第56話 火之迦具土神
馬鹿な……何だ、この力は……!!!
銀髪の少年『それがお前の限界だ。俺は……俺達の絆の力は、何があろうとも決してお前などに屈することは無い!!!』
まさか人形であるお前の意志が…この我を超えたというのか……!!!
水色の髪のロボット少女『あんたには聞こえへんのや、ウチを支えてくれる、みんなの声が! あんたは……ウチらには絶対に勝たれへん!!!』
オォォォォ…!
小賢しい、小賢しい、小賢しいぞ、羽虫どもおおおおっ!
黒髪スーツの男性『終わりだ、……『ヒノカグツチ』!!! バケモノはおウチに帰っちまえ!!!』
……ほざけ羽虫が!
我は負けぬ……何よりも強い我はぁっ……!
グォオオオオオオオオオオオ……ッ!
『イザナギッ!!!』
『アリアドネッ!!!』
『マガツイザナギッ!!!』
馬鹿な、我が、絆などと言う、まやかし、に……
深夜 八十神高校前
暴走した慎を追いかけていたラビリス。
八十神高校へと向かっていた慎は、赤い霧が蔓延した高校の目の前で影から実体化する。
ラビリス「この霧、9年前の事件とよう似とる……」
その体は、完全に回復していた。
慎(シャドウ)「全く、いい加減俺を追うのに飽きてくれてもいいんだけどねぇ……。」
ラビリス「そうはいかへん。シャドウ鎮圧はウチらシャドウワーカーの重大な任務や。それに、友達が苦しんどる姿は見とうない!!!」
慎(シャドウ)「『友達』……ククク、『友達』か……。」
ラビリス「そうや!!!もうウチと如月君は、もう立派な『友達』や!!!」
慎(シャドウ)「そうか……お前、今俺の事『友達』っつったか?」
慎のラビリスへの視線が、嘲ていたものから殺意を込めたものに変わる。
慎(シャドウ)「そうか……『友達』か……」
慎(シャドウ)「なら……殺す」
慎は腰を低く落とし、村正を目線の高さで、地面と平行に構える。
ラビリス「ッ!!!」
一瞬で、ラビリスの首元を狙い、斬りつける慎。
しかし、通常の人間の遥か上を行く動体視力を誇る桐条製のカメラアイを搭載したラビリスには、十分に対応が可能であり。
首元で腕をクロスさせたラビリスは、その合金製の腕で刃を受け止めていた。
ラビリス(この力と殺意、半端じゃない!!!確実に殺しに来てる!!!)
刃を押しのけるラビリス。
慎はその力を利用し、空中高く舞い上がり、着地する。
ラビリス「『アリアドネ』ッ!!!」
アリアドネ「ハッ!!!」
その着地を狙い、ラビリスに呼び出された、ラビリスのペルソナ『アリアドネ』が、慎の足元に蜘蛛の糸を飛ばす。
その糸はやがて慎を包囲し、巨大な歯車へと変化して慎へと迫りくる。
慎(シャドウ)「ロード、『巨人』!!!」
その歯車を、オーラで巨大化した村正で薙ぎ砕き、再びラビリスに接近する。
ラビリス「ハッ!!!」
接近する慎に、ラビリスはチェーンナックルで牽制する。
しかし慎はそれを、首を僅かに傾けることで回避し、そして射出された肘から先につながっている鎖を掴み、その場で踏ん張り強引にラビリスを引き寄せる。
ラビリス「ッ!?」
そして引き寄せられ急接近するラビリスの顔面に、慎の左拳が突き刺さる。
慎(シャドウ)「ッ!!!」
ラビリス「ガッ!?」
大きく吹き飛んだラビリスに、とどめを刺すべく慎が詰め寄る。
慎(シャドウ)「死ね。友を名乗るものよ。」
ラビリス(ダメ、このままじゃ負けちゃう……)
ラビリス?(……アタシに代わりな。)
ラビリスが機能停止を避ける策を練っていると、ラビリスにとって聞きなじみのある声が、ラビリスの頭の中に響く。
その声の主は、ラビリスのシャドウ。シャドウとしてのラビリスは、ラビリス本人とは別人格としてラビリスの中に残っている。
ラビリス(……分かったよ。絶対壊さないようにね!)
ラビリス?(保証しかねるけど、どうにかしてやるよ!!!)
シャドウラビリス「……『アステリオォォォス』!!!」
慎(シャドウ)「ッ!?」
瞳を金色に変え、シャドウ化したラビリスが叫ぶと、突然慎の足元から巨大な腕が出現する。
その腕は、その巨大な拳を以って慎をかちあげる。
慎(シャドウ)「グハァッ!!!ッ、ペルソナの換装だと!?」
シャドウラビリス「何勘違いしてんのか知らないけど、『アリアドネ』は私のペルソナ、『アステリオス』はワタシのペルソナ。」
シャドウラビリス「ま、アンタが覚えてりゃいいことは……今からアタシに、ブッ壊されるって事だよッ!!!『アステリオス』!!!」
ラビリスが自身のペルソナを呼ぶと、ラビリスの丁度目の前の地面が変質する。
そして、その変質した地面から、巨大な牛の頭と巨大な人間の腕を持った、鎖につながれた巨大なペルソナ『アステリオス』の上半身が現れる。
シャドウラビリス「焼き尽くせッ!!!」
アステリオス「ウオアアアアアアアアッ!!!」
アステリオスは大きくのけぞり、口に大量のエネルギーを溜め。
慎(シャドウ)「……ロード、『霧雨魔理沙』。」
慎はそれに対し、同じモーションを取り、口の前に青紫の、己の内に封じられたグリムから無理やり搾り取った魔力を集約させる。
シャドウラビリス「ブッ放せッ!!!」
慎(シャドウ)「ハァァアッ!!!」
やがて二つのエネルギーは解放され、光線となって一直線にぶつかる。
二つの光線は相殺し合い、巨大な爆発を起こし、周囲の視界を双方から奪う。
慎(シャドウ)「ロード、『博麗霊夢』!!!」
煙の上空へと飛び上がった慎は、気配を頼りにラビリスへと斬りかかる。
シャドウラビリス「上だッ!!!」
アステリオス「ガアアァアアッ!!!」
慎(シャドウ)「ッ!?」
しかし、あらゆる状況で作戦を遂行できるよう設計されたラビリスのカメラアイは、例え煙の中であろうと正確に慎を捉えており。
とびかかる慎の正面から正確に打ち出されたアステリオスの拳は、慎の下腹部を捉え、打ち上げられた慎はそのまま屋上へと飛んでいく。
シャドウラビリス「チッ、逃がしたか。」
ラビリス(ありがとう、もう一人の私。おかげで助かったよ。)
シャドウラビリス(……フン。)
ラビリスはゆっくりと目を閉じる。
アステリオスはやがてアリアドネへと姿を変え、再び目を開くと、その瞳は元の色に戻っていた。
ラビリス「とはいえ、屋上へ行った如月君追いかけんと……」
早苗「ラビリスさーん!」
天城「ラビリスー!」
ラビリス「早苗ちゃん!?天城さん!?」
そこへ、旅館からやってきた一同が合流する。
魔理沙「私達も協力するぜ。」
勇太「アイツは俺を助けてくれた。今度は俺の番だ。」
里中「そういうワケ。協力させてあげてよう?」
ラビリス「……わかった。ホントは警察的には協力させとうないんやけど、友達のためならしゃあないな。」
山岸「ねぇ、この霧……」
ラビリス「うん、9年前の事件とおんなじや。もしかしたら、『アイツ』が関係あるのかもわからへん。」
霊夢「ここでウダウダ言っててもしょうがないわ。慎は今どこ?」
ラビリス「屋上や。」
勇太「よし、何が起こるか分かんねぇけど、とにかく追おうぜ。」
一行は屋上へ向かった。
八十神高校・屋上
慎(シャドウ)「やっとだ……やっと俺は、俺になれる……」
彩愛「慎くん!!!」
咲夜「リーダー!!!」
慎(シャドウ)「結局来たか。ククク、だがもう遅い!!!」
一行が屋上への扉を開けると、そこには赤い霧によって赤く映る月を眺める慎の姿が。
山岸「気を付けてください!!!シャドウ反応、さらに強くなっています!!!」
慎(シャドウ)「いい月だと思わないか。地上の全ての命を見下し、命栄える昼は息を潜め、そして全てが活動を停止する夜にのみ煌々と輝く。」
慎(シャドウ)「過去にこの場に現れたとされる滅びの神……その力を今、俺は手にする!!!」
妖夢「力……?」
里中「お願い、目を覚まして!!!」
慎(シャドウ)「ククク……ハハハハハハ!!!」
慎が高笑いすると同時に、慎から赤いオーラが噴き出す。
それはやがてどす黒い真っ黒なオーラへと変わり、あらゆるものを寄せ付けまいと慎を中心に渦巻く。
霊夢「慎!!!」
慎(シャドウ)「さぁ降り臨め、生きとし生ける者全てを殺しつくす者よ!!!」
慎(シャドウ)「この敵だらけの世界で、己を残し全てを滅する力を、我に賜れッ!!!」
慎(シャドウ)「さぁ来い、『ヒノカグツチ』ッ!!!」
そして周囲の赤い霧は慎の頭上に、慎を中心に渦巻く。
すると、その霧の渦から赤い巨人の頭が現れ、大きく口を開けたその頭は慎を呑みこむ。
慎(シャドウ)「これで……俺は……俺に……」
??????『愚かな者よ。貴様のシャドウとしての全て、そして人間としての全ては我がもらう。』
慎(シャドウ)「ッ!?」
山岸「何か様子が変です!!!」
??????『貴様は何の知恵か知らんが、シャドウとしての本能から我の存在に気付き、力を得ようとしたらしいが。』
??????『そもそも貴様の躰にシャドウとしての力を与えたのは我だ。7年前の満月の日にな。』
慎(シャドウ)「どういう……ことだッ!!!」
??????『貴様は、只我の復活する『楔』としてこの場に来た。そう導いたのは我だ。』
??????『貴様が絆を否定したあの日、我の復活は確定した!!!』
??????『我が名は『ヒノカグツチ』!!!他者を顧みず、他者とのつながりをかなぐり捨て、個の為にのみ生きようとする者たちの総意!!!』
ヒノカグツチ『ご苦労だったぞ羽虫。その躰、我が貰い受ける!!!』
慎(シャドウ)「あああああああああああああッ!!!」
彩愛「慎くん!!!」
やがて、赤い霧は全て慎に取り込まれ。
ぐったりとうなだれた慎が目を見開くと、その眼は明らかに慎の物ではなくなっていた。
早苗「慎……さん?」
慎(ヒノカグツチ)「……いい躰だ。ここまで殺意がなじむとはな。」
霊夢「違う、アレはもう慎じゃない!!!アンタは誰だ!?いや、アンタは『何』だ!?」
慎(ヒノカグツチ)「……我が名は『ヒノカグツチ』。絆を否定する者に呼応し、我はこの場に降り立った。」
ラビリス「ヒノカグツチやて!?」
里中「それって、9年前のあの時の!?」
慎(ヒノカグツチ)「久しぶりだな、傀儡。前回は色々と面倒事が多かったが、この者の絆の否定は素晴らしい。すこしシャドウを活性化させてやっただけで、こうして我が安定して存在できるまで堕ちてくれた。」
魔理沙「『絆の否定』って何のことだ!?確かに、慎は聞いてる限りじゃ友達作りが苦手そうな感じはあった。でも、否定だなんt」
慎(ヒノカグツチ)「それは貴様の認識だ。この者は、裏切りを恐れるあまり、信頼関係を築く事を拒んでいた。」
慎(ヒノカグツチ)「そしてそれ故に。貴様ら同居人さえも常に警戒し。あの研究室を望んだのも、完全に己が掌握できる空間を、いざとなればシェルターとなる空間を確保するため。」
彩愛「そんな……!!!」
慎(ヒノカグツチ)「だがもう最早そんな事実などどうでもいい。貴様らは、今ここで、我のみの世界の最初の生贄になるのだからな!!!」
慎(ヒノカグツチ)「顕現せよ!!!我が化身!!!」
ヒノカグツチの憑依した慎が、
カッ!!
と鋭い眼光を霊夢達一向に向けると、全身から赤いオーラを噴出させる。
それはやがて真っ赤なローブ、仮面、そして巨大なかぎ爪を形成し、慎の体に纏われる。
慎(ヒノカグツチ)「さぁ、始めよう!!!滅びの宴を!!!」
一同「「「ッ!!!」」」
腰を落とし大きく構えた慎は、そのまま霊夢へとかぎ爪で斬りかかる。
霊夢(速いッ!?)
???「『メティス』!!!」
余りの速さに、一瞬反応が遅れる霊夢。
多少の大けがを覚悟した霊夢の目の前に、割り込む影が。
????「……」
慎(ヒノカグツチ)「何だ貴様はッ!!!」
慎のかぎ爪を巨大なハンマーで受ける、ボディが黒く赤い仮面をつけた、ラビリスによく似たアンドロイド。
その名を、メティス。
そして、そのメティスを使役する存在。
神出鬼没の仮面侍、不知火。
この場にいる全ての存在にとって予想外の存在の出現に、場が一瞬止まる。
そして。
不知火「我は『焔』。我は『業』。我は『真』。」
不知火「我が魂は仇成す全てを捉え、我が刃は捉えた全てを滅す!!!」
不知火「我が名は『不知火』!!!推して参る!!!」
メティス「……対象の殲滅を開始します。」
理を外れた存在による介入が、始まる。




