第52話 JUNES HERO
ニュースキャスター『……次のニュースです。』
ニュースキャスター『昨日昼頃、太平洋上空で飛行機の機体トラブルが発生。乗客乗員総勢309人が海に投げ出されるという事故が発生しました。』
ニュースキャスター『海上保安庁は迅速に救助隊を派遣、海上自衛隊と協力し、ほぼ全ての乗客の救出に成功。』
ニュースキャスター『しかし、依然として一人の乗客が見つかっておりません。』
ニュースキャスター『見つかっていないのは、『新田 聡』君17歳。県立三峰高校の二年生で、修学旅行に向かう飛行機の中で、今回の事故が起こった模様。』
ニュースキャスター『海上保安庁及び海上自衛隊、警察は人員を動員し、新田君の行方を探していますが、専門家等の判断としてはすでに亡くなっている可能性を示唆しており……』
栞里「聡が……死んだ……?」
栞里「そんな……そんな、嘘だ!!!」
栞里「そうだ、探せばきっと見つかる!!!きっと颯真も探している、私も連絡して、すぐに協力しよう!!!」
栞里「私の友達がこれ以上死ぬのは……美咲みたいに失うのは、もうたくさんだ!!!」
ハットを被った男「はて?確かあの時勝手に開いた門は海の上なんかじゃなく、陸の上空だったはずだが……。」
ハットを被った男「誰かが介入した?情報を改竄?何にしろ、俺達の観測た事のない奴が動いてるのは間違いねぇな……。」
ハットを被った男「面白れぇ……。かくれんぼと洒落込もうじゃねぇかキヒヒィッ!!!」
店内放送『ご来店のお客様にご連絡申し上げます。現在、屋上にて暴走体が発生いたしました。現在店内スタッフが避難誘導を順次行っていきますので、スタッフの指示に従い、迅速な非難の協力をお願い申し上げます。繰り返します。現在、屋上にて……』
彩愛「今の揺れ、暴走体だったんだね。」
咲夜「いかがいたしますか?」
彩愛「私達も避難を手伝おう。とはいってもジュネスの人も動いてると思うから、私達は逃げ遅れたお年寄りや小さい子の避難を手伝おう。咲夜ちゃんは慎くんに連絡して、屋上の暴走体を押さえてもらうように言って。」
彩愛はポケットからスマホを取り出し、慎と通話できる状態にして咲夜に手渡す。
咲夜「承知いたしました。」
咲夜が慣れない様子で慎と話をしていると、彩愛の視界にはこの状況には不釣り合いな落ち着いた二人の人影が映る。
オレンジのネクタイのスーツの男性「全く、千枝からこの辺に怪物が出るたぁ聞いてたが、まさか視察に来た今日ドンピシャで出るとはな。」
金髪ショートのスーツの男性「けが人が出る前に、屋上へ急ぐクマよ!」
オレンジ「分かってるよ。行くぞ、クマ!」
彩愛「今の人たち、逃げる人達とは反対に……まさか屋上に?」
咲夜「……ええ、はい。では、そのように。」
ちょうど通話を終えた咲夜に、彩愛が向き直る。
彩愛「咲夜ちゃん、やっぱり屋上へ行こう。今屋上に行った人がいるから、逃げてって言わなきゃ!」
咲夜「承知いたしました。」
そして、二人も屋上へ駆け出す。
ジュネス高天原店 屋上
彩愛「あの、危険ですから、逃げてください!」
乾介「弥生先輩!?それに十六夜先輩まで!?」
彩愛達が屋上へたどり着くと、そこには暴れ狂う暴走体と、それに応戦している乾介とティラノ君。
そしてピンクのヒーロースーツの女性に、先ほど屋上へ向かった男性二人が、乾介達と共に戦っていた。
ピンクのヒーロースーツの女性「誰だか知らないけど、危ないから今すぐ立ち去りなさい!」
暴走体「ガアァアアアアアアアアアア!!!」
ティラノ君「こなくそぉッ!!!」
巨大な灰色のサイの様な暴走体の突進を、ティラノ君が真正面から噛みついて抑える。
金髪「あの暴走体、体がおっきい癖になかなかすばしっこいクマね!」
オレンジ「それならこっちもこうだ!唸れ、『タケハヤスサノオ』ッ!!!」
オレンジのネクタイを締めた男性が、目の前に『魔術師』のタロットカードを出現させ、
カッ!!!
と暴走体を見据えて、懐から出した大きめのレンチでカードを叩き砕く。
すると、その男性から青いオーラが噴き出し、男性の背後に、太陽の様に丸く、赤く大きなアフロを携えた、緑色のボディの人型の「何か」が現れる。
『タケハヤスサノオ』と呼ばれたその「何か」は、胴体の周りを回るのこぎりの刃の様な大きな輪を高速で回転させ、緑色の風を起こす。
タケハヤスサノオ「Now,Let's do it ! 『青春の風』!」
その風は髪を流す程度に強く、その風に触れた乾介たちの擦り傷などの軽傷が回復してゆく。
金髪「それならクマもやっちゃるけんね~!『カムイモシリ』!!!」
そしてそれに続き、金髪の男性も目の前に『星』のタロットカードを出現させ、
カッ!!!
と覇気を込めた眼で暴走体を捉え、手の平でそのカードを砕く。
すると、その男性から青いオーラが噴き出し、男性の背後に、まるでロケットかミサイルの様なボディの、赤と青と白のカラーリングで手足の生えた「何か」が現れる。
カムイモシリ「ビビビ……『マハラクンダ』」
咲夜「これは……能力?」
彩愛「でも、こんな能力、見たことない……」
『カムイモシリ』と呼ばれたその「何か」の鼻先、もといミサイルの先端から、紫の波動が発生し、その波動はやがて暴走体に取り込まれる。
金髪「さらに……もういっちょ!ほいさ!」
カムイモシリ「ビビビ……『マハタルカジャ』」
そして今度はオレンジの波動を出し、それはやがてこの場にいる暴走体以外の存在に取り込まれる。
オレンジ「よっし、漲ってきたぜ!!!」
オレンジのネクタイの男性は、暴走体の周囲を人間の動体視力を超えた速度で駆け回る。
暴走体「ガァアアッ!!!」
それに気を取られた暴走体は、男性を目で追おうと体制を崩し。
乾介「ッ!!!今だ、ティラノ君!!!」
ティラノ君「そおおおおおおおい!!!」
体勢のくずれた暴走体を、ティラノ君が大きな顎で掴み、投げる。
金髪「敵、体勢を崩したクマ!!!」
ピンク「今よ、総攻撃チャンス!!!」
ティラノ君「よっしゃぁ!!!とっちめるぜぇ!!!」
オレンジ「ようし、いい返事だ!!!」
3人の人影と1体の巨体が、姿も見えなくなるほどの土煙を巻き起こし、暴走体に総攻撃を仕掛ける。
そして。
ピンク「最後は、コレでッ!!!『イシス』ッ!!!」
ピンクのヒーロースーツの女性は、懐から『S.E.E.S』と刻印の入った拳銃の姿の何かを取り出し、自身の額、脳天にあてがい、引き金を引く。
すると何かが砕ける音が響き、女性から青いオーラが噴き出し、女性の顔と2枚の翼を持った丸いオブジェクトの様な姿の『何か』が現れる。
ピンク「イシス、アレ、やるよ!!!」
イシス「オッケ~、マジアゲアゲで行くよー☆」
女性が暴走体に向けて弓を構え、矢を番うような動作をすると、そこに太く長いピンクの光の矢が現れる。
そして『イシス』と呼ばれた「何か」が翼を広げると、その矢の先に高密度の風の渦が現れる。
その渦は光の矢と暴走体を一直線に結ぶように軸を設け、触れてしまえば切り刻まれそうな程の旋風を巻き起こしている。
ピンク「不死の矢よ!」
イシス「悪を貫け☆」
ピンク/イシス「「一撃必殺!ファイナル・フェザー☆アロー!!!」
弓から放たれ、風の渦の中心を通過して勢いと破壊力を増した光の矢は、一気に暴走体を貫通する。
暴走体「ガァァァァァ……」
やがて暴走体は断末魔をあげ、その姿を元の「道具」に戻してゆく。
ピンク「?何コレ……ペンダント?」
オレンジ「でも、真ん中に穴空いちまったら、もう使えねぇっすね。」
乾介「弥生先輩!十六夜先輩!」
彩愛「乾介君、怪我はない?」
乾介「はい、さっきの風みたいなので、全部治りました。」
慎「彩愛ー!」
里中「DKです!!!通報を受け……ってあれ、もう終わってる?」
暴走体が倒され、ひと段落していると、上空からは飛行してきた慎と霊夢、屋上につながる扉からは里中や荒垣、ラビリスと言ったDKの面々が現れる。
霊夢「アレ、暴走体は?」
彩愛「あの人たちが倒しちゃった。」
金髪「オヨヨ、チエチャンにラビチャン、ガッキーまで、どうしてここにいるクマか?」
荒垣「ガッキー言うな。だがまぁ、元気そうだな。」
ピンク「荒垣先輩も、お元気そうで何よりです。」
里中「そりゃぁこっちの台詞よー。アンタ達来るなら一言言ってくれればいいのに。」
オレンジ「俺もびっくりだよ。たまたま巡業で見回ってたら、明らかシャドウじゃない怪物が出て、それを倒す羽目んなって、そんでお前らに会ってんだから。」
ラビリス「岳羽さんはお仕事?」
ピンク「そ。ヒーローショーのね。」
里中「って、話し込んでる場合じゃなかった。事情聴取しなきゃ。アンタ達はあとでいいとして、まずはあの子ら……って、乾介君に如月君じゃん!」
乾介「えっと……この間の刑事さん!?」
慎「……。」
彩愛「えっと、お知り合い?」
慎「ああ、グリムの一件の時、ちょっとな。」
里中「そっちの二人は初めてか。あたしは里中千枝。見ての通り警察官やってます。よろしくッ!!!」
荒垣「同じく荒垣だ。」
ラビリス「ラビリスや。よろしゅうな。」
里中「早速話を聞きたいんだけど、どっか座れる場所……そうだ、陽す……花村、この店でどっか座れる場所無い?」
オレンジ「ここって『高天原店』だろ?それなら確か、2階にもフードコートがあったな。」
ピンク「じゃ、そこへ行って話しましょう。私も興味あるしね。特にさっきの怪物とか。」
金髪「それじゃ、レッツラゴー!クマ!」
ジュネス高天原店 2階フードコート
乾介「わっ、本物だ!」
咲夜「本物……?」
慎「彼女はモデル兼女優の『岳羽ゆかり』、代表作は『不死鳥戦隊フェザーマン』シリーズ。そのヒロイン役をやっている。」
ピンク改め岳羽「よく知ってるねーキミ。でもそっか、丁度世代だもんね。私は『不死鳥戦隊フェザーマンV』孔雀院鈴子役の岳羽ゆかり。よろしくね。」
慎「で、そっちはジュネスグループの社長か。」
オレンジ「ホントによく知ってるな、お前。」
彩愛「えっ!?社長さん!?」
オレンジ「おうよ。ジュネスグループ社長、花村陽介だ。よろしくな。」
金髪「社長秘書の熊田クマよ。気軽に、『クマ』って呼んでほしいクマ。」
一行はフードコートに移っていた。岳羽はマスクを外した状態で参加している。
里中「さってっと。じゃ、暴走体が出た時の状況を教えてくれる?」
乾介「えっと、確かヒーローショーの最中で現れて、それから……」
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岳羽「で、私らでちゃちゃっと倒しちゃったワケ。」
里中「なるほど。取りあえず、事件性はないみたいっすね。」
荒垣「そうだな。どうやら検証も済んだようだし、それに本来今日は非番だ。報告書は俺が書いとくから、二人とももう上がっていいぞ。」
ラビリス「そんな、悪いです。」
荒垣「いいんだよ。報告書位一人で書ける。」
岳羽「そういう不器用なとこ、12年前から全然変わってませんね。」
荒垣「うっせぇ。俺ぁもう戻る。」
里中「お疲れさまでーす。」
荒垣がその場から退場する。
慎「俺も帰る。骨折り損だったしな。」
霊夢「私もそうするわ。」
彩愛「あっそうだ、お買い物……」
咲夜「ここに。」
咲夜が一瞬消えたと思えば、先程まで使用していた買い物かごを持って再び現れる。
かごの中身は、暴走体出現直後の状態を保っていた。
彩愛「さっすが咲夜ちゃん!じゃ、私達はお買い物の続きして帰るね。何か買ってきてほしい物とかある?」
慎「特にない。」
霊夢「そうね……硬い煎餅。」
彩愛「お煎餅だね。分かった。」
花村「そうだ。どうせなら、買い物終わりに福引でも引いてったらどうだ?」
咲夜「福引?」
熊田「今ジュネス全店で、地元の商店街とかと協力して、地元の名産が当たる福引をやってるクマよ。」
ラビリス「へー。何かええな、そういうの。」
里中「アレやってんの、稲羽だけじゃなかったんだ。」
花村「最初は稲羽で始めたんだけど、思った以上に客が増えるようになってさ。他の動きもあってのことだけど、結果を出してたから、全国で実施してみたら、大当たり。」
熊田「福引だけに?」
慎「で、御神楽市だと何が当たるんだ?」
花村「御神楽市だと……何だったかな。色んな施設の割引とか回数無料券、商店街とジュネス共通の商品券とか。この辺は生産業より商業の方が盛んだからってんで、確かそうなってるはずだ。」
熊田「アレ、クマのボケは無視?」
ラビリス「ちなみに、一等賞はなんなん?」
花村「この辺の地域だと、確か『団体2泊3日天城屋旅館無料宿泊券』だな。」
里中「へぇ~、雪子ん所か。そういやジュネスと提携したって聞いてたけど、そういうコトね。」
花村「ま、ちゃっかり福引の売り上げの何パーセントかは持ってかれてるけどな。あと、一部の店舗には完二ん所の染め物とか編みぐるみ置いてたりとか。」
彩愛「そうなんですか。分かりました、帰りに引いてみます。」
花村「おう。今後ともジュネスを御贔屓にな。よしクマ、屋上の復元の応援に行くぞ。」
熊田「リョーカイクマ。それじゃ皆、バイバイクマ。」
花村と熊田も退場する。
慎「じゃ、俺もいなくなるか。」
霊夢「また後でね。」
彩愛「うん。」
咲夜「帰り道、どうかお気をつけくださいませ。」
慎「……おう。」
慎と霊夢も退場する。
里中「えっと……なんか色々関係がごちゃごちゃしてそうな……」
ラビリス「十六夜ちゃんのそのカッコ、もしかしてメイドさん?」
咲夜「そうですが、何か?」
岳羽「美鶴先輩ん所で見慣れてたから気にならなかったけど、そっか。普通メイドって日本にいないもんね、このご時世。」
スーツの女性「ゆかりちゃーん!」
岳羽「あ、やっば、マネージャー来た。はーい、今行きますー!」
岳羽「それじゃ、私もこれで。今度ゆっくりお話ししましょ。」
乾介「あっ、じゃあ僕たちも。失礼します。」
ティラノ君「またな、姉御ら。」
彩愛「うん。またね、乾介くん、ティラノくん。」
岳羽と乾介、ティラノ君も退場する。
彩愛「じゃあ私達も行こっか。」
咲夜「はい。」
里中「そっか。じゃ、私もちょっと買い物してこっかな。今は冷蔵庫が寂しくてね~。」
ラビリス「いうて、どうせ買うのは肉ばっかりやろ?」
里中「そんなことないよ?ちゃんと魚も食べるし。」
彩愛「それなら、お買い物ご一緒しませんか?」
里中「いいの?じゃ、一緒に行こうかな。ラビリスはどうする?」
ラビリス「どうせこの後も用事無いし、付き合うで。」
数十分後。
彩愛「……これって!」
咲夜「やりましたね。」
男性スタッフ「おめでとうございまーす!一等!『団体2泊3日天城屋旅館無料宿泊券』プレゼント!」
里中「ホントに当てちゃったよ……。」
熊田「……んー?」
花村「どうしたクマ吉、手ぇ止まってんぞー?」
熊田「何か今ちょっと、仄かにシャドウの香りが……。」
花村「気のせいだろ気のせい。テレビの中じゃあるまいし。そんなことより、次これな。」
熊田「うーん?」




