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現想真魂録~幻想の勇者共が現代入り~  作者: 観測者S
第陸章 Operation: Capture the Mad Dog
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第46話 Spirit of Fire

とある場所・とある研究施設



男性4人と女性1人が、ガラスの向こうの二人の少年少女を眺めていた。



少女「起動……起動……起動……起動……」


少女「状態……正常……システム……始動……」


ハットを被った男「死にかけた少女を改造して実験台、果ては兵器化ですか。あなたも考えることがエグいですねぇ。」


荘厳な着物を纏った女性「お前が言えた事ではないだろうレクト。すこし黙っていろ。お前の声は癪に障る。」


ハットを被った男「これはこれはゲイザー様、ご機嫌麗しゅう。」


荘厳な着物を纏った女性「黙 れ と 言 っ た の が 聞 こ え な か っ た か ?」


ハットを被った男「おっと、これは失礼。」


白衣に片眼鏡の男性「実験を始める。アメノトツカ、始めろ。」


少女「了解。『神殺カミゴロシ天十握剣アメノトツカノツルギ』、始動。」



少女が腕を伸ばし、手首のところでクロスさせると、床に落ちていた8本の刃が浮遊する。



少年「あああああ……ああああああああああああああ!!!」



対して少年の方は、突然頭を抱えて発狂し、体に灰色の鎧武者のオーラを纏う。



白衣の男性(茶髪)「封神・日本武尊ヤマトタケルの具現を確認。」


少女「封神・冥龍メイリュウ。」



そして少女もまた、水色の龍のオーラを纏う。



白衣の男性(黒髪)「アメノトツカの封神の具現も確認。双方ともに安定している。」


白衣に片眼鏡の男性「よし。アメノトツカ、目の前の『ソレ』を殺せ。」


ハットを被った男(自分の息子さえも実験台かよ。ホント、恐ろしい男だ。)


少女「了解。対象の殲滅を開始します。」



浮遊している刃の全てが、一瞬で少年の体を貫く。



少年「ああ……あ……ぐ……」



少年は自身が死んだことにも気づかず、力を失い、糸が切れた人形のように倒れる。



白衣の男性(黒髪)「神無月カンナヅキミツルの絶命を確認。」


白衣に片眼鏡の男性「次のフェイズに移る。アメノトツカ、日本武尊を具現しろ。」


少女「了解。封神・日本武尊。」


白衣の男性(茶髪)「日本武尊の具現を確認。実験は成功だ。」


白衣に片眼鏡の男性「封神を以って封神を討てば、その封神は引き継がれる。果ては全ての封神の統合も可能だろう。」


荘厳な着物を纏った女性「成程……やはり余の仮説は正しかったか。」


ハットを被った男(ホント、飽きないぜ。この狂ったせかいはよぉ……)

深夜 高天原 郊外



グリム「流石に暴れすぎたせいか、この辺りには人間はもういないか。」


グリム「魔獣もいない……まぁ大気中に魔力が無いのでは仕方がないな……ん?」



健次郎「決着を付けるぞ……狂犬!!!」


茜「よくも……よくも皆を!!!」


九重「……。」


パチュリー「あなたに相応しいハウスを用意したわ。大人しく引きこもりなさい。」


グリム「……狂犬いぬも歩けば餌に当たるか。いいだろう。いい加減お前たちも喰らってやる。」











数時間前 科学部部室



パチュリー「……完成したわ。」


健次郎「これが……」


茜「私達の、戦う力……」


九重「魔法術式搭載能力始動機構、術式機構ユニットだ。」


健次郎「これで、またエレクトロ・スライダーは動くのか?」


パチュリー「ハッキリ言うけど、もうそれは能力ドライブとしては『死んでいる』と考えてちょうだい。」


パチュリー「そこにあるのは、生まれ変わった存在。使用者の感情を読み取り、備え付けられた機能を全うする武器よ。」


九重「ただ、その機能もかなり身に余るものだったのでな。制限、リミッターを付けておいた。」


九重「術式機構ユニットの行使に魔力とやらは必要ない。お前たちが、ただ『使いたい』という感情を、その術式機構ユニットに向けるだけで、勝手に『始動』する。」


健次郎「そうか……分かった。」


九重「ただし、存在を明確に認識することで性能が上がる点は能力ドライブと変わらない。新しく名前でも付けるんだな。」


茜「先生、私の足は?」


九重「……時間が無くて試作しか出来なかったが。これを。」


茜「これは?」


九重「名付けて、『超回復薬』。体細胞の再生速度を著しく上昇させるものだ。」


九重「本当は臨床試験も終わっていないのだがな。この際仕方がない。」


茜「どうすればいい?」


九重「患部、つまりお前の場合くるぶしに直接注射する。激痛が走るから部分麻酔を使う。あっちの部屋だ。」


茜「わかりました。」




健次郎「それで、あの狂犬はどうやって封印する?」


パチュリー「本当は肉体を破壊して生命活動を停止させたかったのだけれど、無理なのが残念ね。あなたのソレを使うわ。」


健次郎「ソレ?……この、術式機構ユニットの事か?」


パチュリー「ええ。それには、『第零式拘束機関』が仕込んであるの。」


パチュリー「機関が作動すると、魔力のバインドによって狂犬を拘束。そしてそのまま第11次元とやらに閉じ込めて、ロックを掛ける。」


パチュリー「ロックは一定時間でアトランダムに書き換えられるから、事実上内側からの開錠は無理ね。」


健次郎「私はどうすればいい?」


パチュリー「何とか隙を作って、ヤツに接触して頂戴。両手で掴めたら、拘束機関を作動。そのまま封印するわ。」


健次郎「分かった。」




茜「麻酔を打ったはずなのに、もう感覚が戻ってる……」


茜「それに、足が軽くなった気がする!」


九重「麻酔を解く薬も投薬したからな。」


九重「さて、今回の作戦だが……」


パチュリー「さっきも説明したけれど、今回の作戦の要はあなたよ、健次郎さん。」


健次郎「ああ、分かっている。」


九重「私達は、健次郎のサポートだ。」


茜「分かりました。」


パチュリー「さて、行きましょう。『待て』の出来ないダメ犬をしつけに。」











グリム「俺相手に4人か。舐められたものだな。」


茜「御託はいい。行くぞ狂犬!!!」


健次郎「『力学的無双演武ダイナミック・ブレイカー』始動!!!」


茜「『リベンジャー』始動!!!」


九重「『機械転生ロールリクリエイト』起動。封神ほうじん、バステト!!!」


パチュリー「妹様じゃないけど、あなたが、コンティニュー出来ないのよ!」



九重の周りに、猫の形をしたピンクのオーラが現れる。

オーラの猫はグリムを睨む。



茜「うおおおおおッ!!!」



篭手にロケットが合体したような術式機構ユニット、リベンジャーを携えた茜は、ロケット後部、丁度肘に当たる部分にある噴射口から火を噴きだし、加速しながらグリムに迫る。



グリム「勢いはいい。だが!!!まだ遅い!!!」


茜「くっ!!!」



そして空中から運動エネルギーの乗ったパンチを繰り出すが、片手で受け止められる。



グリム「フン!!!」



そして真上に投げられ、



グリム「オラァ!!!」



真下からグリムが打ち上げようとするが。



茜「フリッドシューター!!!」



茜は手の平を真下、グリムに向けると、掌にある円形の装飾がオレンジに光り、エネルギー弾が4発ほど発射される。

反動で茜は空中へ打ち上げられるが、体勢を立て直し、そして肘付近の噴射口で炎を噴き出し、夜空へ飛び立つ。



グリム「グッ!考えたな。」


健次郎「はああああ!!!」



グリムが空中からのエネルギー弾を打ち落としていると、横から健次郎のタックルが飛んでくる。



グリム「ヌゥア!!!フン!!!」


健次郎「ガァッ!!!」



それをグリムは弾き、左フックを健次郎の腹に入れて距離を取るが。



グリム「……ん?」



グリムの視界には、5人の健次郎が映っていた。



グリム「分身か……?ならば!!!」



それぞれの健次郎に対して拳をぶつけたり蹴ったりするも、当たった感触はない。



グリム「どういうことだ……?」



九重「バステトに睨まれた瞬間から、お前の五感は私の物だ。」



九重の封神ほうじん、バステト。

青龍が『勢い』、朱雀が『焔』なら、バステトは『感覚』。対象の感覚を狂わせる。



九重「お前にこれが効くのなら、初めから使っていればよかったな。まぁどうせこの声も聞こえていないが。」


パチュリー「感覚を惑わせる……あなたが幻想郷にいなくてよかったわ。」


パチュリー「さて、私もそろそろ行こうかしら。」


パチュリー「火水木金土符『賢者の石』」



パチュリーの周りに、赤、青、黄、オレンジ、緑の結晶が現れる。



パチュリー「土金符『エメラルドメガロポリス』」


グリム「何ッ!?」



幻影相手に戦っていたグリムの真下から緑色の石碑が突き出し、グリムを空中に打ち上げる。何が起こったか認識できないグリムは抵抗できなかった。

そして同時にパチュリーの周りの黄色とオレンジの結晶が細かく細分化し、グリム目掛けて飛んでいく。



グリム「何が起きて……精神干渉の魔法ではないが、実際に俺が吹き飛んでいる方向と攻撃が飛んできている方向が違う、感覚を狂わされている?」


グリム「ならばもう目には頼らん。この辺りの地形はもう覚えている。戦意を辿って……」



飛んできた結晶の弾幕を浴びながら、グリムは思考する。そして。



茜「そこだああああああああッ!!!」


グリム「ハァッ!!!」



空中を飛び回って加速しまくった茜のライダーキック、もとい飛び蹴りを拳でカウンターする。



茜「ぐああああああああッ!!!」


健次郎「茜!!!」


九重「!!!チッ、こんなに早く対応されるとは!!!」



落下する茜を健次郎が受け止める。



健次郎「茜、大丈夫か!?」


茜「大丈夫だ、超回復薬とやらのおかげで回復し……ケンジ、後ろ!!!」


健次郎「!?」



しかしその背後からグリムが襲い掛かる。



グリム「闘いの最中に目を逸らすとは舐められたものだなっ!!!」


健次郎「うわああああッ!!!」


グリム「まずはお前からだ男!!!全方陣解放!!!」


健次郎「ぐあああああっ!!!」



グリムは己の体の周囲に赤い魔方陣を生み出し。

痛みにうずくまる健次郎をそのまま地面に叩き付け、体をめり込ませる。



グリム「見せてやろう!!!最高の暴力を!!!」


茜「ケンジ!!!」


九重「ケンジ!!!」



そのまま健次郎が埋まっている地面を抉り、空中へと放り投げる。



グリム「パトリオット……」


パチュリー「このままじゃ……!!!」



そして、落下してくる健次郎に。



グリム「アポカリプス!!!」



強烈な右アッパーを打ち込む。

それと同時に、グリムごと地面の塊を貫く赤い魔力の柱が、グリムの拳から暗闇の空へ伸びる。



健次郎「があああああああああああああッ!!!」


茜「ケンジ!!!」


九重「ッ!!!」



落下した健次郎に茜と九重が駆け寄る。



グリム「残りも今すぐ……」



健次郎を追う茜達を追うグリムに、紫色の光弾が当たる。



パチュリー「レディを放っておくなんて言い趣味ね。」


グリム「そんなに死にたいのならいいだろう!!!相手をしてやろう!!!」






健次郎「まだだ……、まだ、やれる……。」


茜「まだやれるって、お前脇腹抉れて……」



駆け寄った九重の白衣に手を突っ込み、小瓶を取り出し。

それを一気飲みする。



九重「?……まさかお前、超回復薬を!?」



飲み干した途端、健次郎の筋肉は急速に発達し。

全身筋肉隆々となり、服は裂け、傷が塞がる。



健次郎「まだ、やれる!!!」


九重「なんてことを……」


茜「先生、一体何が!?」



傷が必要以上に回復した健次郎は立ち上がる。



九重「お前に投薬した超回復薬は、原液を約400倍に希釈したものだ。」


九重「原液のまま大量に摂取すれば、効果が強すぎて、体がついていけない!!!」


茜「まさか……ケンジ、お前!!!」


健次郎「まさかこんな代物だったとはな。だがこれでまだ戦える。」


九重「分かっているのか!?このままだと、お前死ぬぞ!?」


健次郎「私一人の命で済むのなら!!!」


九重「ッ!!!」


健次郎「……私一人の犠牲で済むのなら。それで他の人が傷つかなくて済むのなら。構わない。」


健次郎「ヤツを封印できるのは、第零式拘束機関を持った私だけだ!!!」


茜「ケンジ……。」


健次郎「先生、リミッターはどうやったら外れる?」


九重「だがアレは体に多大な負担が!!!」


健次郎「今の体なら耐えられる!!!それに、もうこれしか手が無い。」


九重「……術式解放オーバードライブシステム。それを発動すればいい。方法は術式機構ユニットの始動と同じだ。」


九重「ただし、術式解放オーバードライブ状態では、体の様々なエネルギーを魔力に変換し、術式機構ユニットの性能を底上げする。使いすぎれば……」


健次郎「分かっている。だが、超回復薬を服用した今、そんなことは問題ではない。」


茜「覚悟は、出来てるみたいだな。」


健次郎「ああ。……行くぞ。」



健次郎は一歩前へ踏み出し、腕を顔の前でクロスさせる。



健次郎「術式解放オーバードライブ、発動!!!うおおおおおおおおおおッ!!!」



健次郎の周りにバチバチと稲妻が走る。

健次郎の体中に電流が走るが、その痛みに耐え、筋肉は電流によって限界まで活性化される。

健次郎が発生させる強力な磁場によって、地中の砂鉄が健次郎の周りを漂う。



健次郎「ハァッ!!!」



そして腕を振り払う。

収束されたプラズマによって集められた大気中の水分が、電流を帯びて拡散し、一瞬緊張感と誤認しそうな大気が漂う。






パチュリー「……ついに発動したわね。」


グリム「なんだ、まだ戦えるじゃないか。」




パチュリーの繰り出す弾幕を全て手足で適当にあしらうグリムに、



健次郎「……行くぞ。グリム!!!」



鬼神を宿したような覇気を纏った健次郎が進撃する。



グリム「……いいぞ、そうこなくてはな!!!」

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