で屠る。


 変化は、徐々に表れた。

 最初はいつも通りの夢のシナリオに沿い、殺意にのみ身を任せ木刀(ムラマサ)を振るっていた。

 しかし、なかなか夢は覚めなかった。いつもなら戦闘開始からすぐに夢から覚めるものだが、数分斬り続けても夢は覚めない。

 そして異変は起こる。斬り倒した死体が、次々と黒いスライム状の『何か』に変化し、それが裏組織の研究対象であることに気が付いたのは、既に数十分の戦闘をこなした後だった。

 終わりの見えない相手に封神を用いるのは効率が悪いと判断した慎は、無理に大技で薙ぎ払わず、一体一体を的確に処理していたが、夢の中だから肉体は疲労しないと高を括っていたものの、心理的な疲労は募っていた。

 幻想郷から来た者たちの能力を発動しようとはしてみたのの、夢の中のムラマサは7年前の状態のため観測()たことが無く、霊夢や魔理沙の能力、さらには『ティラノ君』や『ストロングクマさん』の自律能力、『リボルバー・スラスター』の射出能力に『武扇・鳳翼』のステータスアップさえも使うことはできなかった。



慎「……何だ?」



しかし、終わりの見えなかったシャドウの大軍が、一か所に蠢き始める。

それは互いに喰らい合い、混ざり合い、溶け合い、結合して、一つの巨大な姿を成す。

膨れ上がることを止めないその姿を見て、慎は廃工場の壁を打ち壊し、圧殺を免れるため外へ出る。


外へ出ると、空は禍々しい赤と黒の縞模様で染まっていた。

これまで夢の中で空を見たことが無かった慎だが、今はそんな事より、明らかに脅威である、廃工場を破壊しつつも膨れ上がる巨人を警戒していた。



慎「……オーソドックスなゲームだと、コイツが雑魚敵の元締めだったりするんだが。」



巨人の巨大化は止まり、慎はムラマサを腰低く構えながら、巨人を見上げる。

黒い体に、紅蓮の脈をうつその巨人の名を、慎は無意識のうちに知っていた。



慎「……『ヒノカグツチ』……。」


ヒノカグツチ「ガアアアアアアアアアアアアアッ!!!」



何処で聞いたかは知らない。だが、頭の中に、目の前の巨人が自分を喰らうビジョンが浮かんだ。

そのビジョンの中で、巨人が名乗った名。それがいつの事かは慎は把握していなかったが、慎にとっては『都合のいい呼び名』と『対象が敵であること』さえ把握していればそれでよかった。



ヒノカグツチ「アアアアアアアアアアァッ!!!」



慎の目の前の巨人は大きく口を開き、そこにエネルギーを集約する。



慎「チィッ!!!青龍!!!」



太陽が存在しないが故に光源が無いため、影が存在しない。

そうなると、ムラマサの記憶する『影踏み(シャドウダイブ)』は全く意味を為ず、そうなると影に潜ってやり過ごすことが出来ない。そう判断した慎は、明らかにこちらにぶつけて来るであろうエネルギーの塊を相殺しようと青龍を発動し、その身に纏う。


蒼い龍のオーラは慎の胸の前あたりで口を開き、そこにエネルギーを溜め。



ヒノカグツチ「ガアアァアアアアッ!!!」


慎「龍覇・蒼焔塵(リンドブルム)ッ!!!」



巨人の赤い光線と、慎の蒼いブレスがぶつかる。

しかし、一瞬拮抗はしたものの、慎のブレスはすぐに押される。



慎(さて、どうやりすごすかな……)



使える能力が制限された状態で、あと数秒で慎へと到達するであろう赤い光線をどう耐えるかを模索している慎。

しかし光線はとどまることを知らず、無慈悲に慎へと迫る。

具体的な案も見つからず、『無理矢理踏ん張る』という結論に達した慎。

防御の体制を取り、ブレスの放出をやめる。

そして慎へと光線が到達する直前、慎と光線の間に一つの人影が。



???「グロウラー!!!」



漆黒のオーラを纏ったその人影は、そのオーラで全ての光線を吸収する。



慎「……お前、まだ生きてたのな。」



慎の目の前に現れた人影。

それは、慎の中で永劫の眠りについたはずの狂犬。



グリム「……戦いがある限り、俺は滅びぬ。」



グリム=F=ヴォークハイネ。かつて慎に仇なしたその存在が、今は慎を守る様に立っていた。

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