第53話 天城屋旅館
対シャドウ特別制圧兵装 五式・ラビリス
現在(2021年)より10年以上前に、当時世界トップシェアを誇っていた『桐条グループ』の内部組織『桐条エルゴノミクス研究所』によって製造された、人知を超えた怪物『シャドウ』を討伐することを目的に製造された『人型戦術兵器』。
ラビリスの他にも同系機は存在したが、様々な要因により現存するのは『ラビリス』と、事実上その『妹』にあたる『七式・アイギス』のみである。
対シャドウ特別制圧兵装の実験中、謎の暴走を起こし暫く封印されていたものの、2012年に稲羽市八十稲羽で起こったとある事件により研究所より盗み出される。しかし、当時の桐条のリーダー『桐条美鶴』をリーダーとする警察の裏組織『シャドウワーカー』、及び当時学生だった事件発生現場付近の住人の協力により、事件は解決。ラビリス自身も正気を取り戻し、その後『シャドウワーカー』に入隊。
その後はシャドウ関連の事案のみならず、人間では危険な犯行現場への介入や超常現象への対応などを専門に活動している。
彩愛がジュネスの福引で大当たりを引いてから、数日後。
慎達一行は、度々旅行雑誌やテレビ等で取り上げられる高級温泉旅館『天城屋』への無料宿泊券を使うべく、天城屋のある稲羽市・八十稲羽へ都向かっていた。
本来なら慎達弥生家一家(?)7人のみでなければ行けなさそうなものだが、ジュネスの店員によると「社会的団体である事を証明できれば20人まで可能」という事であった。
所要によって抜けた栞里を抜いた文化研究部10名に顧問の天音、そして彩愛の計らいで参加することになった里中にラビリス、荒垣のDK三人に、里中に誘われてきた山岸の4人を「OB」として扱うことで参加を可能にし、総勢15名(内女性10名)の大所帯での旅行となった。
稲羽市方面行の電車内
慎「これなら……3枚だ。」
剛「2枚も残すでござるか?意気地がないでこざるよ?」
慎「なんとでも言え。」
剛「今度こそは……!全部交換でござる!」
慎「ロイヤルストレートフラッシュだ。」
剛「ぐぬうう、ノーペアでござる……」
咲夜「流石です。」
勇太「……捨て札を全部山札に戻して10回以上連続でロイヤルストレートフラッシュを決めてるのはもはやイカサマの域だよな……。」
慎「これで現職の刑事さえいなければ大儲けできたんだがな……。」
ラビリス「ほぇー、学校のセンセも大変なんやね。」
天音「そうなんですよー。だから仕事終わりのビールが美味しくて美味しくて。」
里中「あ、それなんだかわかります。やっぱ仕事終わった後のビールって最高ですよねー。」
山岸「私はお酒、あんまり得意じゃないんですよね。いいなぁ、呑める人って。」
荒垣「ま、焦って呑むもんでもねぇけどな。呑みすぎると肝臓を壊す。」
早苗「zzz......」
乾介「zzz......」
霊夢「……前も乗ったけど、この『でんしゃ』といい、ホント、現代はよく分からないものばかりね。」
妖夢「幻想郷は現代から隔絶されて出来たらしいし、現代で新しく生まれたものが入ってこない以上、こうして目にすることも無いからね。」
魔理沙「にとりなら嬉々として分解しそうなものばかりだな。」
車内放送『次は、八十稲羽、八十稲羽。終点です。車内にお忘れ物のないよう、ご注意ください。』
乾介「ん……着きました……?」
早苗「んあ……?」
霊夢「ほら、着いたから起きなさい二人とも。」
慎「寝てたいならそれでもいいが置いてくぞ?」
早苗「おはようございますッ!!!」
乾介「ふぁ……おはようございます……。」
電車を降りた一行は、バスに乗り継ぎ、そのまま旅館へと向かった。
天城屋旅館前
彩愛「うわー、おっきいねー!」
勇太「ココ、ホントに俺らみたいな高校生が泊まっていいトコなのか!?」
天音「天城屋に泊まれる日が来るとはな……。」
魔理沙「こりゃまた結構な……。」
慎「ほらほら、止まってないで行くぞ。」
慎に倣い、一行は旅館に入る。
すると、奥の方から一人の和服の女性が現れ、深々とお辞儀をする。
女将「ようこそ天城屋旅館へ。女将を務めます、天城雪子と申します。」
慎「予約してた『文化研究部』だが……。」
女将改め天城「『文化研究部』の皆さまですね。お待ちしておりました。それでは、お部屋へご案内させていただきます。」
天城は慎達一行を先導し、一行を部屋へ案内する。
乾介「綺麗な人だな……。」
天城「あらそう?ありがとう。ふふふっ」
里中「ホント、雪子は昔っから綺麗だからねー。うらやましい限りよ。」
天城「あら、千枝だって私より先に彼氏作ったじゃない。」
ラビリス「え、里中さん彼氏おるん!?」
里中「雪子、何もこんなとこで言わなくても……」
天城「どうせバレるのも時間の問題よ?花村君の事だから、鳴上君には伝わってると思うし。」
里中「まぁ彼ならあんまり言いふらす事は無いんだろうけど……」
天音「お二人はお知り合い何ですか?」
里中「あ、はい。もう小学校からの仲です。」
彩愛「へぇー、長いんですね。」
天城「こちらの松の間、桐の間、芒の間、栁の間がお客様のお部屋になります。何かありましたら、内線にてフロントまでお申し付けください。」
天城「ご夕飯は午後七時にお部屋に運ばせていただきます。露天風呂のご利用に関しては、男性と女性とで入れる時間帯が決まっておりますので、ご注意ください。」
天城「それでは、失礼いたします。」
早苗「部屋割り、どうします?」
慎「男は固まって一部屋、女子が適当にばらけりゃいいだろ。」
慎「それから、咲夜。」
咲夜「何でしょうか。」
慎は咲夜を呼びつけ、小声で耳打ちする。
慎「自然に彩愛と同じ部屋に入れ。そんでもって、彩愛を守っとけ。」ヒソヒソ
咲夜「承知いたしました。」ヒソヒソ
霊夢「どうかしたの?」
慎「いや、なんでもない。それより、異論は?」
魔理沙「ないぜ。」
天音「ああ、それで問題ないだろう。」
慎「そうか。じゃ、俺は荷物を置きに行く。」
荒垣「そうだな。今日は移動で疲れてるし、余計なことしないでゆっくりするか。」
魔理沙「さ、私らもちゃちゃっと決めちゃおうぜ。」
咲夜「どうせなら、くじ引きで決めましょう。」
霊夢「くじなんてどこにあるのよ。」
咲夜「今作ったわ。」
この瞬間に時間を止めてくじを作成した咲夜が、くじを掲げる。
里中「仕事速ッ!」
妖夢「じゃ、一人一本ずつ引いてきますか。」
全員が一本ずつくじを引く中、彩愛が引いた直後に一瞬時間が止まるが、時間の停止に気付くものはいなかった。
そして。
数分後
天城屋旅館 松の間
勇太「俺のターン!スパークマンを召喚!魔法カード『融合』を発動!」
勇太「手札のフェザーマンとバーストレディを融合!E・HEROフレイム・ウイングマンを融合召喚!」
勇太「バトル!フレイムウイングマンで、忍者マスターHANZOを攻撃!」
剛「そう簡単に攻撃は通さないでござるよう!罠発動!『忍法 超変化の術』!」
剛「勇太殿のフレイムウイングマンと、HANZOを合体させるでござる!」
勇太「この展開は読んでいた!速攻魔法発動!『超融合』!」
勇太「手札のクレイマンを捨て、効果発動!場のスパークマンとフレイム・ウイングマンで融合!」
剛「何と!?」
勇太「融合召喚!現れろ、E・HERO シャイニング・フレア・ウイングマン!」
剛「ぐぬぅ……『超変化』の効果で、HANZOを墓地へ送り、レベル4以下のアレキサンドライドラゴンをデッキより守備表示で特殊召喚!」
荒垣「能力っつうのはこんなちいせぇのもいるんだな。」
乾介「ティラノ君っていいます。普通はこのサイズですけど、いざとなったら大きくなります。」
ティラノ君「よろしくな、旦那。」
荒垣「見かけによらず結構男前なんだな、お前。」
慎「寺島。俺ぁ寝る。飯の時間になったら起こせ。」
乾介「あっはい、分かりました。おやすみなさい。」
勇太「ゴッドネオスで直接攻撃!」
剛「ここで負けたーっ!!!」
荒垣「……結構自由な連中だな。」
乾介「すいません、うるさくて。」
荒垣「いや、謝る事じゃない。若いうちにはしゃげるってなぁいいことだからな。」
荒垣「俺なんかは……いや、この話はいいか。」
乾介/ティラノ君「?」
桐の間
早苗「不束者ですが、よろしくお願いします!」
ラビリス「えっと……こちらこそ?」
山岸「不束者の使い方が違うような……?」
妖夢「よろしくお願いします。」
山岸「うん、よろしくね。」
山岸「でも、ラビリスと同じ部屋でよかった。何かあったらすぐにメンテできるからね。」
ラビリス「せやね。くじ引いてる間はその事すっかり忘れとったわ。」
妖夢「めんて……?」
早苗「メンテって、もしかしてラビリスさんってアンドロイド?」
ラビリス「まぁ、似たようなもんかな。」
早苗「凄い!じゃあじゃあ、空飛んだり、ロケットパンチ飛ばせたり、天と次元を突破したりできるんですか!?」
ラビリス「今回は斧無いから飛べへんな。ロケットパンチっちゅうか、チェーンナックルは撃てるで。天と次元は……理論的にどうなん?」
妖夢「ろけっとぱんち……?ちぇーんなっくる……?」
山岸「えっと、理論的には不可能じゃないんだけど、今のラビリスだと無理かな。膨大なエネルギーがいるんだけど、それを保有するとなると……」
山岸「……ざっと、機体の大きさが月くらい無いと足りないかな。」
早苗「ホントに出来るんだ……でもそっか、次元潜航システムを持ってるのが超銀河ダイグレンだから、一応理に適ってるのか……」
山岸「早苗ちゃんは、ロボットが大好きなんだね。」
早苗「はい!そりゃもう!」
山岸「私もね、小さいころからメカがすごい好きでね……」
早苗「そうなんですか?私実は……」
ラビリス「なんか気付いたら置いてかれよった……。」
妖夢「私は最初からついていけて無いので大丈夫です……。」
芒の間
咲夜「『ペルソナ』……ですか。」
里中「うん。なんていうのかな、『もう一人の自分』だね。認めたくない、目を背けてきた自分を、自分の『シャドウ』を受け入れることで、それが『ペルソナ』に変わるんだ。」
彩愛「もう一人の、自分……。」
里中「『シャドウ』や『ペルソナ』の事に関しては、ホントは極秘なんだけど、美鶴さん……私らのリーダーが、キミ達文化研究部になら、今後も協力することがあるかもしれないし、話してもいいよって言ってくれてるんだ。」
里中「だから、この事は部の外の人には言わないでほしいな。」
咲夜「分かりました。」
彩愛「刑事さんに社長さん、モデルさんに、さっきの女将さんまで使えるんだ……結構誰でも使えるのかな?」
里中「使える可能性はあると思う。でも、一歩間違えると危険だから、おすすめはしないけどね。」
咲夜「精神に依存する能力故、その制御が難しいのでしょう。」
里中「そうなんだよね。報告によると、『自分のペルソナに殺された』人たちもいるみたいだし。」
彩愛「でも、ペルソナってすごいですよね!私、こないだジュネスの屋上で生で見て驚きました!」
里中「実はそれだけじゃないんだよねー。なんと『ペルソナを付け替えられる』人もいるんだよ~。」
彩愛「すごい、それってどんなひとなんですか?」
里中「今、彼は世界中の紛争地域を飛び回っててね、それで……」
柳の間
霊夢「あー、やっとゆっくりできるわねー。」
魔理沙「何かオッサン臭いぞ、霊夢。」
天音「まぁ、そこそこ長距離の移動だったんだ。疲れるのも無理はない。」
魔理沙「ずっと座ってばっかだったしな。ぶっちゃけ飛んできた方が楽だったぜ。」
天音「そっちの飛行は燃費いいのな。」
魔理沙「『そっちの』って、天音も飛べるのか?」
天音「私の封神は朱雀だからな。飛べないことは無い。が……」
魔理沙「が?」
天音「ものすごく疲れる。」
魔理沙「ふーん。まぁ幻想郷なら『飛べて当然』みたいなとこあるからな。なぁ霊夢?」
霊夢「......」
魔理沙「霊夢?」
霊夢「......zzz......」
天音「よほど疲れていたんだろう。『長い間乗り物に乗る』ことなど、お前たちの世界では体験することはなさそうだからな。」
魔理沙「ふぁあああ、言われてみれば私も少し眠い気が……」
天音「お前も寝るといい。食事の時間になったら起こしてやる。」
魔理沙「さんきゅ、おやすみ……」
天音「こうしてみると、二人は本当に仲がいいんだな。」
霊夢「......さいせん......どろぼう......」
魔理沙「......しんだら......かえす...ぜ...」
ゲイザー「介入してよかったの?キミ自身、まだ動けない、とか言っていたのに。」
不知火「今『あの存在』に死なれては困る。私の存在が向こう側に完璧に知れることになろうとも、それは時間の問題だ。」
ゲイザー「ま、『幻想郷』なんてもの作ってる時点でバレてそうだけどね。それに、今回の一件で、あっち側にも特異点が渡ったようだし、マイナスばかりでもないか。」
不知火「……。」
ゲイザー「それよりさ、こないだキミが『無意識の海』からサルベージしたその娘だけど、本当に起動くの?」
不知火「ああ。既に全ての不具合は解決している。」
不知火「……起動しろ。『メティス』。」




