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現想真魂録~幻想の勇者共が現代入り~  作者: 観測者S
第柒章 Summer Vacation !
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第49話 飛来する拳

原校・科学部部室



智美「あ~つ~い~で~す~の~」


拓海「と~け~る~」


九重「なんだお前たち。だらしが無いぞ。」


健次郎「とはいえ、この暑さはどうにかならないものですかねぇ。」


桃華「あっそうだ!先生の能力(ドライブ)で、何かを冷房に組み替えられませんか?」


九重「そうだな。何か手ごろな……」


健次郎「先生。なぜおもむろにこちらを向くのです!?」


九重「安心したまえ。痛みは一瞬だ。」


健次郎「先生、待ってくれ、そのスパナを今すぐ仕舞ってって待ってアアアアアアアアアア!!!」



本日も科学部は平和です。

こおろの森



森林浴にやってきた霊夢、慎、勇太の3人は、森の中をなんとなく歩いていた。



霊夢「現代の森がどんなものかと思っていたけど、案外幻想郷と変わらないのね。」


勇太「幻想郷ってどんなところなんだ?」


霊夢「現代とはかなり違うわね。アスファルトもないし、自動車も無い。学校は人里にある寺子屋だけ。病院は竹林を抜けた先の診療所だけだし、これと言って遊びに行くような所も無いわ。」


慎「さて……」



歩いていると、不意に慎が立ち止まる。



勇太「どうかしたのか?」


慎「この森はパワースポットと言われてはいるが、本当にそうなのか観測()てみたくてな。少し調査する。」


霊夢「調査って、何するの?」


慎「口で説明するのが面倒だから、敢えて説明はしない。どうせ一緒にいても暇なだけだから、離脱してもいいぞ。」


勇太「どのくらいやるんだ?」


慎「咲夜が帰りの知らせを持ってくるか、俺が飽きるまでだな。」


霊夢「飽きるまでって……。」


勇太「そうか。じゃ、後でな。」


慎「おう。」


霊夢「えっ?えっ?」



ナチュラルに分かれる勇太と慎に、少し困惑する霊夢。



慎「どうした?お前は行かないのか?」


霊夢「あっ、ちょっと!」



そして霊夢は勇太を追いかける。



ガサガサ


小さな人影が、茂みから現れる。



????「ヤッホー♪」


慎「お前……出てこれないんじゃないのか?」











霊夢「ねぇちょっと!」


勇太「どうかしたか?」



勇太を追いかけてきた霊夢。



霊夢「いや、その……一緒に歩くんじゃなかったの?」


勇太「どゆこと?」


霊夢「いや、慎に便乗したから、そうなのかと……」


勇太「何が悲しくて男2人で森林浴に行くんだよ。俺もこの森に興味があったからさ。」


霊夢「へぇ……。でも、慎みたいに何か研究、って感じじゃ無いけど。」


勇太「俺は単に、ここがパワースポットだって所に惹かれたんだ。それが迷信かどうかは置いといてな。」


勇太「俺は、せめて自分を守れるくらいの力が欲しい。慎に頼らずとも、自分のことは自分で守りたい。」


霊夢「ふぅん……なんか意外ね。アンタが真面目に考えてるなんて。」


勇太「意外って何だよ意外って。俺だってしっかり考えてんだぞ?」


霊夢「なんかそんなイメージが無いのよねぇ。」


勇太「どうせ俺は戦いもしないポンコツですよーだ。って言うか慎がオーバースペック過ぎるんだよなぁ……。」


霊夢「同感ね。どうしてこう何でも出来そうな奴って性格が歪んでるのかしら。」


勇太「あのレベルの奴に知り合いでもいるのか?」


霊夢「いるわ。紫にしろパチュリーにしろ永琳にしろ、部下を実験台にする連中ばっかよ。」


勇太「マジか。そんじゃ、俺もいつかは慎の実験台に……」



慎『さて、実験の時間だ。まずはこの痛みを消す薬を飲め。泣き喚かれては敵わんからな。それから俺の試作中必殺技フルコースを食らってもらう。安心しろ、殺しはしない。ハハハハハハハハハハ!!!』



勇太「ううっ!?」ゾクッ


霊夢「……御愁傷様。」











ゲイザー「ヤッホー♪」


慎「お前……出てこれないんじゃ無いのか?」


茂みから現れたのは、今まで慎が『固有境界スペシフィチナグラニサ』と呼ばれる謎の空間でしか出会ったことの無い、見た目は人間の子供で年齢・性別不詳の存在、『オルテーグ=ゲイザー』。



ゲイザー「久しぶりだね。『現実(こっち)』で会うのは初めてだよね。」


慎「何しに来た?また何か面倒事か?」


ゲイザー「いや?遊びに来ただけ♪」


慎「帰れ。或いは消えろ。」



シッシッ、と追い払うように手を払う。



ゲイザー「いいじゃない別に少しくらい。それに、人が多い海岸に行くより、これ位ヒトが少ない方が色々と都合がいいんだ。」


慎「こんな所に遊べるようなものはないぞ。」


ゲイザー「……久々に、ココの空気を吸いに来たんだ。最近は特に息の詰まる状況が続いてるからね……。」



ゲイザーは遠い目をして、何処か遠くを眺める。



慎「そうか。まぁ俺にとっちゃ、お前の近況なぞ知らんが。」


ゲイザー「キミならそう言うと思ったよ。じゃ、最後にアドバイス。」


慎「あ?」


ゲイザー「『キミ自身』を取り戻して。」



その言葉を聞いて、慎の目は吊り上がる。



慎「貴様……何分かったような口を」


ゲイザー「それじゃあまた何時か会おう!またね♪」



そう言うなり、唐突に現れたゲイザーは唐突に消え失せた。



慎「……嫌がらせにでも来たのか?」











勇太「大分歩いたな。」


霊夢「そうね。今ってどの辺なのかしら?」



当てもなく、ただ道なりに進んできた霊夢と勇太。



勇太「さぁな。そう言えば、この辺の地図が確か……」


霊夢「あるの?」


勇太「……荷物の中に。」


霊夢「意味ないじゃない。」


勇太「面目ない。」


霊夢「とりあえず、来た道引き返せば帰れるわよね。」


勇太「そうだな。今まで一本道だったかr……」


霊夢「ん?どうかしたn……」



なんとなく後ろを振り向き、そして固まる勇太。

それにつられて振り向いた霊夢。

その視線の先には。



指輪っぽい暴走体「グルル。」



やぁ♪とでも言いたそうに右手を掲げた、直立二足歩行、身長2メートル程の怪物もとい暴走体。

頭と腹、両拳には大きな宝石が埋め込まれており、各関節は金色のリングのようなもので覆われている。

また、全身が宝石の鱗のようなもので覆われており、太陽の光を反射してギンギラギンに輝いている。



勇太「……ど、どもっす……。」


霊夢「……とりあえず、倒すか。」



勇太が右手を挙げ、返事を返し、



霊夢「……。」



霊夢は無言で掌から弾幕の雨を浴びせる。

弾幕は全て命中し、宝石のようなボディからは火花と煙が沸き立つ。


1分ほど弾幕を浴びせ、霊夢は弾幕を止める。



霊夢「ふぅ。こんだけ浴びせれば、流石に蜂の巣でしょ。」


勇太「やったのか?」



この作品におけるフラグの力は絶対である。

それはいかなる作品においてもそうだが、取り分けフラグをフラグである事を強調すれば、そのフラグは2つの道を辿る。

1つは、フラグの消滅。

そしてもう一つは―――――



霊夢「……危ない!」



不意に、霊夢は勇太を真横に突き飛ばし、自身は勇太と反対側に転がる。



勇太「おわっ!おま、なにすn!?」



その直後。煙の中から、大きな宝石が突き出される。

やがて煙は晴れ……



暴走体「グルルルァアアア!!!」



無傷の暴走体が、姿を現した。











慎「何がしたかったんだ?アイツは。」



ゲイザーが去り、再び調査に戻った慎。


すると足元に、何かが当たる感触が。



慎「何だ?ビーチボール?」


見た感じ活発な少女「すいませーん!」











霊夢「『天覇風神脚』!」


暴走体「グゥルルァ!」



強力な霊力を乗せた回転蹴りが、暴走体の拳と激突するが。



霊夢「ッ〜〜〜〜!!!」



宝石部分はとても硬く、逆に跳ね返される。



霊夢「硬った!!!何こいつ今(かかと)割れると思ったわ!」


勇太「霊夢、前!」


暴走体「グルアッグルゥ!」


霊夢「ああもう!」



踵に走る激痛に悶絶している霊夢に暴走体が襲いかかるも、横に転がることでそれを避ける。



霊夢「弾幕は効かないし体術は通らないし、どうすんのよこいつ!」


勇太「体のどっかに罅があれば、そっから崩せるかもしんないけど……」


霊夢「そんなもの何処にも見当たらないわよ!」


勇太「ですよね!」


暴走体「グゥゥウウルアアア!」


勇太「おわっと!」



速さこそそこまで無いものの、一撃で岩石をも粉砕する暴走体の拳を躱しながら、2人は倒し方を考察する。



霊夢「って言うかアンタ早く逃げなさいよ!」


勇太「こいつがしつこ過ぎるんだよ!」


霊夢「ったく、どうにかする方法は……。」


勇太「どうやれば、『勝てる』!?」











海岸



妖夢「神経を研ぎ澄ませれば、例え目に見えなくとも……」



目を隠し、棒を構える妖夢。



剛「右!もっと右でござるよ!」


栞里「前!もうちょっと前!」



周りから指示を出す一行。



早苗「そこです!」


妖夢「やぁっ!」



スイカに向かって、棒を振り下ろす。



しかし。


すかっ



剛・栞・早「へ……?」


妖夢「手応えが無い……」



当たる直前に、スイカは消え失せる。



魔理沙「ぷっくくく……咲夜……ちょっと大人気ないと思うんだぜ?」


咲夜「でも……くく……提案したのは貴女でしょ?」


妖夢「貴様らー!そこへ直れー!」



天音「お前は遊んで来なくていいのか?」


乾介「はは、ちょっと疲れちゃって……。」


天音「まぁ小学生だからな。無理も無い。」


ティラノ君「さて、俺も暴れてくるとするかぁ!ケンスケ!」


乾介「はいはい。ティラノ君、起動。」


ティラノ君「ぅおりゃー!」



妖夢「ティラノさん!向こうから回り込んで下さい!」


ティラノ君「合点承知!」


魔理沙「ちょ、おま、流石にそれはってギャーーー!」



天音「若いねぇ。青春だねぇ。」



がさごそ

2人が荷物番をしていると、勇太の鞄が少し揺れる。



乾介「あれ?今何かが動いたような……。」



やがて揺れは大きくなり、そして……



ばりっ。

鞄から……



乾介「わっ⁉」


天音「どうした?」



更衣室で勇太が落とした胡桃(くるみ)の描かれた大きめの錠前と、それが嵌りそうな窪みのある、小刀のようなパーツのつけられた、大きなバックル。

それら二つが飛び出し、そして森の方へ独りでに飛んでいく。



天音「なんだあれは?玩具か何かか?」


乾介「って言うか何で独りでに……?」











霊夢「もう、この硬いのどうにかなんないの!?」


勇太「見た感じ宝石っぽいから、もしかしたら硬いものを思いっきりぶつけたら砕けるかもしれない!」


霊夢「硬いもの……じゃぁこの石で!」



霊夢はその辺に落ちている大きめの石を拾い、暴走体に殴りかかるが。



暴走体「グルグルァアア!」



無慈悲にも一撃で石は破壊される。



霊夢「ちょっと!全然駄目じゃない!」


勇太「俺に言うなっ」


暴走体「グアアアアルゥウ!」


勇太「ってうわっ!」



全く攻撃の効かない暴走体に苦戦する2人。

そんなところに。



勇太「あだっ!」



突然、暴走体のいる方向とは別の方向から、何かが勇太の頭に当る。



霊夢「何?また暴走体?」


勇太「?何だこれ……!!!」



勇太の頭に飛来したもの。それは。

勇太が更衣室で『お守り』と誤魔化したもの。

17歳が持つには少し幼稚な玩具。

『錠前』と、『バックル』。



勇太「これ、まさか……!」


霊夢「どうかした?」



勇太はそのバックルを腰に押し当てると。

黄色のベルトが一瞬にして装着される。

そして、中央にある窪みを挟んで、正面左側にある小刀のようなパーツの反対側にある無地のプレートに、西洋風の騎士の兜の横顔が描かれる。



霊夢「それ、まさか……。」


勇太「ああ、行けるかもしれない!」



そして錠前を硬く握り締め。



勇太「……!」



正面から見て本体左側にあるスイッチを押し上げる。



錠前「クルミ!」



錠前が開くと同時に錠前は音声を鳴らし、そして勇太の真上、上空に、底に大きな穴の空いた、高さ80センチメートル位の巨大な胡桃(くるみ)が現れる。


勇太は手に持った、開いた錠前をバックルに嵌める。

バックル上部の中央からやや左側には、丁度錠前の輪を通すように輪が設けられており、勇太はその穴を通すように錠前を閉め直す。



バックル「ロック・オン!」



錠前が閉じると今度はバックルが音声を鳴らす。

そしてその後の操作を待つようにギターサウンドが鳴り響き。



勇太「……変身!」



右手で、バックルの小刀のようなパーツ−カッティングブレードを、本体と繋がっている、ブレードの中心を軸に半回転し、錠前の前側半分、ちょうど胡桃(くるみ)の装飾の部分を切り落とす。

切り落とされた装飾は、錠前本体の下部と蝶番(ちょうつがい)で繋がっており。

その断面には。

本体には胡桃(くるみ)の断面が描かれており、切り落とされた下の方には黄色くメカメカしいボクサーのグローブがデザインされていて。



バックル「クルミアームズ!ミスタ〜〜〜!ナックルマ〜〜〜〜〜ン!」



勇太がカッティングブレードを半回転させ、錠前を切った瞬間。

バックルの音声と共に、勇太の頭上に現れた巨大胡桃(くるみ)がそのまま落下し、胡桃(くるみ)下部の窪みに頭が入る。

窪みはちょうど勇太の頭がすっぽりと入る大きさで、胡桃(くるみ)の落下は肩で止まる。

止まると同時に、勇太の体を黒のスーツが現れ覆う。胡桃(くるみ)に切れ目が入り、そのまま両肩、背中、胸へと、鎧に変形しながら展開され、装着される。

両拳には、錠前に描かれた巨大なグローブが。



霊夢「なに……それ。」



その顔は、バックルに描かれた兜に覆われており。

意思の仮面を被った勇太は。その意思を確かめるように一歩踏み出す。



勇太「これが……俺!」


暴走体「グルァ?」



バックルを装着してから、この間約15秒。


勇太は、仮面の戦士に姿を変えていた。



勇太「……行くぞ!」

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