第55話 Shadow of SIN
【重要機密文章:持ち出し厳禁】
2012年5月2日
保護対象の対シャドウ特別制圧兵装が、何者かに盗まれるという事件が発生。
飛行機にて護送していた『五式・ラビリス』が、その機体で発生したハイジャックの制圧成功直後、その隙に奪取された。
公安が内偵を依頼していた探偵の起点により、追跡に成功。犯人は稲羽市、八十稲羽に逃走。
八十稲羽は、2011年から翌年春にかけてシャドウ関連事案があったと推察されており、今回の事案と何か関係が在るとされる。
2012年5月3日
犯人を追い、八十稲羽へ。
ラビリスの行方を追った結果、犯人はラビリスと共に『テレビの中』へ逃走したことが分かった。
私達ペルソナ使いにしか入ることができないその異空間に、意を決し、戦闘メンバーである私、明彦、アイギス、そしてナビの山岸の4人で突入。
ラビリスのシャドウの暴走など色々あったものの現地の学生のペルソナ使い達の協力もあり、ラビリスの回収に成功。またラビリスのペルソナも覚醒した。
しかし、これでめでたし、と言うわけでもなく、この事件の犯人は捕まえることはできなかった。
2012年5月4日
翌日からの犯人制圧に向け、ラビリスとアイギスの調整。
犯人はこれほどの大事件を起こした相手だ。準備は入念に行った。
2012年5月5日
再び八十稲羽へ向かう途中、リムジンの運転手が敵の手により操られてしまい、事故に遭う。
気が付けば私達は拘束されていたが、先日協力してくれた学生たち、そして私のメイドが集めてくれた、私達『シャドウワーカー』の非常特別制圧部隊『エクストラ・ナンバーズ』の皆のおかげで、解放された。
塔へと変貌していた八十神高校の屋上には、今回の事件の犯人の少年が。押し寄せるシャドウの大軍を抑え、学生たちのリーダーの少年とラビリスが、屋上へ向かった。
後で聞いた話だが、今回の真の黒幕は『ヒノカグツチ』なる存在らしい。犯人の少年もただ利用されていただけにすぎず、また行方をくらましてしまったため、確保はできなかった。
しかし、ラビリス達の説得により、彼は改心したらしく、我々の無事の帰還を以て、この事件は一件落着とする。
シャドウワーカーリーダー 桐条 美鶴
深夜 天城屋旅館 松の間
乾介「......zzz......」
勇太「...ここからは......おれの...すてーじだ......」
荒垣「......琴音......」
一行が寝静まっている、午前0時。
慎「……。」
むくりと、慎は機械的に起き上がる。
その瞳は、両目とも金色に染まっている。
慎「……。」
そのまま立ち上がり、部屋を出ようとふすまに手をかけ……
剛「……どこへ行くでござるか?」
慎「……。」
剛に呼び止められ、ゆっくりと振り向く。
剛「……どうやら、タダの小便、と言うわけではなさそうでござるな。」
慎「……。」
剛「……その瞳……おぬし、あの時の……。」
慎「ああ、お前あの時の……。」
慎「……殺し損ねた奴か。」
慎の口元が、これまで誰も見たことが無いほどに酷く歪む。
剛「ッ!?」
それに応じ、剛は『親友』を警戒することに心を痛めながらも、慎への警戒心を跳ね上げる。
剛「お主、『何者』でござるかッ!!!」
慎(?)「俺か?俺は、コイツだよ。そして、これから俺になる。」
剛「ええいまどろっこしい、しかし今確信した!!!」
剛「お主が、7年前の事件の全ての元凶でござるな!!!」
剛「皆の敵、そして慎殿を、今こそ返してもらうでござるぁあああ!!!」
剛は懐から、『如』と刻印された額当てを額に当て頭に結び、腰を低く構える。
剛「風よりも速く!!!林よりも静かに!!!」
剛「炎よりも熱く!!!山よりも高らかにィッ!!!」
剛「『風林火山』!!!起動でござるぅううううう!!!」
慎「いいぜぇ、いい機会だ、ここできっちり殺し直してやる!!!」
剛の体が金色に輝き、慎の体から赤いオーラが噴き出す。
天城屋旅館 桐の間
ラビリス「……ハッ、シャドウ反応!?」
山岸「……どうかしたの?ラビリス……」
早苗「......かなこさま......すわこさま......」
妖夢「......もう......たべもの......ありませんよ......」
ラビリス「この付近でシャドウ反応や!!!この距離……隣の男部屋や!!!」
山岸「!?どういうこと!?」
ラビリス「わからへん、けど、行かなアカン!!!」
山岸「多分荒垣先輩はもう対処を始めてると思うから、ラビリスはすぐ応援に向かって。私はここからサポートしながら、千枝ちゃんに連絡するから。」
ラビリス「わかった!!!」
再び、松の間
ラビリス「これ……どないなって……」
慎「おら、どうした?こんなもんかよ?」
剛「ぐ……あ……」
荒垣「ハァ……ハァ……」
ラビリスが部屋の扉を開けたとき、部屋の奥には勇太と乾介を守って満身創痍になっている荒垣と、
そして部屋の手前には、剛の首根っこを掴み上げている、金色の瞳の慎が。
荒垣「ッ!?ラビリスか!?」
ラビリス「荒垣さん?これ、どないなって……。」
荒垣「多分だが、今の慎はシャドウ化してる!!!」
ラビリス「なんやて!?」
慎(シャドウ)「ようやく俺は俺になれるんだ。邪魔をするならぶちのめすだけだ。」
慎は剛を投げ捨てる。
剛「がっはぁ!!!」
乾介「こんな……こんなことって……」
勇太「今の慎は、きっと何かの影響で狂っちまってるだけだ!!!」
慎(シャドウ)「お前ら何分かった口きいてんのか知らねぇが、俺にとっては自分以外が基本的に敵なんだよ。」
慎(シャドウ)「いい月だ……夜が明ける前に終えねぇとなぁ。邪魔だ、どけ!!!」
ラビリス「ッ!!!」
慎は窓から見える月を仰いだあと、部屋の出口に向かって一直線に走り出す。
ラビリス「ココは通さへん、暴走しとるなら尚更や!」
慎(シャドウ)「邪魔だと言っている!!!」
慎を拘束しようと構えるラビリスの右腕に手をつき、そのまま飛び越えようとするも、ラビリスは左腕で慎の右腕を掴む。
慎(シャドウ)「この程度で、俺ぁ止まらねぇ!!!」
ラビリス「ッ!?」
すると、慎は己の左腕で己の右腕を掴み……
慎(シャドウ)「ッァァアアアアアアッ!!!」
そのまま強引に己の右肘を『引き抜き』、ラビリスの拘束から逃れる。
ラビリス「なんちゅう無茶苦茶な!?」
慎(シャドウ)「ハッ、残念だったなぁ!!!」
そのまま部屋から外に出た慎は、ラビリスたちを鼻で笑い、そのままま旅館の玄関へ走る。
血が滴る慎の右肘は、グリムから継承された再生能力により、既に再生が始まっていた。
剛「……慎……殿……ッ!!!」
天城屋旅館・廊下
松の間から出た慎は、一階の玄関に向けて一直線に走っていた。
里中/ハラエドノオオカミ「「『ブフダイン』!!!」」
慎(シャドウ)「!?」
すると、急に慎の足元が凍り付き、両足とも腿の辺りまで氷漬けになる。
里中「残念だけど、暴走が収まるまで大人しくしてもらうよ!」
慎(シャドウ)「……遅いじゃねぇの。」
ハラエドノオオカミ「ッ!!!汝よ、後ろです!!!」
里中「ッ!?」
里中とそのペルソナが慎に詰め寄ると、ガラスの割れる音が響き、里中の真後ろから何かが飛来する。
ハラエドノオオカミの合図で躱された『それ』は、そのまま慎の手に収まる。
慎(シャドウ)「『村正』起動!!!ロード、巨人!!!」
廊下の窓から飛来してきた物……村正を起動させた慎は、オーラにより巨大化した村正で、周囲をやたらめったらに薙ぎ払う。
里中「ちょっ!?」
ハラエドノオオカ「ッ!!!『ハイパーカウンタ』ッ!!!」
慎が滅茶苦茶に振り回す巨大な村正のオーラを、里中は必要最低限の動きで避け、ハラエドノオオカミは避けきれなかった幾つかを反射している。
物理攻撃を反射する、ハラエドノオオカミのスキル『ハイパーカウンタ』。そのダメージは攻撃を繰り出した本人に跳ね返る。
慎(シャドウ)「反射か!それなら……」
たまたまハラエドノオオカミの腰で反射されたそのダメージは、慎の同じ部位に跳ね返り……
慎(シャドウ)「ガアアァッ!!!カッ、八ッ……」
里中「如月君!!!」
慎の腰から、氷漬けになった両足と上半身とが、斬り離される。
しかし慎はそれでも不敵な笑みを浮かべ、
慎(シャドウ)「ロー、ド、『影踏み』ッ!!!」
床に倒れたまま、影に溶け込み、そのまま姿を消す。
里中「脚千切れてもそのまま逃げるって……って、それより!!!」
里中「風花さん!!!如月君、どっち行った!?」
通信・山岸『今探ってます……』
ラビリス「里中さん!!!」
里中「ラビリス、大丈夫?」
ラビリス「うん、特に怪我はないで。でも荒垣さんが……」
ラビリス「って、その足!?」
里中「凍らして動きを止めたつもりだったんだけど、ハラエドノオオカミのハイパーカウンタ利用して、無理やり逃げちゃって……」
ラビリス「いくら再生能力をあの化け物から継承したからって、こないな無茶ばっかり……」
通信・山岸『見つけました!!!国道沿いに北上して、鮫川の方へ向かってます!!!』
里中「荒垣さんも心配だけど、ここは早く追いかけなきゃ!!!」
天城「千枝?何かあったの?って、その大きな氷!?」
里中「実は、連れてきたコの内の1人がシャドウ化して、暴走しちゃって……」
霊夢「騒がしいわね……寝らんないじゃないの……って、何が、どうなって……」
魔理沙「どうした霊夢……って、氷塊!?ってか、足!?」
天城「足?あ、氷塊の中に足あった。」
里中「いや、普通気付くと思うんだけど……」
天城「あまりにも自然だったから。ほら、この旅館、時々『出る』し。」
霊夢「それより、あの足、穿いてる服からして……慎の?」
魔理沙「……なんで慎の足だけが凍ってるんだ?」
里中「説明もしたいけど、今は追いかけないと……」
ラビリス「里中さん、説明頼んだで。ウチの足なら車両使わんとも速いし。」
里中「うん、お願い!!!」
ラビリス「ほな、行ってくるで!!!」
ラビリスは慎を追うため、この場を離れる。
彩愛「ん……なにかあったんですか?」
入れ替わる様に、彩愛が現れる。
里中「彩愛ちゃんまで……うん、分かった。今起きてることを説明するね。」
女刑事説明中・・・
彩愛「慎くんが……」
霊夢「シャドウ化して、暴走!?」
魔理沙「そのまま逃走しただって!?」
里中「うん。今は、風花さんのナビをもとに、ラビリスが追いかけてくれてる。」
天城「千枝たちも、追いかけるんでしょ?」
里中「うん。でさ、よかったら、旅館のスクーター貸してくんない?あたしら、電車で来てるから、車両ないんだよね。」
天城「分かった。好きに使っていいよ。それに、私も行く。」
里中「そんな!いいよ雪子は。これはあたしらの監督不行き届きだし……」
天城「暴走してる彼を正気に戻すんなら、戦闘にだってなるかもしれない。回復役は必要でしょ?」
霊夢「私達も行くわ。」
里中「駄目だよ!!!危ないことだし、第一まだキミ達高校生じゃない!!!」
魔理沙「高校生とか関係ないぜ。私らは『友達』を助けに行く。そんだけだ。」
彩愛「シャドウって、『抑圧して、目を背けてた自分』なんですよね……」
彩愛「私、慎くんのこと、色々知らなすぎる。何が好きで、何が嫌いで、何で友達作りを嫌うのか、全然。」
彩愛「何を抑圧してきたのかも知らない。だから、知りたい。慎くんの、『家族』として!!!」
早苗「その通りです!!!」
勇太「ああ、そんで、アイツをたたき起こしてやんなきゃな。」
彩愛「早苗ちゃん、勇太くん……」
咲夜「話は、全て聞かせていただきました。」
妖夢「相談の一つもしてくれないなんて、水臭いじゃない。」
天音「ウチの可愛い生徒が阿保やってんだ。叱ってやるのが教師の仕事よ。」
乾介「荒垣さん達は僕が看てますから、皆さんは行ってきてください。」
天城「高校生の時に、友達と無茶したのは、千枝も同じでしょ?」
里中「雪子……うん。そうだね。よしッ!!!」
里中「風花さん、今、如月君とラビリス、何処にいるか分かります?」
通信・山岸『それが、二人とも、八十神高校に入っていったのまでは分かるんだけど、それより後に、全然反応が観えなくなって……』
通信・山岸『でも、二人とも学校にいるのは、間違いないと思います。』
里中「学校っすね、分かりました!」
天城「これだけの人数……スクーター足りるかな……」
里中「っと、そういえば、みんなバイクの免許って持ってる?」
勇太「俺は持ってます。」
彩愛「私は、持ってないから、勇太くんの後ろに乗ります。」
霊夢「『ばいく』って何?」
魔理沙「美味しいのか?」
勇太「バイクってのは、二輪、つまり車輪が二つ付いた乗り物で、要するに早く移動するためのものだ。」
早苗「つまり、空を飛べる私達には無用の長物と言うわけです。」
咲夜「という事は、私、霊夢、魔理沙、東風谷早苗、魂魄妖夢には必要ないという事ね。」
山岸「私も行きます。向こう側の状況がこちらから把握できない以上、直接現場に行かなければ、状況がわかりませんかし、分析もできませんから。」
天城「私に千枝に山岸さんに霜月先生そこの彼に……5台だから、十分足りるかな。」
里中「よっし、じゃあみんなで、如月君を正気に戻しに行こう!!!」
……ん?
何だ?俺は……どうなっている?
そうか……俺は、あの龍の剣士に封印されたのだったな。
しかし、この違和感は何だ?
俺の『檻』に……何にかが起こっている?何が?
この感じ……俺の魔力がかなり強引にに使われているようだな……
なるほど、これが違和感の正体か。
しかし、そうなると一体何が起こっている?
これまでにあの龍の剣士が俺の魔力を無理矢理に使用したのならば、同じ違和感によって俺は既に気付いている筈だ。
と、するならば、無理やり俺の魔力が引きずり出されているか、魔力を使わざるを得ない状況か……
どちらにしろ、あの龍の剣士は危機的状況にあるようだ。
今感じることのできる情報から、俺が龍の剣士から出ると同時に俺も死ぬようだ。
となれば、あの龍の剣士の敗北は俺の敗北を意味する。
龍の剣士の味方をしたい訳ではないが、俺を負かした奴が負けるというのが気に食わん。
どれ……すこし、手伝ってやるか。




