第48話 いざ、海水浴へ
ゲイザーの固有境界
不知火「……未だ動きは無し、か。」
ゲイザー「博麗の巫女達がいなければ、アイツ等も動きようがないみたいだね。」
不知火「何故現代に探しに来ないか、と言う疑問は残るがな。」
ゲイザー「まぁ大方、十二宗家が邪魔なんだろうね。可能性が変わったことで、彼の対処は慎重にならざるを得ないからね。」
不知火「……巫女が居なくなっても妖怪が反乱を起こさないところを見ると、今この瞬間に幻想郷を崩壊させる心算は無いようだな。」
ゲイザー「もしそうなら、今頃妖怪大戦争でも起きてるからね。結界に皹の一つや二つ、入っていてもおかしくないからね。」
不知火「……私は再び、情報収集に戻る。最近何やら、神無月や皐月の動向が怪しいのでな。」
ゲイザー「そっか。じゃ、まったね~♪」
ゲイザー「……そういえば、今日本社会では『夏休み』だったっけ。遊びに行きたいけど、行くと今後の事象に影響するかもしれないからなぁ……。」
ゲイザー「……まてよ?あまり派手に動かず、初号機に気付かれないよう立ち回ればワンチャン……♪」
ゲイザー「そうと決まれば、早速準備しよっと♪」
2021年8月9日。
早苗「7が4枚で革命です!7渡しで4枚あげますね。」
魔理沙「この局面で革命、さらに手札が4枚増えるのはきついんじゃないか?」
慎「案外そうでもないかもしれんぞ。」
栞里「とか言って、手札は強い札ばかりじゃないのか?」
慎「そんなものは関係ない。今の譲渡で、勝利の方程式が完成した。」
早苗「では誰も出せそうにないので、流しますn……」
慎「この瞬間!革命、3、4、5、6!」
勇太「革命返しだと!?」
慎「今度こそ出す奴はいないな。ここからは俺のターンだ!」
電車の中で、『大富豪』と呼ばれるトランプゲームに興じる一行。
乾介「あっ、皆さん見えてきましたよ!」
ティラノ君「おー、あれが噂に聞く海か!」
咲夜「これが、海……」
夏休みに入ってから1週間とちょっと。栞里の提案で海に行くことになった文研部一行は、高天原からそう遠くない距離に位置する淤能碁呂海岸へと向かっている。
彩愛「そういえば、幻想郷には海が無いんだったね。」
霊夢「そうね。川や湖はあっても、海は無いわ。」
剛「なんと!?幻想卿とやらには、海が無いでござるか。」
慎「川があるなら、その水はどっから来てどこへ流れている?」
早苗「そういえば、考えたこともありませんね。」
妖夢「しかし海ですか。知識としては知っていましたが、こうして電車の窓から眺めるだけでも、ここが幻想卿ではないというのを実感しますね。」
魔理沙「よーっし、どうせ幻想卿に帰ったら二度とこれねぇんだ、全力で遊んでいくぜ!!!」
栞里「それなら、この私が海の遊び方を手取り足取り教えてやろう!」
天音「まぁ、羽目を外しすぎない程度にな。」
勇太「昼間からビール煽ってる教師に言われてもねぇ……」
天音「よ―し斉藤、お前前期の古典の成績1な。」
勇太「んな理不尽な!?」
慎「どうでもいいが、もうすぐ俺上がるぞ?ほい、2。」
魔理沙「そうはいかない!ジョーカー!」
慎「残念だったな。スペードの3だ。」
魔理沙「何っ!?」
慎「スぺ3上がりは禁止だったからな。ここで東風谷から来た札を使う。」
慎「スペードのQ、K、1。これで上がりだ。」
咲夜「階段出しですか。やりますね。」
早苗「革命の後は弱くなるから、数字の大きい札を一気に押し付けたのに……。」
慎「残念だったな。俺は負けん。」
ぴんぽんぱんぽーん。
車内放送「次は、淤能碁呂、淤能碁呂~。お降りの方は、お忘れ物のないようご注意願います。この電車は巌戸台経由、三峰行きでごさいます。停車駅は、沢芽、北三原~」
慎「着いたな。」
そんなこんなで、降車駅に着いた一行。
海岸までは駅から片道10分程度のバスが運行しており、夏休みが始まったばかりとはいえ平日だったため、混雑はさほどしておらず、一向はスムーズに乗り込むことができた。
彩愛「拓海くん達も来れば良かったのに。」
慎「あいつは体が弱すぎるからな。今日みたいに日差しが強い日だと、一瞬で溶ける。」
霊夢「どこぞの⑨を思い出すわね……」
そして、程なくしてバスは海岸に到着する。
早苗「それでは、それぞれ更衣室に向かいますか。」
慎「一応言っといてやるが、透視くなよ?腐月。他の客に申し訳ないからな。」
栞里「それぐらい分かってる!」
魔理沙「自信満々のその返しを信頼しきれないのは何故なんだぜ?」
乾介「まぁまぁ、それじゃ、先輩方、また後で。」
霊夢「ええ、後で。」
水着に着替えるため、それぞれの更衣室へと向かっていく一行。
男子更衣室
剛「ところで慎殿。先程の『透視くな』とは一体どういう意味でござるか?」
乾介「そういえばそうですね。普通『更衣室を覗くな』って台詞は女子が男子に使う言葉じゃ?」
勇太「文月が普通の女子ならな。」
ティラノ君「そりゃつまり、男子更衣室を透視してくるってことですかい?」
慎「そういうことだ。だから念のため、咲夜に獲らせておいた。」
慎は懐から、栞里が普段能力として使用している、小さめの眼鏡を取り出す。
乾介「持ってきちゃっていいんですか!?」
慎「どうせこうでもしないと意味が無い。」
剛「普段はクラスのまとめ役の様な栞里どのが、どうしてこのような場面で信用が無いのでござるか……。」
勇太「それはもう、自業自得としか……。」
カタッ。
慎の足元に、胡桃を描かれた大きめの錠前が落ちる。
慎「何だ?これ。」
勇太の「あーあーあー、これ、お守り、俺の。」
それを勇太は焦りながら拾い、鞄に押し込む。
慎「……変わったお守りもあるもんだな。」
勇太「は、はは……。」
勇太(あぶねーあぶねー、常におもちゃを持ち歩いてるなんて知られたら、また脅しの種になる……。)
同時刻、女子更衣室。
栞里「無い、無い!」
魔理沙「どうしたんだ?何か無くしたのか?」
栞里「私のトラスト・スクリーンが無いんだ!」
彩愛「ええっ!?大変、すぐ探さないと!!!」
妖夢「もしかして、電車やバスの中に置いて来たとかじゃ……」
早苗「もしかしたら、勝手に『捨てられた』と認識されて、暴走体に……!」
咲夜「その心配は無いわ。」
霊夢「どういうこと?」
咲夜「つい先ほどの話だけど。リーダーの命令で、栞里の持っていた小さい眼鏡をリーダーに渡したから。」
霊夢「ああ……先手を打った訳ね。」
栞里「そんな、いつの間に!?」
咲夜「私の能力を忘れた?時を止めてしまえば、そんなこといくらでも可能よ。」
早苗「ま、まぁ、今は慎さんの手元にあると分かったんだし、一件落着ですね!」
魔理沙「そして栞里も覗きが出来ないから、これ以上騒ぎが起こることもそうそうないと。」
霊夢「そうだといいんだけどねぇ……」
栞里「 」
そして、各々着替えが終わり、集合する。
集合場所では、4人の海パンを履いた学生が立っている。
乾介「女子の皆さん、少し遅くないですか?」
慎「女子なんてそんなもんだろ。」
勇太「お、来たk……」
剛「お、来たでござるか。おーい!こっちでごz……」
彩愛「ごめーん、遅くなっちゃった!」
やってくる水着の面々を見て、勇太と剛は固まる。
そして、吼える。
勇・剛「おおおおおおおおおお!!!」
乾介「綺麗だ……」
慎「……。」
クラスメイトの水着姿に興奮する約2名。
女子高校生の水着を始めて見た約1名。
そしてまるで興味が無いと言わんばかりに無反応の約1名。
彩愛「えっと、どうかな、慎くん……」
上下を黄色のビキニで揃えた彩愛。
慎「……そうだな。悪くないんじゃないか?」
無関心に、しかしそれを悟られないように表情を作って、機嫌を損ねないように返答する慎。
勇太「綺麗だ……」
慎「鼻の下を伸ばしすぎだ。」
勇太「なッ!?」
慎「それから、ほれ。」
栞里「ああ!私のトラスト・スクリーン!」
慎は手に持っていた小さいメガネ、もといトラスト・スクリーンを栞里に投げ渡す。
天音「しかし、こうして水着を着るなんて、学生以来だな。」
赤いビキニに、赤いパレオを巻いた天音。
栞里「そうなんですか。結構似合ってますよ。」
青いビキニに、NA○Aが開発した水泳用眼鏡を装着した栞里。
咲夜「ええ、よくお似合いです。」
白いフリルのあしらわれた藍色のビキニの咲夜。
天音「そうか。どうせなら男に褒められたかったな。どうせ私は今年も売れ残り……」
剛「いやいやいやいや!!!先生はまっこと綺麗でござる!!!そこらの女子とは大違いでござるよ!だからいずれ、よき彼氏にも出会えるでござる!!!」
天音「はいはい、お世辞はいいから。」
魔理沙「それより、早く泳ごうぜ!!!」
白いマーブル模様のあしらわれた黒いビキニの魔理沙。
早苗「もう待ちきれません!!!」
緑のビキニの早苗。
霊夢「始めての海に興奮するのは分かるけど、アンタら子供かっ!」
赤に白いラインの入ったビキニの霊夢。
剛「さぁ慎殿!海といえば何でござるか!」
慎「?…毒クラゲか?」
剛「何を言っているでござるか!海と言えば……そう!『水上競争』でござる!」
慎「お前の中の定番なぞ知らん。」
妖夢「水上競争……ですか。」
乾介「なんですか?それ。」
慎「……その名の通り、水の上を走って競争する。」
魔理沙「水の上を走るって、どうやるんだ?」
剛「簡単でござる。右足が沈む前に左足を出せばいいでござる。」
勇太「いや、無理だろ。」
慎「基本だな。」
栞里「基本なのか⁉」
剛「うちの道場なら、小学校卒業までに習得できなければ破門でござる。」
慎「そんな規則は無かったと思ったが。」
剛「そうでござったか?まぁ良かろう。慎殿!勝負でござる!」
慎「いいだろう。俺は負けんぞ?」
剛「望むところでござる!」
慎と剛は砂浜に駆け出し、そして……
剛「ふんぬぁああああああ!!!」
慎「ハァアアアアアアアッ!!!」
水の上を、走り出した。
ティラノ君「本当に走ってやがる……。」
昨夜「……低空飛行ではなく、本当に走っていますね。あれが剛さんの能力なのでしょうか?」
栞里「えっと……」
栞里はトラスト・スクリーンを起動し、慎達2人を分析解明する。
栞里「……いや、能力は使ってない。本当に右足が沈む前に左足を出し、何というか、水を蹴っている。」
霊夢「なんかもう、人間やめてるわね。」
早苗「私達も行きましょう!ビーチバレーでもやりませんか?」
彩愛「いいね!やろうやろう!」
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乾介「行くよ!ティラノ君、起動!」
ティラノ君「でえええええりゃああああ!!!」
勇太「ちょ、巨大化は反則ってあーーー!」
早苗「あっちは派手にやってますね!霊夢さん、こっちもh」
霊夢「隙ありっ!」
早苗「ぶべらっ!……顔面は、セーフ……」
栞里「あっ!取りこぼした!」
魔理沙「結局落ちたからアウトだぜ!」
咲夜「これで3対2ね。」
天音「どうでもいいが、怪我だけはするなよ。」
妖夢「そろそろあの2人もゴールですかね。」
各々遊びに興じる一行。
慎「おおおおおおれえええええはああああああまあああああけええええええええええん!!!」
剛「風よりも速く!!!林よりも静かに!!!炎よりも熱く!!!山よりも高らかに!!!」
慎・剛「ハアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!」
僅差で慎に負ける剛。
慎「俺の勝ちだな。」
剛「かーっ、負けたーッ!!!」
天音「さて、慎達も帰ってきたし、いい時間だ。お昼にしよう。」
彩愛「それじゃ、お弁当持ってくるね。」
咲夜「私もお手伝い致します。」
慎「場所取ってレジャーシート広げないとな。」
食事中
霊夢「この卵焼きおいしいわね。」
勇太「彩愛さんの手料理……感動で味わかんねぇけえどおいしい……。」
慎「作ったのは俺達2人だがな。」
天音「12人分の弁当をよく作る気になったな。」
剛「この天むすも素晴らしい出来でござるよぅ!!!」
ティラノ君「ちくしょう、味わえないのが悔しいぜ。」
乾介「このあとはどうするんですか?」
早苗「スイカ割りでもやりますか?」
妖夢「スイカ割り?スイカをただ割るだけですか?」
栞里「目隠しして、遠くにあるスイカを割りに行くんだ。周りはそれを声だけでサポートする。」
魔理沙「おもしろそうじゃねぇか。やってみようぜ!」
乾介「スイカはあるんですか?」
天音「あっちの海の家で、スイカ割り用のスイカを売っていたぞ。」
咲夜「リーダーは?」
慎「俺は……そうだな。あの森に森林浴でも行くか。お前はこっちに残って、何かあったら俺を呼びに来い。」
慎が指差す先には、ある程度離れた距離に森があった。
ガイドブックや地図に『こおろの森』と記されているその森は、パワースポットとしてもそこそこ有名であり、何らかの『出会い』をもたらすとされている。
『出会い』をもたらすとされてはいるが、この森の中で運命のパートナーに出会ったり、ナンパに成功したという話はどこにも存在しない。
咲夜「了解致しました。」
勇太「俺も行こうかな。」
剛「なッ!慎殿!拙者との2時間耐久組手はどうなったでござるか!」
慎「お前の相手してると体じゃなく心が疲れるんだよ。さっきの競争で我慢しろ。」
霊夢「じゃあ私も行こうかしら。現代に来てから、森っぽい森に入ってないから、違いがちょっと気になるわ。」
食事を終えた一行は、砂浜で遊ぶ組と森林浴に行く組にそれぞれ分かれ、行動を開始した。




